第804話 今日のランチはマリーテ海鮮料理店で
さて、午前中の授業はつつがなく終わった。
美術の時間に先生に絵が出来たら見せてくれと言われたな。
カロルも描くように勧められてた。
うむ、君も描け~~。
んで、ランチタイムである。
「今日は外食の日か?」
カーチス兄ちゃんがA組に来て開口一番そう言った。
「うーん、どうしようねえ、誰か良い店知ってる?」
「そうだねえ、どこか良い所があればいいのだが」
「ケビン王子はビビアン様のところに行けっ」
「ううっ」
まったく油断も隙も無い、すぐ接待をさぼろうとするんだから。
王家主従はしおしおと教室を出て行った。
「二年生の先輩とか三年生の先輩とかに聞いて見たら」
「おお、そうだねー」
一年生の実家領系のお店は一通り行った感じだしね。
先輩方に聞こう。
個人的には蓬莱料理店に行ってみたいのだけれども、高そうだしなあ。
みなでぞろぞろと階段を下り、二年生と合流、そして玄関で三年生に合流した。
「安くて美味しいランチですの? そうですわねー」
っても、ユリーシャ先輩は公爵家だからなあ。
平気で高級芙蓉料理に連れて行くぐらい金銭感覚が違う。
アップルビー領は穀倉地帯であまり地元料理は無いらしい。
「うちの領も特産料理とかはありませんね」
オスカーお前もか。
「僕は家格が低いので、すいません領袖」
ライアンくんも頼りにならないなあ。
「うちの実家の領のお店に行きますか? 勘当されてますけどね」
「ブリス先輩のご実家はどこですか?」
「マリーテ港の近くですよ、領袖」
おお、港街!
海鮮、海鮮か。
マリーテ港は南アップルトンの貿易港だ。
漁業も盛んだね。
ブリス先輩に先導されて王都中央通りを北進する。
春真っ盛りの王都は気持ちが良いねえ。
時々ヤクザが私に頭を下げてくるけど、気にしない。
飲食街の路地裏に小洒落た感じのお店があった。
ビストロマリーネというお店らしい。
「店主、十六人だが入れるかね?」
「わ、若っ」
店主さんはブリス先輩を見た瞬間に涙ぐんだ。
「泣くな、今日は学友と一緒だ」
「は、はい、でも若の処分は……、あんまりな」
「良いのだ、私が愚かだったせいだから、泣いてくれるな」
「は、はいっ、個室が空いておりますぞ、若っ」
あれだね、領の店って、男なら若だし、女ならお姫さま呼びだねえ。
やっぱり郷土の繋がりは大きいんだなあ。
我々は個室に通された。
落ち着いたインテリアのお店で居心地がいいね。
「まあまあ……、聖女さま?」
「他人のそら似でーす」
「まあまあ、そうですか、若をよろしくおねがいしますね」
「そら似ですが、わかりましたー」
ブリス先輩が苦笑していた。
「今日はマリーテから良いスズキが来ましたよ。お勧めです。あとはヒラメですかね」
「私はスズキを貰うわ」
やっぱシーバスっしょ。
「では、私はヒラメを下さい」
カロルはヒラメかー。
みんな口々に注文をしていた。
「俺はスズキかな。あとワインをくれ」
「はい、マリーテの白がありますよ」
おお、魚料理には白ワインだな。
「私はお茶をください」
だが、Myルールで飲酒は大人になってからなのだ。
晩餐コースとかだとちょっと飲むけどね。
「ブリス先輩はディラハンの後にホルボスは行きましたか?」
「はい、昨日、馬で行ってみましたよ。アリアーヌ先生の魔法も見せて貰いました。すごかったです」
いいなあ、私も見とけば良かった。
「ディラハンの方は、何か言ってましたか」
「ガラリアさんが張った感知網に引っかかって逃げるを繰り返してるようです。監視の甘い所を探していると言ってました」
奴は、まだホルボス山に居るのか。
かといって、飛空艇で闇雲に探し回っても見つかる可能性は少ないだろうしなあ。
テストが無ければ山狩りしてやる所だが。
「ホルボス村まで……、馬でどれぐらい……?」
「二時間ぐらいですか、道が良くなってるので走らせやすかったですよ」
馬車よりは速い感じか。
ちょっとした遠乗りだね。
「二時間かあ、俺も今度、馬で行ってみるかなあ」
「いいな……」
「マコトは乗馬は?」
「やった事無いなあ」
私はちびっこいので足がなあ。
やってみたい気はあるんだけど、男爵家には馬車馬しかおらんし。
「カロルは乗馬できるの?」
「領に置いてきちゃったけど、乗れるわよ」
伯爵令嬢ぐらいの資産が無いと自家用の馬は持てないんだよねえ。
「みんなが馬にのれたら遠乗りに良い距離なんだがなあ」
「私は持ってるし、乗れる」
「わたしは実家におとうしゃまの馬があるみょん」
軍事系のお家だと持ち馬があるみたいね。
みんなで馬でツーリングかあ、楽しそうだなあ。
お尻は痛くなりそうだが。
スズキのポワレが出てきて私の前に置かれた。
おー、良い匂い。
おいしそー。
いただきまーす。
もしゃもしゃ。
んー、いいねえ、お魚大好き。
クリームソースも良いあんばいでございます。
美味しゅうございます。
カロルの舌平目のムニエルも出てきた。
あっちも美味しそうだね。
「ああ、海の物を食べられるのは良いねえ」
「氷魔法使いが二人、つきっきりで輸送している……」
「そうなんだ、大変だねえ」
「時間停止の魔法を使うと安く運べそうだな」
「そりゃ私がマリーテに行けば只で出来るけどねえ」
光魔法はもうけ口が沢山あるなあ。
あー、バケットもカリカリで美味しい。
このお店も良いねえ、覚えておこうではないか。
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