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第81話 今週も壁新聞にいらつかされるのだ

 校舎に入ると、また人だかりだ。

 壁新聞が更新されているらしい。


 なになに?


『聖女派閥が自然公園で大規模乱闘!! 髑髏団とは何者なのか?』


 魔法学園新報の方の記事は髑髏団が襲ってきた事件のやつか。

 それは一般市民としては怪しい暴力集団が襲ってくるのは興味深いよな。

 意外にきちんとまとまってると思ったら、巻末にゆりゆり先輩のインタビューが載っていた。

 ニュースソースはゆりゆり先輩かー。


『疑惑の派閥、聖女候補派閥を研究する』


 新貴族速報の方はうってかわって聖女派閥構成員の根も葉もない噂話を記事にしていた。

 やれ、聖女候補に裏金疑惑があるだの、カロルの家はポーションを不正取引をしているだの、カーチスは色情狂のナンパ師だの。

 いや、まあ、カーチス兄ちゃんに関してはそんなに外してなさそうだが、それを言うと、上位貴族がみんな当てはまるしさ。

 書いたのは下級貴族の生徒かなあ、文体にルサンチマン(劣等感)あふるる記事よね。


「髑髏団とは実在かね」

「おはよう、ジェラルド、というか、問いかける前に挨拶しようぜ」

「え、ああ、おはよう、キンボール、で、どうなのだ」

「本当に来たよ、リーダーはマイクー」

「マイクー……、ああ、マイケル・ピッカリン卿か、ふむ、なるほど」


 ジェラルドは、マイクーだったらやりかねんと納得したようだ。


「時に、聖女派閥にマーラー家が入ったという、未確認情報が……」

「本当だよ、あ、噂をすれば」


 入り口にヒルダ先輩が姿を現した。

 カトレアさんを後ろに連れている。


「おはようございます、マコトさま」

「おはよう、マコト」

「おはよう、ヒルダ先輩、カトレアさん」

「……」


 挨拶を交わす私たちを、ジェラルドは渋い顔で眺めている。


「馬鹿な、伝統ある暗闘家が、聖女派閥入りだと、これではポッティンジャー公爵派閥と並ぶぞ……」


 ヒルダ先輩は二つの壁新聞を眺めた。


「ふむ、新貴族速報ですが、発行をやめさせますか?」

「え、どうやって?」

「新貴族速報は、一年前、私が作戦に必要なので作った壁新聞ですわ、なので発行者を知っています」

「そうだったんだ、へー、暗闘のために壁新聞を作る事までするのね」

「デマを流したり、相手の地位を崩す情報を流したり、暗闘に新聞系は使いやすいんですのよ」


 なるほど、世論誘導までするのかあ。

 さすが、マーラー家、さすまら。


「いいわべつに、言論を封鎖する聖女派閥と見られると困るし、ゴリゴリの貴族意見を知るのも悪く無いと思うしね」

「さすがはマコトさま、お心が広い」

「やめてよー」


 ヒルダ先輩は、人を持ち上げるの上手い、さすがは暗闘家だと思う。

 ジェラルドが人の顔を変な物を見るような目で見ていてムカつく。


「なんだよう」

「いや、キンボールにしてはまともな意見だと思ってな、マーラー家の戦力を得たので、すぐ潰しに行くかと思った」

「そんなに好戦的ではないぞ」

「ふむ、……そう言われればそうだな。撃退の仕方が毎回とてつもないから、好戦的なイメージが付いたのか」


 うるせえ、流れるように分析すんな。

 陰険メガネめ。


 ジェラルドは放っておいて、校舎の中へはいる。

 階段でヒルダ先輩と別れ、B組でコリンナちゃんと分かれる。


「というか、カトレアさんがA組というのが納得できないんだけど」

「酷いなお前は、私は勉強は出来るんだぞっ」

「賄賂とかー」

「ピッカリン家にそんな金は無い、お前こそ入試が上位というのが信じられん、神殿から裏金が」

「私も頭は良いんだよ、判断が変なだけでっ」

「判断が変とは認めているんだな」


 カトレアさんと罵り合いながらA組に入る。

 こういうじゃれ合いも楽しい。

 兄がマイクーという欠点以外は、カトレアさんは好きなタイプだ。


「おはよう、マコト、カトレアさん」

「……おはよう」

「おはよう、カロル、エルマー」

「おはようございます、エルマーさま、オルブライトさん」


 カトレアは騎士のくせにイケメンに弱いしなあ。


 さて、学業学業、今週も頑張ろう。


 午前中の授業は、国語、算数、魔術理論、武道であった。

 座学の三コマはなんら問題なし。

 座学万歳。


 武道の方も、カトレアさんが絡んでこなくなったので、良い感じに進む。

 カロルと防御の練習をカンカンやっていた。


 更衣室で、制服に着替えて、ほっと一息。

 だんだん学園生活にも慣れてきたな。

 お友達が沢山できて嬉しいな。


「ダルシー」

「はい」


 呼べば来る諜報メイドは便利このうえない。


「カーチスの諜者ってこの中にいるかな」

「……いません」

「え、いないの、あいつあちこちで話し拾ってるのに」

「カーチスの諜者は耳長よ」


 隣で無粋なスポーツブラをしたカロルが答えてきた。

 まったく無粋だよなあ、スポブラ。


「耳長? エルフ?」

「違うわよ、ブロウライト家に伝わる風属性の諜報員よ」

「なにそれ?」

「風の魔法で音を拾う一族で、正体は謎だわ、それこそエルフだとも、小さいフェアリーだとも言われてるの、ブロウライト一族しか知らないわ」

「それで、カーチスめは盗み聞きをしているのか、ずるいっ」

「まあ、家が伝える特殊能力みたいな物だから、耳長のおかげで、色々な危機的状況をはねのけてブロウライト家は出世してきたのよ」


 なるほど、遠方の音を聞いて諜報できるなら、国境線の軍の動きとか、王宮の政変とかがいち早く解るのだな。

 諜報の家よりも手軽で早いのか。

 秘匿するわけだなあ。


 うーん、エルフかフェアリーかー、私も欲しいなあ。

 まあ、ダルシーが居れば、似たような事はできそうだけどね。


 でも、カーチス兄ちゃんに聞いても教えて貰えないんだろうな。

 あやつはケチだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一気読みして追いつきました! 状況が徐々に好転していくのを感じて楽しいです! ただ最初の頃にあったカロルとイチャイチャが減っ頼ってな気がします!イチャイチャ百合成分!
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 貴族新聞はヒルダさんのモノか、やっぱりヒルダさんはカッコ良い悪役令嬢様ですね〜 色情狂は兎に角、確かにカーチスさんは相当なナンパ師だと思いますw まぁ、カ…
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