第794話 晩餐は黒豚のブラウンシチュー
「おおい、マコト晩餐いこうぜ」
うにゅ、本を読みながら寝てたようだ。
「ん~~、行こうか」
ハシゴを降りて、コリンナちゃんと一緒に205号室を出る。
階段の踊り場から外を見ると、もう真っ暗ね。
「今日の献立は何かな」
「匂いからするとシチュー系だな」
一階には良い匂いが漂っていた。
エレベーターホールで派閥のみんなと合流して食堂に入る。
いつものようにクララに手を振って、いつものようにカウンターからトレイにお料理を乗せる。
今日のメニューはと……。
黒豚のブラウンシチュー、オニオンサラダ、コロッケ、黒パンであった。
良い匂いだなあ。
ケトルからお茶を注いで、いつものテーブルにトレイを持って行く。
あー、毎日晩餐に美味しい物が食べられるのは幸せだなあ。
一日の充実度が違うね。
前世では一人暮らしをしていたから、こうやって毎日お料理が出てくるのは嬉しい。
自炊だとメニュー考えたり調理したりが面倒臭いのよね。
お金無いから頑張ってやっていたけれど。
みんなが席についたので、食事のご挨拶だ。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
んーーー、豚肉が柔らかくておいしーっ。
角煮みたいに口の中でほどけるね。
さっぱりしたオニオンサラダで口を整えて、揚げたてのコロッケを食べる。
ほくほくほくほく。
今日の料理も美味しいなあ。
もっしゃもっしゃ。
「試験期間は動きが取れなくてもどかしいわね」
「ホルボス村に常駐したいぐらいだけどねえ、試験は大事だし」
「学生の本分は勉強だ」
メリッサさんが耳を塞いだ。
「耳が痛いですわ~~」
「お勉強は苦手ですわ~~」
「二年生になって、ロイドちゃんだけのB組に居たければ遊びなさいね」
「うう、切ないですわ」
「カーチスさまがきっと居そうですわ」
ありえるから嫌だなあ。
「明日はロイドさまを引っ張ってきます~~っ」
「それが良いよジュリちゃん」
「王宮では勉強しないのかね? ケビン王子も、ジェラルドさまも勉強がお好きそうだけど」
「そうね、ロイド王子は怠け癖がありそうだわ」
ロイドちゃんは将来、護衛騎士団の長官になるのだから、勉強しないと配下の騎士に舐められるぞ。
なんとか、お洒落組の二人と、ロイドちゃんと、カーチス兄ちゃんを補強しないとなあ。
「エルザさんはお勉強の方はどうですか?」
「なんとかいたしますわ」
エルザさんはにっこり笑った。
彼女はしっかりしてるからなあ。
「私はC組に居ましたけれど、入学試験ではA組に入れましたの」
「あら、勿体ない。A組でも社交はできるでしょうに」
「カーチスさまを差し置いてA組というのも出しゃばりではないかと思いまして」
なんだな、夫を立てる前世の戦前の妻みたいだな。
偉い人だ。
C組に居るけれども学業成績が良い生徒は何人かいるらしい。
女性は、勉強よりも社交というお家は結構多いのだよね。
まったく中世は暗黒時代だぜ。
黒パンをぱくぱくと食べてお食事終了。
やっぱりご飯を食べると体温が上がって暖かくなるね。
食器を返却口に持って行った。
席に戻るとダルシーが食後のお茶を入れてくれた。
ケトルのお茶より温かいからありがたいね。
味も美味しいし。
「ヒルダさん、諜報報告はありますか?」
「あまり無いですね、試験期間中は魔物使い以外は動かないでしょう」
魔物使いかあ、なんだか目的が読めないなあ。
なんとかディラハンを倒せれば何か解りそうだけど。
アリアーヌさんが頑張ってくれるかな。
ディラハンとホルボス山警備団の戦いを見たいなあ。
試験さえ無ければ、邸宅に泊まり込む所なのに。
「あ、マコト、明日で聖女の湯の元が無くなるから、生産してちょうだい」
「おっと、明日やろうか」
「そうね、今度は何のハーブを混ぜようかしらね」
「そういや、ホルボス山の湯の花の方はどう?」
「今、実験中らしいわ、バジルが地獄谷に行って樽で温泉水を採取してきたみたい」
「言ってくれたら飛空艇で運ぶのに」
「湯の花の本格生産が始まったらお願いね」
地獄谷はホルボス山をぐるっと半周しないと街道からの道が無いから馬車だと結構時間がかかるのよね。
とにかく試験が終わらないと何にも出来ないね。
試験が明けたらアダベルの土下座行脚に付き合って、派閥の父兄大会と、ついでに遠隔地の父兄を蒼穹の覇者号で送って行こう。
そして特産物のお土産ゲットしよう。
そうしよう。
ああそうだ、アダベルがホルボス山防衛に協力してくれたお礼に何か甘い物をプレゼントするかな。
ケーキの詰め合わせが良いかな。
あの子はみんなで分け合って食べるのが好きみたいだし。
「そういや、マコトの兄ちゃんのソバボウロはどうなった?」
「お菓子ツンフトに話を通して解決したんじゃないかな。暴れてた黒幕はとっ捕まえたし」
「ソバボウロおいしいよね」
私は収納袋からソバボウロを出してカロルのティーソーサーにひとつかみ入れた。
「あ、ありがとう」
「なんのなんの」
コリンナちゃんが手を出してきたので、彼女のソーサーにも入れてあげた。
ポリポリと食べる。
素朴で飽きない味よね。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




