第791話 蒼穹の覇者号は学園に帰投する
カタパルトは王都の方に向いているので、まっすぐに五分ほど飛べば王都、なんだが、舵輪を回してちょっと寄り道。
「エイダさん、魔導レーダー、魔力が高い存在を感知」
【閾値はどれくらいにいたしましょう?】
スライムとかに魔力反応値を合わせると地図が光点で一杯になってしまうね。
ディラハンとか、竜馬とかの魔力値はどれくらいだろうか。
レッドベア以下って事は無いだろうな。
「レッドベア以上の魔物、で」
【了解しました、マスターマコト】
地図上に光点が……。
現れないな。
ホルボス山あたりだと、レッドベア以上の魔物って居ないのか?
あたりをぐるぐる飛んで見たが、光点が現れない。
あった! と思ったらアシル組の人だったりする。
建築魔法の人とか、結構魔力が強いんだな。
あ、いっぱいあると思ったら邸宅だったり、甲蟲騎士団の人とか高そうよね。
ひときわ強く輝いているのはアダベルだろう。
格納庫あたりもピカピカしてるが、これは学者さんたちだな。
村にはあんまり光点が無い。
一般の人はレッドベア以下の魔力っぽいね。
西の森の上を回ってみたが、どうも反応しない。
遠くに逃げてしまったかな。
おっと、はちまき道路とか結構伸びているね。
甲蟲騎士団は土木作業も優秀だなあ。
アシル組の作業も街道から村への道のりの半分まで舗装が終わっているね。
山頂に二つの光点発見!
と、思ってディスプレイを見るとサイラスさんとローランさんであった。
ああ、地獄谷に行く所か。
せっかくだから山頂に着陸してみた。
「ついでだから乗ってく?」
船外スピーカーで聴いてみたら、二人はにこやかに笑ってうなずいてタラップを上がってきた。
「いやあ助かります、聖女様。山頂を越すか、街道に出て大回りしなきゃならないところでしたよ」
「なんで、ぐるぐる飛んでたんですか?」
「魔導レーダーでディラハンが見つからないかって、やってみました」
「おお、みつかりましたか?」
「いないわね」
「そりゃ残念です」
二人を乗せて北麓方面に飛び、地獄谷で下ろした。
「じゃあ、がんばってね、他の聖騎士さんたちは?」
「使いの者を馬で走らせました。明日の朝来ますよ」
「ありがとうございました」
二人を馬車溜まりに下ろして、すぐに飛び立つ。
北麓を回り込むように飛ぶ。
おー、こっちの道路も出来つつあるね。
ホルボス村への道路は石畳だけど、こっちは砂利道だね。
なかなかホルボス山の内政が進んでいる感じで楽しい。
くそう、ディラハンを見つけたら魔導ミサイルでもぶち込んで退治してやろうと思ったのになあ。
王都近辺ならまだしも、ホルボス山だと出現と同時に叩けないのが痛いね。
中間試験前だしなあ。
しかたが無いので王都に戻り、南からアプローチしてビアンカ邸基地に蒼穹の覇者号を格納する。
もうすっかり放課後で、ホームルームをブッチしてしまったぜ。
「エイダさん、ありがとう」
【いえいえ、いつでもどうぞ、マスターマコト】
エイダさんにお礼を言ってタラップを降りた。
武術場口から地上に出て、校舎に戻った。
もうA組はほとんど人が居なくて、男子が数人喋っているだけだった。
机から鞄を取って教室を出る。
さて、勉強勉強。
派閥の集会場のドアを開けると、勉強をしていた派閥員が一斉に顔を上げて私をみた。
「ひゃはは、遅れた遅れた」
「おお、マコト、お帰り、ホルボス山で何かあったのか?」
「魔獣が出たのでトンボさんに呼ばれたんだよ」
「ちょっと、大丈夫だったの?」
「レッドベアか?」
「いや、ディラハンだって、馬が竜馬って変わり種」
「「「「ディラハン?」」」」
私はカロルの隣に座って鞄から羊皮紙と教科書を出した。
「で、どうだった? 甲蟲騎士団が撃退したのか?」
「思ったより機動力が高かったんで、陣をぬかれたんだけど、アダベルがドラゴンになったら逃げ出したって」
みんなが一斉にほっとした顔をした。
「怖いですわ~~」
「これも魔物使いの仕業かしら」
「野生のディラハンはこっちの大陸には生息しないので、その可能性は高いですわね」
「はいはい、みんな勉強勉強~~」
「あ、はい」
「そ、そうですわね」
私は魔術概論の教科書を出して、復習を始めた。
っても概論はざっとおさらいすれば良いね。
まだ一年生の初めだから難しくはない。
魔術の基礎知識な感じであるよ。
じんわりじんわり、勉強の時間は流れる。
みんなも真面目に勉強してるわね。
「マコト、温泉入った?」
「せっかくだから子供達と一緒に入った」
「それで硫黄くさいのか」
「また……、温泉、行きたい……」
試験が終わったら一日ぐらい、ホルボス山にみんなで行くかなあ。
せっかく邸宅があるのにもったいないぜ。
カリカリカリ。
「歴史の範囲はどこまでですっけ?」
「ビタリ帝国の発達までですわよ、メリッサさま」
「ありがとうございます」
カリカリカリ。
「そういや、甲蟲騎士団には中遠距離の戦力が少ないので、サーヴィス先生に雷魔術師を紹介してもらった」
「あら、魔法塔の人?」
「そうそう、冒険者寄りの学者さんのアリアーヌさん」
「雷かあ、おもしれえなあ」
カリカリカリ。
三時になったので、ダルシーとアンヌさんがお茶を持って来てくれた。
私もソバボウロを収納袋から出した。
ふう、一息つこう。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




