第806話 またも勉強、勉強回
予鈴が鳴ったので校舎に戻りA組に帰った。
「普段の土属性魔術の実習って何やってるの?」
私は隣のカロルに聞いてみた。
「ん、土属性魔術の種類とかの座学と、初歩の魔術呪文の実習ね」
「カロルは要らないねえ」
「まあ、初心に帰るのは大事だから、あと二年の後半からは中級の呪文とか入ってくるから初見の魔法とか覚えられるわよ」
「カロルの腕前で未見の呪文とかあるの?」
「私は錬金専門だから、土の中級だとやってない魔法はあるわ、土木魔法の難しいやつとか」
そうか、必要の無い呪文は覚えないからなあ。
現場系魔法使いでもないと使わない魔法とかあるのか。
おっと、アンソニー先生が来た。
ホームルームの開始である。
先生のお話はやっぱりテストの事であった。
土日も図書室は開いているので勉強はそこでとの事、図書館の方は本を読む場所なので学習はやめるようにとの事であった。
ああ、それで学園には図書館と図書室があるのか。
なるほどね。
起立して礼、程なくして終業の鐘が鳴り放課後である。
と、言ってもテスト期間なので開放感はあんまり無いね。
学生の辛い所だぜ。
さあて、集会室で勉強をするかな。
ああ、めんどくせい。
「でも、みんなで勉強をすると集中できるわね」
「なんか不思議よね」
人は群れを作る動物なので、身近に作業している人間がいるとつられて作業効率が上がるらしいね。
人間の集団、侮りがたし。
カロルと一緒に校舎の裏口から集会棟へと向かって歩く。
ああ、やっぱり学園の雰囲気は良いなあ。
同じぐらいの年格好の少年少女とわいわいと過ごす。
私は前世で一度卒業して大学生になって忘れていたけれど、高校ぐらいの生活をまた味わえてお得感があるな。
楽しいからなあ。
集会室には一番乗りだったみたいでカロルが鍵を開けて中に入った。
「ほわわわ~~~」
イーゼルに載った自分の絵姿を見てカロルが変な声を上げた。
えっへっへっへ。
どう、綺麗じゃろ。
「す、凄いわ、マコト、うわああっ」
近寄ってカロルが絵を見て感動の声を上げた。
いやあ、喜んで貰えると嬉しいねえ。
カロルが抱きついて来たぞっ。
う、うおおおっ。
「ありがとうマコト、すごく嬉しいっ、ありがとう」
カロルが頬ずりしてきて、こっちも嬉しく顔が熱くなる。
「なんのなんの」
「これは私だわ、私の絵姿は永遠に近く残るのよ、それが凄く嬉しい。この時代に私という人間が居たって事を未来のアダベルが思いだしてくれたり、未来の人達がこれを見て私の事を思うのよ。ありがとうありがとう、凄く嬉しいっ」
いやあ、そんなに喜んで貰えると私も嬉しいなあ。
まあ、聖女さんが描いた絵は希少だから残るだろうね。
なによりだ。
「ふわあああ、凄いですわ~~」
「絵に愛を感じるっ、何と言う出来かっ」
「綺麗だみょん~~」
後から来た派閥員が抱き合っている私たちを見て、一瞬ギョッとして、それから絵を見て褒めてくれる。
「上手いなあ、マコトは天才か~~」
「素晴らしい……」
「本当の意味で歴史に残りそうですわね」
みんなわいわいと感想を述べていた。
カロルは真っ赤になって私から離れて下を向いた。
恥ずかしくなったっぽい。
「次はダルシーなんですの?」
メリッサさんが下塗りをしたダルシーの絵を見ながら言った。
「そうそう、明日から始めるよ。次はアダベルとトール王子とティルダ王女と村の子供のちょっと大きい奴をやって、派閥員の絵はそのあとね。だんだんとみんなを描いていくよ」
「楽しみですわっ!」
「これは邸宅に飾りますの?」
「そうね、額装して邸宅のダイニングに飾りましょうか」
さて絵の完成で大層盛りあがったが、勉強会である。
私は席に着いた。
今日は自分の勉強じゃなくてお洒落組の勉強を見ようかな。
「今日はメリッサさんとマリリンのお勉強を見るわ、何が不得意なの?」
「算数ですわ……」
「同じくですわ……」
女性は理数系が苦手な人が多いよねえ。
私は白紙の羊皮紙を収納袋から取り出して、練習問題を沢山作ってコリンナちゃんに渡した。
「こんな感じの問題はどうかな」
「うん、まあ、大丈夫だろう」
数学のエキスパートのお墨付きとなったそれを二人に渡した。
四則演算だけどねえ。
「わりと……、簡単ですわ」
「これくらい……、二桁だと、うーん」
あー、繰り上がりとかが慣れてないのか。
「とりあえず解答を書いて、あとで採点するから」
「わかりましたわ」
「がんばりますわ」
二人が問題を解いているうちに次の問題集を作った。
「簡単な問題ばかりだけど、どういう狙い?」
「問題を解いて、それから正解を聞いて、問題を解いて、と沢山やると勉強になるというか、数字に慣れるのよ」
「ほお」
前世の塾のシステムだな。
易しめの問題を沢山解く事で小さい達成感を持たせて、数字になれるというドリル形式だね。
「できましたわ」
「合ってるのかしら?」
二人がやった問題をコリンナちゃんと二人で採点する。
意外にケアレスミスが多いなあ。
赤いインクで間違った箇所を訂正していく。
その間、次の問題をお洒落組に渡す。
「がーん、こんなに間違うなんて~~」
「ごめんなさいですわ」
「いいのいいの、間違っても良いし、勘違いしている所は正しく覚えればいいのよ。沢山問題を解いて数字に慣れるのがドリルの目的よ」
「ドリル」
「ドリル、なんだか強そうですわ」
まあ、名前は強そうよね。
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