第818話 アダベルは天気予報を手に入れる
さて、大神殿は聖騎士の訓練場に蒼穹の覇者号は着陸した。
雨なので聖騎士の訓練はお休みっぽいね。
「エイダさん、左右マジックハンド展開」
【了解しました、左右マジックハンドを展開します】
ガチョンと下りてきたハンドルを使って甲板から竜籠を下ろす。
というか濡れている地面に下ろすと汚れるなあ。
「あ、あそこのテントの下に入れて、雨で濡れないように張ってくれたんだ」
「おお、良かったね」
大神殿の皆さんはアダベルに優しいな。
マジックハンドを使ってテントの下に竜籠を入れる。
マジックハンドを格納してから、ハッチを開けて孤児達を下ろす。
「ありがとう、マコ姉ちゃん、アダちゃん、また明日ね-」
「また明日ー、晴れたらホルボスに行こ-」
「うん、アダちゃんまたねー」
どうやらアダベルは学園から学園長宅へと帰るつもりのようだ。
そっちの方が近いからね。
子供達に手を振って見送ってから、メイン操縦室に戻る。
「この世界の天気予報ってどうしてるの?」
「天気予報ってなに?」
「天気は……、予報できない……、農民で……、たまに……、当てる人がいる……」
「天気って解らないよなあー」
どうやら気象庁はアップルトンには無いようだ。
観測とか難しいからなあ。
風属性の魔法にありそうな物だが。
あれ?
「エイダさんは気象予想できるっけ」
【はい、大体の予想は出せますよ。本日の王都地方の雨は夜半には止むでしょう】
ディスプレイに天気図のような図面が表示された。
前世の天気図と書式が違うので解らないぞ。
とはいえ、気象予報ができるのか。
「おお、エイダすげー」
【ありがとうございます、アダベルトさま】
「アダベルが飛ぶ前に私に天気を聞きにきなさいよ、エイダさんに教えてもらうから」
「おお! それは便利だっ……、あ、でも、お昼前に飛ぶ時が多いからマコトに悪いや」
「最近、お昼はホルボス山なの?」
「うん、邸宅でジェシーが作ってくれるんだ、村の三人も呼んで、美味しいし楽しい」
トール王子とティルダ王女たちと食べているのかあ。
それはみんな楽しいだろうなあ。
しかし困ったなあ。
「エイダさん、通信ブローチの予備は無いの?」
【申し訳ありません。マスターマコトのブローチが最後の一つです】
「設計図は……、複製が作れるなら……、欲しい……」
【ガドラガ大迷宮産のレアドロップで、魔宝石に積層魔法陣で記述している魔導具です、現在の技術で模倣は難しいと思われます】
ブローチが沢山あればなあ。
ガドラガ行った時にお店で探してみるかー。
オーパーツなんだなあ。
「そういや、武術場の下の入り口でエイダの声するよね」
【はい、武術場口にはスピーカーがあります】
「あそこで私が聞いたらお天気教えてくれる?」
【可能です、何日も飛行していない場合は予報精度が下がりますが】
「お、いいねいいね」
「じゃあ、飛ぶ前にエイダに聞きにくるよっ」
【マスターマコト、アダベルト様に気象情報の伝達を許可しますか】
「やって上げて、エイダさん、助かるわ」
【了解しました。外部スピーカーは武術場口、第二格納庫、邸宅教会にあります】
「女子寮には無いのね」
【大浴場口のスピーカーは工事のさいに破壊されました】
旧大浴場は女子寮の位置にあった建物だな。
女子寮を建てるときに破損させてしまったのか。
第二格納庫とは、図書館の地下書庫の所だな。
邸宅教会は今は廃教会で立て直し中だ。
「これで雨にふられなくてすむっ!」
「良かったね、曇りの日は困っちゃうものね」
「にゃーん」
クロが感心したようにイケボで鳴いた。
エルマーが出力レバーを上げて雨空に蒼穹の覇者号を離陸させた。
「ほんと、蒼穹の覇者号って凄いわね」
「どんだけ金をぶちこんだのやら」
大神殿からビアンカ邸基地まではすぐそこである。
飛んだと思ったら着陸であるよ。
エルマーはテキパキとバックで蒼穹の覇者号を格納庫に入れた。
パイロット組の操縦技術が上がっているなあ。
なんだかんだ言って、皆、飛行時間を稼いでいるしね。
みんなでタラップを下りて、格納庫を歩く。
「エイダさんありがとうね」
【またのご利用をお待ちしております】
エイダさんも蒼穹の覇者号も有能だなあ。
「天気が解るので良いな、飛ぶのが捗るよ」
「良かったな……、アダベル……」
エルマーが目を笑わせて言うと、クロを抱いたアダベルも、えへへと微笑んだ。
「そいじゃ、ありがとうな、マコト、また明日-」
「おやすみ……」
「にゃーん」
「アダベル、エルマー、また明日ね」
「おやすみなさい」
カロルと二人で地下道を歩く。
「アダベルがお天気を知る方法があって良かったわね」
「天気予報が発達してないとは思わなかったよ。戦場とかではどうするの?」
「戦場だと風魔法使いとかが天気読みをするわよ」
王都でも近隣の農作業とかに便利だと思うのだけれどなあ。
とはいえ、新聞がまだ無いから大衆に告知する方法が無いかー。
中世は辛いぜ。
階段を上がって女子寮へと入る。
「私はお風呂に入るけど、カロルは?」
「そ、そうね、たまには一緒に入ろうかしら」
ちょっと目をそらして照れながら言うカロルが可愛い。
萌えるぜっ。
「いこういこう、裸の付き合いじゃ」
「もう、その猫みたいな表情はやめてよ」
そんな表情はしておりませんよ、うひょひょっ。
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