第80話 今週の学園生活が始まるんだぜ
食堂のみんなと後片付けをして、解散である。
「クララはどこに帰るの?」
「今日は宿屋、明日からアパートよ」
「そうなんだ、じゃあ、また明日ね」
「うん、またね」
いやあ、パン職人がいると美味しいパンが食べられて良いね。
コリンナちゃんと一緒に、205号室に戻った。
さてとー、イルダさん宛の手紙を書かないとねー。
私は机に付いた。
どこからかダルシーが現れて魔石ランプの灯りをつけた。
「ありがとう」
「いえ」
一時間ほど掛けて、教皇様宛とイルダさん宛の手紙を書き上げた。
「はい、これ。夜遅いけど、大丈夫?」
「問題ありません」
「門は閉まってるけど、大丈夫?」
「飛び越えます」
重拳は便利だなあ。
ダルシーを送り出した。
ふわあ、眠い。
さて、寝るかな。
隣で勉強をしていたコリンナちゃんもペンを置いて羊皮紙を丸めた。
「寝ようか、マコト」
「んだね、おやすみー」
はしごを昇って、ベットの上で制服を脱ぎ、パジャマに着替える。
おやすみなさい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メイドさんたちの起きる音と共に目を覚ます。
はしごを下りて、洗顔をして歯を磨く。
「おはよー」
「おはよう、マコト、洗濯物があったらだしな、ダルシーに手順を教えるからさ」
「ありがとう、カリーナさん、はい、これ」
私は汚れ物袋をカリーナさんに渡した。
「よし、マコトたちが登校したら、一緒に洗濯室にいくよ、ダルシー」
「解りました」
カリーナさんがダルシーを鍛えてくれるのは正直助かる。
コリンナちゃんも起きてきて、服を着替える。
くそう、スポーツブラが無粋だなあ。
私の視線に気がついたコリンナちゃんが、声を出さずに笑った。
ちくしょう。
コリンナちゃんと連れだって、食堂へ。
昨日の過ちを挽回するために、今日の教科書が入った鞄を持っていく。
「ダルシー、お手紙は届けてくれた?」
「はい、ですが、お二人とも就寝しておりまして、お返事は今日の昼頃という事です」
「ありがとう、たすかるわ、ダルシー」
ダルシーが頭を出してきたので、なでなでと頭をなでてあげた。
なんか、犬みたいよね。
グッボーイ、よーしよしよし。
食堂に着いて、ロッカールームで三角巾とエプロンをつける。
スタッフのみんなと朝の挨拶を交わしながら、ポリッジを食べる。
今日は塩ポリッジ、おいしい。
ダルシーにも食べさせる。
「コリンナちゃん、ダルシーの分、一ヶ月払っておくよ」
「あいよ、今月は一週間過ぎてるから、24,000ドランクだ」
私はお財布から24,000ドランクを出してコリンナちゃんに渡した。
彼女は手金庫から青いトークンを出してダルシーに渡す。
「いえ、私が出しますから」
「何を言うの、メイドの食費は主人が払う物よ。受け取りなさい」
「……ありがとうございます」
「あんたのメイドなら只でもいいんだけどねえ」
「そりゃ、まずいよ、エルダさん」
「まったく、欲がないねえ、あんたたちは」
さて、今日も今日とて、カウンター業務である。
ポリッジの注文を聞き、渡していく。
「おっはよー、マコトさん、あ、ダルシーもいるおはよう」
ラクロス三勇士のナッツ先輩が声をかけてきた。
「おはようございます、先輩」
「おはようございます、ミリアナさま」
私とダルシーが挨拶を返す。
ナッツ先輩はミリアナさんというのか。
覚えておこう。
「今日は甘いの~、ナッツ入りでね」
「私は塩で」
「甘いの、甘いの、蜂蜜たっぷり甘々で」
甘々先輩は甘いの好きだなあ。
ラクロス三勇士の先輩は、さっそくテーブルについてポリッジを食べはじめる。
「今日も美味しいっ」
「毎日幸せっ」
「マコト大明神に感謝をっ」
大明神はやめろ、甘々先輩。
人が流れてくる。
昨日よりも早い時点で入場制限をかけた。
ヒルダ先輩とシャーリーさんがやってくる。
「おはよう、今日も元気そうだわ、マコトさま」
「ヒルダ先輩、おはようございます」
今日はポリッジはいらないらしい。
ヒルダさんが上級貴族席につくと、シャーリーさんが上級貴族食のカウンターに並んだ。
「おはよう、マコト」
「あ、カロル、いらっしゃい」
「今日も混んでるわね」
「今後三年間はこんな感じじゃないかな」
「マコトのポリッジ、美味しいもんね」
まあ、私は作ってないわけだが、いいか。
今日は、命令さんもおとなしく、トラブル無く進んでいく。
んで、朝八時に食堂終了。
いや、なにげに疲れるね。
イルダさんが帰ってきたら、もうちょっとましになるかな。
「お疲れ様でしたー」
「「おつかれー」」
さて、鞄をもってきたので、エプロンと三角巾を外すと、すぐに学園に向かえるぜ。
コリンナちゃんと、木々が影を作る道を校舎に向かって歩く。
今日も良く晴れて、うららかな陽気だ。
「朝は気持ちがいいね」
「そうだね」
校舎に入るところでダルシーとお別れ。
「ダルシー、お洗濯がんばって」
「はい、頑張ります」
「あと、時間があったら、集会場に家具を入れておいてね」
「わかりました」
私は、ダルシーに鍵を渡した。
ダルシーは抱きしめるように鍵を受け取った。
「よろしくね」
「はいっ」
ダルシーは一瞬で姿を消した。
まったく、忍者だよなあ、諜報メイドって。
さてと、今週の学園生活を始めましょうか。




