第802話 女子寮食堂の晩餐は今日も美味しい
アンヌさんが手際よく聖女の湯の元を瓶詰めしていく。
「あ、二本ぐらい時間停止瓶にして残しておかない?」
「良いわね、色の違いとか比較できるわね」
アンヌさんが詰めた聖女の湯の元の大瓶を二つ貰った。
私は瓶に厚みのある障壁を包むように発生させて、瓶の内側以外の場所を消滅させた。
「これで時間が停止したのかな?」
「たぶん」
「魔力は掛けた時だけ消費するの?」
「そういう事、瓶をひねると障壁が無くなって時間が動く、みたい」
「みたいって……」
「二週間して開けてみれば解るんやっ」
「それもそうね」
障壁の魔法は色々と応用できて面白いな。
密閉物の中にあると永続する性質があるっぽい。
大気中だと時間が経つと消滅するけどね。
カロルが瓶を逆さにした。
「あ、空気が上に行かない。時間が止まってるっぽい」
解りやすい判定法の開発ありがとう。
なるほど、こうやって地下道とか飛空艇とかを時間停止してたんだな。
というか、あんな大きい空間に障壁を張るとは、ビアンカさまの魔力はどんだけあったのだ。
「よしよし、戸棚に保存しておきましょう」
「卒業までどれだけ増えるかな」
「ずらっと並びそうね、楽しみだわ」
色々と出来る事が増えてきて楽しいなあ。
なかなかのチート具合であるぞ。
「さあ、良い時間だから晩餐に行きましょうよ」
「そうね、お腹がすいたよ」
私たちは立ち上がり、カロルの部屋を出た。
エレベーターでウィーーンと一階へ下りる。
らくちんだ。
エレベーターホールで派閥員たちと集合して食堂へと移動する。
ああ、良い匂いがするなあ。
今日のメニューは何かな。
「クララ、今日のお献立はなに?」
「マガモのローストだよん」
おお、鳥系、美味しそうね。
トレイにお料理を乗せて行く。
今日のメニューは、マガモのロースト、コンソメスープ、豆類のサラダ、黒パンであった。
マガモはチキンとあまり見た目が変わらないね。
でも、美味しそう。
ケトルからお茶を注いでテーブルに持っていった。
ああ、毎日美味しい料理が勝手に出てくる寮は良いねえ。
前世で自炊してた時は面倒臭くてレトルトとかばっかりだったからなあ。
さて、みんなが席に付いたね。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
さてさてー、ローストをナイフで切ってと、パクリ。
おーーーー、鶏肉と味が違うね。
香り高くて結構どっしりした感じ。
いいねいいね、美味しい。
タマネギのみじん切りソースも良い味わいだね。
「美味しいね、マコト」
「うん、これは美味しい」
カロルと顔を見あわせて笑い合う。
うまうま。
コンソメスープをスプーンから口に入れる。
ああ、イルダさんのコンソメ大好き。
口の中に深みのある味が広がるねえ。
黒パンを食べて口をさっぱりさせて、豆サラダ。
マヨネーズと胡椒の塩梅が良いねえ。
ああ、なんでも美味しいなあ。
ありがたやありがたや。
今日はホルボス山からお呼びがかからなかったからディラハンは出なかったのかな?
便りが無いのは元気な証拠とね。
「そう言えばアダベルの洗礼式は決まったのか?」
「うん、連休の中日にコロシアムでやるって、派閥のみんなは全員参加ね」
「他ならぬアダベルさまの洗礼式ですもの、行きますわ」
「行ってお祝いしますわ」
「楽しみです~っ」
「マコトも出るの?」
コリンナちゃんが豆のサラダを食べながら聞いてきた。
「私がでっかいアダベルに洗礼するよ。聖女服を着るよ」
「あら、竜化しての洗礼なんだ」
「子供アダベルに洗礼するならコロシアムはいらないからね」
「派手な式典になりそうだなあ」
そうだ、洗礼式のポスターが出来てきたら食堂とかに張ろう。
「洗礼が終わったら王都上空を飛行パレードすれば良いですわ」
「それは目立ちますわね」
前世の航空ショーみたいだね、それは良いアイデアかも。
「試験が終わったら、聖女派閥のパーティがあって、中日にアダベルの洗礼式ね、後の予定は?」
「聖女派閥の父兄を飛空艇で送って行くかな」
「「まああっ」」
お洒落組が強く反応した。
「是非うちの領で一泊なさってくださいませ、良いワインを出しましてよ」
「わたくしの領はちょっと遠いですが、よろしいのですか?」
「ユリーシャ先輩の領は南部ですよね、大丈夫ですよ」
「遠い領の時は高高度飛行をすれば良いわね」
「飛行計画を作らなければ、能率的に飛びたいね」
コリンナちゃんがやる気だなあ。
「エイダさんと相談しながら計画すると良いよ」
「そうだね」
エイダさんはチートだからなあ。
簡単に飛行計画を組んでくれるだろう。
食べおわったので、食器を返却口まで持っていった。
テーブルに戻って来たら、ダルシーがお茶を入れてくれていた。
あ、ご褒美のティーセットだ、これ、口当たりいいんだよなあ。
「早く中間試験が終わりませんかしらねえ」
「黄金週間が遠いですわー」
まあ、連休って遠くに思えるよねえ。
来てしまえば過ぎるのは、あっという間なんだけど。
しかし、今週末は孤児院に行くのと、実家帰るのはどうしようかなあ。
まあ、色々あって行けてないから、今回は行ってみるかな。
みんな寂しがったらいけないし。
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