第815話 聖女派閥に植物紙ノートを配るのだ
わりと早めに学園に帰ってこれた。
飛空艇を下り、格納庫からA組へと移動する。
まだ終業前だから教室には誰もいない。
収納袋から包みを出して包装紙を破る。
中から出てきたのは、小豆色のノート十冊とオレンジ色のノート十冊、そして灰色が五冊であった。
「私はオレンジ色を二冊貰うわ、カロルとエルマーは」
「え、私も良いのかしら」
「派閥員にプレゼントするノートだから一人二冊程度あげるよん」
「僕は……、灰色にしよう……」
エルマーは灰色のノートを二冊受け取った。
カロルは小豆色とオレンジを取った。
「嬉しいわね、こっちは錬金用のノートにしようかしら」
私はオレンジ色のノートを開いてみた。
紙の良い匂いがして、真っ白だね。
良い手触りだなあ。
エルマーも開いたり閉じたりしている。
余ったノートは収納袋に戻した。
今、派閥員が二十人弱だから、一人に最大五冊配れるが、そんなには使わないだろう。
二冊ずつあれば一年ぐらい持ちそう。
終業の鐘が鳴って、A組に魔術実習を終えた生徒が戻ってきた。
皆が揃った頃、アンソニー先生がやってきてホームルームだ。
中間テストが近いので週末で遊んでいないで勉強するようにとのこと。
A組は勉強する習慣が無いと入れないクラスなのでアンソニー先生も楽そうね。
ホームルームが終わって起立礼。
「アンソニー先生、植物紙ノートはいりませんか?」
「え、そんな高い物を教師に送ってはなりませんよ」
ああ、賄賂になっちゃうのか。
王都では一万ドランクもする高級品だしね。
「紙の産地に行ったら奉納品として貰ったんです、良かったらどうですか?」
「奉納品ですか、その場合はどうなるのかな」
「学園に販路を広げたいとか言ってましたので、試供品として試して見る感じで」
私は収納袋からバラになったノートを一冊出してアンソニー先生に押しつけた。
色は灰色であった。
「ありがとう、大切に使いますよ、キンボールさん」
よしよし、教師の人は植物紙ノートの使いでがあるだろうしね。
「ノート買って来たのか?」
「分けて欲しいみょん」
カトレアさんとコイシちゃんが寄って来た。
「派閥員は集会室で配るわよ」
「早くいくぞいくぞ」
「行くみょん行くみょん」
剣術部に押されるように私は教室を出て階段を下り、裏口から集会棟の方へ歩いた。
空は曇っているけど雨は降ってなかった。
霧とか雨は山地の方だったからのようだね。
集会室に入り、テーブルにノートの包みを出した。
包装紙を解くと中には十冊ずつ色違いのノートが入っていた。
意外に発色が良い感じだなあ。
「青いの貰うみょんよっ!」
「ピッカリン家の色は赤だ!」
「一冊ずつかみょん?」
「二冊ずついいわよ」
剣術部の二人はワーイと歓声を上げて赤と青のノートをそれぞれ取っていった。
「早速板書を移した羊皮紙から書き写すみょん」
「羊皮紙だと鞄にいっぱいになっちゃうんだよなあ」
二人は鞄から羊皮紙を取り出して内容を書き写し始めた。
意外にまめなのよね。
カーチス兄ちゃんやコリンナちゃん、メリッサさんとかマリリンのB組の子たちも集会室に入ってきた。
「お、買って来たか、ずいぶん沢山買ったなあ」
「いや、分捕ってきた」
「マジか、高額商品を取ってくるのはヤバイんじゃね?」
あ、なんか前世のノートのつもりで百冊貰ってきたのだが、よく考えたら今世では百万ドランクの高額商品だったか。
いかんいかん。
まあ、宣伝広告として色々と広めるので、それを対価にしてもらおうか。
コリンナちゃんは紺のノートを四冊取った。
二冊で良いと言っていたが、帳簿として余分に二冊押しつけた。
結構品物とお金が動いているから、それぐらい使うだろう。
これまでは羊皮紙だったので、コリンナちゃんの鞄はギューギューであったのだ。
「軽いですわ」
「良い匂いですわ」
お洒落組のメリッサさんは小豆色のノートを二冊、マリリンはオレンジ色のノートを二冊受け取った。
「一冊はお勉強用に、もう一冊はエッセイを書くのに使おうかしら」
「良いですわね、私もそういたしましょう」
うんうん、趣味に勉強に、活用してくれい。
「これが植物紙ですか、確かに流行りそうですね、軽いし書きやすそうです」
ヒルダさんが黒い表紙のノートを二冊持って、そう言った。
「マコト、これ、字を間違えたらどうすんだ?」
「間違えんな、カーチス」
「無理を言うな」
カーチスは深緑のノートを手にしてそう言った。
エルザさんも深緑のノートを選んでいた。
「字を間違えたら、横棒で消すしか無いわね。あとで書き込めるように行を詰めない方が使いやすいわよ」
「そうか、インクも選ばないと裏写りすんな」
カーチス兄ちゃんが裏を見ながらぼやいた。
「オスカーは何色がいい?」
「俺は……、小豆色だ、うん」
くっそ、オスカーめがカロルとお揃いのノートにしおったぞ。
ライアン君は青色のノートを手に取っていた。
「ブリス先輩はどうします?」
「僕もいいのですか、領袖?」
「百冊あるので遠慮しないでくださいね」
「それでは遠慮なく」
ブリス先輩は黒いノートを二つ手に取った。
「あらあら、植物紙ノート? 良いわねー、マコトちゃん」
「ジャンヌお義姉様、どうです一冊」
「これ、お高いのでしょう、良いの?」
「私に奉納して貰ったものですから、気兼ねなく持って行ってくださいな」
「あらー、良いわね」
ジャンヌお義姉様は紺色の表紙のノートを手に取った。
「今日もお勉強を見てくれるんですか?」
「テスト前でしょ、週末は付き合うわよ」
「ありがたいです」
「ありがとうございますわ」
「ジャンヌさまは教え方が上手いので助かりますわ」
ロイドちゃんは赤い表紙のノート、ジュリエットさんもお揃いで赤いノートを選んでいた。
「ロイドちゃんは植物紙ノート持って無いの?」
「うん、勉強する気がなかったからね。ケビン兄さんとジェラルドは持ってるよ」
「わっ、じゃあ、一緒にお勉強しましょうよっ」
「そ、そうだねジュリエット」
ようし、頑張れ第二王子。
「結構残ってるな」
「残りは金庫にでも入れて、コリンナちゃんが管理してよ」
「解った、ノートを使い切った人は私に言ってください、出します」
よしよし、コリンナちゃんに任せておけば安心だ。
アダベルとか孤児たちにも配りたいんだけどなあ。
学園長に相談しないと駄目かな。
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