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第79話 晩餐の後に毒蜘蛛令嬢の独白を聞く

「という訳で、わたしくはとてつもない目に遭いそうだったカトレアをぶっこぬいて、ポッティンジャー公爵家第二公邸を後にしたのですわ」


 こんにちわ、マコトです。

 夜八時を過ぎて、閑散とした女子寮食堂で、ヒルダさんの打ち明け話を聞いている所です。


「それはまた、大変だったねカトレアさん」

「うむ、あれほど上の方が腐りきっていたとは思わなかった。本来なら、マコトに剣を預けようと思ったのだが、ヒルダさまに剣を預ける事となった、面目ない」

「いいよいいよ、ヒルダさんがうちの派閥に入ったんだから、カトレアさんもうちの派閥入りだよ。問題無いし」

「うむ、ありがとう、マコト」


 話を整理すると、暗闘屋のグレイブは糞野郎で、デボラがニワトリ女という事か。

 それで、私の事を、カロルに雇われた偽聖女と思い込んでいると。


「しかし、なんでまた偽聖女って、髑髏団の奴らは情報上げてないのかな」

「デボラの中ではポーションを隠し持って治療した事になっているようだわ」

「エクスポーションでもないと、指はくっつかないのだがなあ」

「なんだか、カロリーヌさまを悪者にしたいというビビアン様の意思があるようにおもえるわ」

「なんでカロルを目の敵にしているのかなあ?」

「それは解らないわね、ビビアン様も、カロリーヌさんも、ざっと履歴を洗ってみたけど、接点が無かったわ」


 暗闘家の情報力の高さよ。

 戦闘は準備段階から始まっていて、諜報というのは戦わずして勝つのが理想なんだぜい。

 その分、派手な戦闘は出ないから、いまいち盛り上がりに欠けるんだけどね。


 私は腕を組んでうなった。

 下級貴族エリアの安っぽいテーブルの上にはシャーリーさんが入れてくれたお茶が乗っている。


「今回の件で、ポッティ派閥の報復はあるかな」

「無いと思うわ、コリンナさん」

「では、お金は何時くれるのかな?」

「お金好きね、あなた。明日には届けるわ」


 コリンナちゃんはとろけるようににんまり笑った。

 お金好きだね、コリンナちゃん。


「本家からの増援はありそうね」

「そうね、諜報の手駒が少なくなりすぎたから、何人か補充されるだろうけど、本隊が来るのは予定通り二年からだと思いますわ」

「それはなんで?」

「ポッティンジャー公爵領で反乱が起きかけていて、必死に諜報隊が火消しをしてますの」

「ジェームズ翁が死んだから?」

「いえ、税金が高いので、民草がカンカンに怒ってますわ」

「そりゃ怒るわな」


 領内の整備に諜報本隊の手が取られているのか、それはそれで、良い知らせだね。


「来週、一回。たぶんグレイブの工作がありますわ、それが過ぎれば来年度までは派手な動きはないでしょう」

「何を仕掛けてくるのかな」

「聖女候補の暗殺ですわね。マコトさまさえ居なくなれば聖女派閥の求心力が無くなりますので、あとはカロリーヌ様をいかようにも料理できますわ」

「そんな事はさせない、グレイブをぶっつぶす」


 私が倒れる事、すなわちカロルが倒れる事だ。

 絶対に、カロルは私が守る。


「それでこそ、マコトさま、こちらから工作を仕掛けグレイブを暗殺するという手段もありますわよ」

「それはやらない。暗殺を始めると癖になる。暴力でしか物事を解決できない聖女なんかに人は付いてこないし」


 ヒルダさんが得心がいった、とばかりににんまり笑った。

 ついでに、隣で黙ってお茶を飲んでいた、役立たずのゆりゆり先輩も笑う。


「シャーリーさまはおちゃをいれるのがおじょうずですね」

「それほどでもありません」

「このおいしいおちゃをあげましょう」

「わあ、これは亜大陸産の紅茶、良いんですか」

「ごほうびです、ダルシーさんはもっとおちゃをいれるうでをあげましょう」

「精進します……」


 メイドさんたちが、後ろの方で交流をしておる。

 ダルシーは覚える事が多いなあ。

 ミーシャさんは、童女な姿なのに貫禄があるな。


 ちなみに亜大陸とは偽インドである。

 亜大陸の紅茶はもの凄く高い。

 さすがは公爵家だぜ。

 さす公。


「なにか工作の兆候があれば、お知らせしますわ」

「よろしくおねがいしますね、ヒルダ先輩、ありがとうございます」

「こちらこそ、久しぶりに諜報の仕事が出来て嬉しいのですわよ」

「ずっと、静かにしてたんですか」

「馬鹿な父親に勝手にメイドを使われたり、馬鹿な暗闘屋に毒殺システムを勝手に使われて、手段を一つ奪われたりでうんざりでしたの」


 ああ、シャーリーさんをマルゴットさんが待ち構えている代用監獄に送ったのは、グスタフ・マーラー伯爵だったのか。

 毒殺システムは歓迎会の奴だな。

 妙に早くて冴えていると思ったら、マーラー家のシステムだったのね。


「暗闘の家は、あまり防衛戦はしないのですけれど、頑張ってやりますから、お見捨てなきようお願いします」

「ヒルダ先輩を見捨てるなんて、とんでもない」

「おほほ、諜報の家が入って、聖女派閥は安泰ですわね」


 役立たずのゆりゆり先輩がそんな事を言うぞ。

 まあ、この人は暗闘諜報もできるけど、メインは政治、派閥管理だしな、文句は言えまい。


「そうだ、コリンナちゃんのメガネを派閥で買いませんか、あの美貌はもったいないわ」

「いーやーでーす」


 コリンナちゃんが即答で断った。


 うん、この人はもう駄目かもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クセになってるんだ、暗殺するの……
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! そういえば、何かポッティ派閥に凄そうな奴等が来年に来るですよね?何か心配かも。 ちょっと向こうの思考を理解出来ないですが、カロルさんが凄く目の敵にされている…
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