第809話 金曜日の朝が来てじわじわテストが近づいてくる
さてさて、金曜日の朝であるが、体操服を着てコリンナちゃんとカロルとランニング中である。
すっかり朝の習慣として馴染みつつあるね。
コリンナちゃんはヘロヘロになってるけど。
空を見上げる、今日は曇ってるなあ、でも雨は降らなそうだ。
曇るとまだちょっと肌寒い感じだね。
校庭を半周して武術場方面へと歩く。
コリンナちゃんの荒い息も歩きながら整っていくぜ。
「また暗殺者が来るんですって」
「ジーン皇国の偉いさんの顔を潰したのでしょうが無いね」
「意外に早かったな、もうちょっと掛かるかと思った」
ディーマーたちが帰ってそんなに時間が経ってないのにねえ。
動きは確かに速い。
皇弟の陣営防衛に戦力を使うべきだと思うのだが、もう決着が付いちゃったのかな?
結構な失敗だったから余計な事はしなきゃ良いのになあ。
ジーン皇国内の事は良くわからん。
私たちは武術場口から入り、格納庫へと移動する。
蒼穹の覇者号の前に着くとエイダさんがハッチを開けてくれる。
船内に入ってラウンジへと向かう。
ラウンジのドアを開けるとお茶の良い匂いがしてダルシーが笑顔で迎えてくれた。
ソファーに腰掛けてお茶を飲む。
美味しいねえ。
「テスト期間なのに迷惑な事だよ」
「その分マコトが外に出る機会が少なくて安全よ、『塔』と聖騎士団さんたちがやっつけてくれそう」
「そうだな、わざわざマコトが出て戦わなくてもいい」
そりゃまあそうね。
「黄金週間までに勝手にけりが付く事を願うわ」
しかし暗殺者の人達も気の毒だな。
今の私は大国の国王並に暗殺しにくいだろうな。
あきらめて帰ってくれないかな。
飛空艇のシャワー室でシャワーをシャワーっと浴びて、制服に着替える。
いっそ飛空艇の中に居を移すかとかも思うのだが、それも何かなあ。
なんだかんだ言って205号室も気に入ってるし。
地下道でコツコツと足音をさせて三人で移動する。
階段を上がると女子寮である。
朝に軽く運動をすると調子が良いな。
うしし。
エレベーターで地階から一階へ。
ホールでは皆がもう集まっていた。
「おはようー」
「おはようございますわー」
「ごきげんよう」
口々に挨拶を交わしてから食堂へ。
さて、今日はナッツポリッジかなー。
クララに注文をして、ポリッジの鉢を貰い、ケトルから冷めたお茶をカップにじゃぶじゃぶ注いでテーブルまで運ぶ。
皆がテーブルに付いたら、食事の挨拶である。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクパク。
ポリポリしていて美味い美味い。
「植物紙のノートって一冊どれくらいだっけ?」
「一万ドランクぐらいよ、どうして?」
くっそう、高いなあ。
前世だと百円ぐらいなのになあ。
「羊皮紙だとお勉強が捗らないから大量購入で単価を下げようかと思って」
「大量に買っても、そうねえ、八千ドランクぐらいかしらねえ」
ヒルダさんが眉を上げた。
「蒼穹の覇者号で産地に行って買い付けては? 値段の半分ぐらいは輸送費と関税なのですから」
「あ、その手があったねっ」
そうか、産地で買えば安いんだな。
それでも半値ぐらいだろうけど、私は前世の安いノートの水準になれすぎているだけで、この世界の物価からすればお得だな。
「いっちょ行って買ってくるかあ」
「良いわね、沢山買えばさらに安いでしょうし」
「派閥員全員に二冊ぐらいずつ買えばいいか。うんたいした金額じゃないわね」
「ひ、ひいい、高級品ですわー」
「ありがたいですけれど、申し訳ないですわー」
「植物紙のノートは薄くて軽くて読み返しやすいし、勉強も捗ります」
そうか、別に自分たちで生産とかしなくても良いんだ。
金はあるんや。
「確かに、読みやすいのは本当よ、それに軽いから持って行きやすいわよ」
「羊皮紙はかさばる上にまとまって無いから教科で探すのが大変だしね」
午後からいっちょ行ってくるか。
放課後までに買い付けるぜ。
みんなで植物紙ノートで成績アップだ。
「それはようございますわね」
「植物紙の産地はどこ?」
「……東部のデュプレクス伯爵領ですわね」
「なんで渋い顔?」
「ポッティンジャー公爵派です」
ぐぬぬ。
王家派閥とかにはおらんのかっ!
「デュプレクス伯爵は芙蓉からきた紙の技術者と共に植物紙を研究して立ち上げましたのよ。市場を独占してますわね」
「開発も大変そうだものなあ」
私はあるアニメのお陰で紙の作り方は知っているが、わりかし面倒くさいのだな。
手持ちのお金で事業化は難しそうだなあ。
先行他社が居るとさらになあ。
教会関係の紙の販路は押さえられそうだけど、王宮系だと競争になりそうだ。
とりあえず、今日デュプレクス領でノートを買い付けして、伯爵がクソ野郎だったら考えよう。普通に売ってたら普通に買おう。
しかし勉強用品を揃えるのは辛いぜ。
「午後からデュプレクス領に飛ぶのね、エルマーにも教えておかないと」
「え、一人で行けるよ」
「だめよ、パイロット組はセットで動かないと、危ないわ」
私の嫁は航空安全意識が高いなあ。
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