第820話 土曜の朝も当然走る
目が覚めた。
んくーーと伸びをする。
ベッドのカーテンを開けると光が眩しく飛びこんできた。
今日は良い天気そう。
さて、今日も走ろうでは無いか。
ハシゴを下りて、洗顔してから歯を磨き、用を足して体操服に着替える。
コリンナちゃんもアクビをしながら起きてきて着替えていた。
運動靴に履き替えて準備完了!
「マコトは元気だなあ……」
「今日は土曜日、半ドンだから頑張るのですっ」
「うう、めんどくせえ」
嫌そうに運動靴を履くコリンナちゃんを追い立てて、205号室を施錠。
ガチャッ。
階段を下りて寮の玄関に行くと体操服姿のカロルがいた。
「おはよう、マコト、コリンナ。雨上がったね」
「おはよー、朝に雨降れ-」
「おはよ、良い朝ねっ」
グラウンドに出ると少し水たまりがあって緑が青々としていた。
雨上がりの朝だねえ。
わっせわっせと走り出す。
と言ってもグラウンド半周だから体も温まらねえぜ。
「物足りないわね」
「本当にね」
「か、かんべんしてくださいっ……」
本当はグラウンド三周ぐらいしたい所だが、コリンナちゃんが死ぬので武術場の方へ歩く。
「来週ぐらいから一周かな」
「テスト期間中は休ませて」
「しょうがないなー」
やれやれと肩をすくめながら武術場口から地下に入り格納庫へ。
【おはようございます】
「おはようエイダさん」
「おはよー」
「きょ、きょうもありがとう」
コリンナちゃんは、まだ息が整っていないな。
タラップを上がり、船内に入り、廊下を歩いて螺旋階段を上がってラウンジへ。
ラウンジではダルシーが三人分のお茶を入れて待っていてくれた。
「いつもありがとう、ダルシー」
「いえいえ」
ダルシーははにかみながら姿を消した。
花の匂いがするお茶を飲む、カプカプ。
ふうと人心地がついた。
「そうだ、植物紙ノート良いな、帳簿の整理が捗ったよ。聖女派閥のこれまでの帳簿が半冊でまとまったよ、軽い」
「半冊使ってしまったかあ。一年で結構冊数が増えそうね」
「結構取引が活発になってきたのでしょうが無い」
今現在動いている商材は、聖女の湯の元、ドライヤー、簡易ドライヤー、という所か。
あ、ヒールチョコボンボンもあったな。
一番大きいのは簡易ドライヤーのロイヤリティかな。
なにげに儲かっているなあ。
コリンナちゃんが一括管理してくれるのでラクチンだぜっ。
シャワーを浴びて、制服に着替えて蒼穹の覇者号を出る。
「またね、エイダさん」
【いつでもご利用ください】
三人で地下道を歩いて女子寮へと戻る。
地下大浴場前からエレベーターで一階へ、派閥のみんなが待っていた。
おはようおはよう。
みなで食堂へ入る。
「おはようマコト」
「おはようー」
クララに挨拶を返して、塩ポリッジを頼む。
今日の副食はハムエッグだね。
良い匂い。
ケトルからお茶をカップに注いでテーブルに持っていく。
ああ、なんだか朝の食堂の雰囲気って良いよね。
新しい一日の始まり感がある。
みんなが席に付いたので食事のご挨拶。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
ぱくりぱくぱく。
美味い美味い。
毎日毎日美味しい物を食べて、友達がいっぱいで楽しくて良いね。
これで、魔物使いとか、暗殺者とかが来なければなあ。
しかも、攻めてこないと迎撃出来ないのがね。
防衛戦は辛いぜ。
食べおわったので、食器返却口へトレイを返しにいく。
帰ってくるとダルシーがお茶を入れてくれていた。
ありがとうありがとう。
「諜報報告です。天元暗殺講社の滅殺の五本指が国境を越えました。『塔』が迎撃に出ていますが、最悪、来週の頭に王都入りする可能性があります。中間テスト中ですが、みなさんお気を付けてくださいませ」
「どんな敵なのかわかった?」
「剣豪系が二人、暗闘系が一人、術師が一人、そして、魔物使いが一人います」
なんだって!
「じゃあ、ディラハンはそいつが操ってるの?」
「いえ……、別口かと」
魔物使いが二人王都地方に集まるのか。
なかなかやっかいだな。
『塔』が暗殺者を全滅させてくれないかな。
「学園にこもっていたら安全ですの?」
「そうですね、戦闘力が無い派閥員は学園の中の方が安全です」
「そんな奴らは、我がエッケザックスの錆にしてくれるっ」
「学生が勝てる相手とは思えないみょんよ」
「そういうのはリンダさんに任せよう」
「何を言うのか、マコト、強敵と戦ってこそ腕が磨かれるという物だ!」
もー、カトレアさんはピッカリンだなあ。
「暗殺者が、そんな簡単に王都に入れるのかしら?」
「オルブライトさま、王都内には『肉屋』がおります。さすがに学園、王宮にはもう入れないとは思いますが、都内には潜入させられる恐れがあります」
『肉屋』かあ、ディーマー皇子に送った手紙の文面を見る限り理知的で有能そうだ、やっかいな奴め。
そして、魔物使い……、どんな魔物を使うのだろう。
混乱に乗じてディラハン使いも王都に入ってくるとやばいな。
ちょっと王家主従とロイドちゃんに話を通しておこう。
なるべく、『塔』と近衛騎士団、警備騎士団、聖騎士団で撃退してほしいな。
まあ、王宮は舞台にならないだろうから、近衛騎士団とハゲは出番が無いだろうけどな。
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