第824話 集会室でまた勉強会をする
学園に戻り、集会室でお勉強会である。
わりにみんな集中してやってるね。
お洒落組にはジャンヌお義姉様が付いて色々と教えている。
教師とか向いてそうだよなあ、お義姉様。
まあ、将来は軍人さんの奥さんであるが。
ブラッドお義兄様は軍に入り国境警備隊所属なので、学者の家であるキンボール男爵家は、お義兄様の代で軍人の家にジョブチェンジである。
まあ、向き不向きがあるからね。
とはいえ、お義兄様は将来的に軍の文官あたりになりそうであるな。
頭良いからね。
カリカリカリ。
カリカリカリ。
「ええと、魔術発動に必要な条件は精神集中、魔力誘導、あとなんだっけ」
「発動構成……」
「そうだったそうだった、エルマーありがとう」
「どういたしまして……」
主な発動構成ってのは、呪文、図形、物質の三つだね。
何らかの流れで魔力を加工して作用を外界に出すのであるな。
図形は魔法陣、物質は錬金術だ。
変わり種だと、歌とか、ダンスとか、武道の動きとかでも魔術は成立するらしい。
カリカリカリカリ。
ふう、魔術理論のノートを写し終わったぜい。
次は歴史かな。
アップルトンの歴史の百年ぐらい前だと、エルマーのクレイトン家とか、ジェラルドのマクナイト家とかのご先祖さまのエピソードがあって楽しい。
クレイトン家は元は宰相を輩出する政治の家だったのだけれども、ビアンカさまの時代に一度没落して伯爵位に、そこから分家筋が頑張って魔法の方の侯爵家になったらしい。
名門だね、クレイトン家。
政治に関わらないのは、そのせいっぽい。
クレイトン家が没落したので、台頭してきたのがマクナイト家、いまはここが宰相を独占している感じ。
次代もジェラルドが宰相になりそうだよなあ。
ケビン王時代かあ。
わたしゃ大神殿で色々やるのかなあ。
聖女活動とか面倒臭いなあ。
女子修道院とかでワインとか作って暮らしてえなあ。
カリカリカリカリ。
鳩時計がピッポピッポピッポと三回鳴いた。
重りが落ちていたのでカトレアさんがジャリリリリと巻き上げた。
「お茶休憩にしましょう」
みな、ほっと一息ついた。
「みなさんと一緒に勉強すると捗りますわー」
「メリッサさんも、マリリンさんも、読解力が上がってるわね、エッセイ執筆のおかげね」
「ありがとうございますわ、ジャンヌさま」
「文章を書くと、読む時も深く読めるのですわねえ」
意外に文章を書くだけでも勉強になるんだよね。
テストの設問は文で書かれているからね。
国語力が上がると学力が底上げされるのだ。
「あー、こんなに勉強したのは初めてだ」
カーチス兄ちゃんが背伸びをした。
「カーチスは……、勉強の習慣……、無いの?」
「無いなあ、中等部では外で遊んでばっかだった」
「高等部で……、勉強の習慣を……、つけよう」
「が、がんばるぜ」
まあテスト前だけでも頑張れな。
結局地頭の良さってのは倍ほどは違わないから、学力というのはどれくらい勉強に時間を割くかという勝負なんだよね。
キンボール家は学者さんの家なので貰われた三年間で勉強癖がついたぞ。
パン屋時代は何にもしてなかったけどね。
店番の時のお釣りの計算ぐらいだ。
貴族との学力差が、という所だが、転生前の日本では大学生だったからね。
人並みに勉強癖はついておりました。
転生ボーナスだなあ。
よくゲームの中のマコトさんは男爵家の三年でA組になるまで学力が追いついたな。
メイドさん達がお茶を持って来てくれた。
ゆりゆり先輩が高そうなお菓子の缶の蓋を開けてテーブルに出した。
おお、これはカロルの部屋で良く出てくる高級ルーベラ。
好きなんだよね。
お茶を飲みながらカリカリ食べる。
うまうま。
あまあま。
「大神殿では暗殺者対策してくれるって?」
「ああ、教皇様はジーン皇国の皇弟さんを破門するってさ」
「「「「!!」」」」
皆が驚愕の表情を浮かべた。
「教会も思い切ったな」
「それぐらいをしないと、教会全体が舐められますから、妥当な処理とおもわれますわね」
「破門……、謝罪に来るしか無い……」
「三日ほど大神殿の外で待たせてやれよマコト」
カノッサの屈辱はこっちの世界でも別の人で起こっているのよねえ。
ジーン皇帝を破門したけど、結局痛み分けぐらいだったとか。
今回は皇弟と二回りほど政治的に小さいから向こうの被害も大きいよね。
「よく考えたら聖女候補に暗殺者を出すとか、常識が無いよな」
「領袖が平民出身で、まだ候補だから舐めているのですわ。まさか破門されるとは思ってもいないでしょうね」
「いろいろと……、揉めそう……」
「まあ、政治の方はしらん、黄金週間後半に教皇様が信教会議を招集するから、その時になんかかんかあるでしょう」
「マコトはでないのか?」
「私はまだ聖女候補なので出ないよ、コリンナちゃん」
当事者として呼ばれるかもしれんが、めんどくせいな。
派閥の父兄を飛空艇で送って留守にしよっと。
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