第789話 アリアーヌさんに雷魔法の事を聞く
「私は光の回復魔法を中級までぐらいを覚えているだけですね。攻撃魔法は覚えてません、防御魔法で障壁があるぐらいかな」
「えー、それは物騒な、ビーム覚えましょうよ、ビーム。光魔法なら速度が光速で遙か遠くまで直進するので面白い戦法が使えますよ」
「アリアーヌ、こう聞くと聖女さまの魔法はなんとなく弱く感じるが、めちゃくちゃだぞ。治療は中級というがエリクサー並の効果があるし、障壁は硬質ガラス並の硬度で形も範囲も自由自在だ。足場にしたり、人を引っかけたりできる」
「おーおー、それは凄い、障壁だけでも使い勝手が良いですね。いやいや素晴らしいっす」
なんだなあ、アリアーヌさんの脳内では戦場の色々な局面で活躍する私が見えているのだろうなあ。
「迷宮で足場を組んだり、光に弱い魔物の目をくらませたり、そして無尽蔵の回復魔法っすか、うーん、一緒にガドラガに潜りませんか、聖女さまっ」
戦場じゃなかった、迷宮だった。
基本的に軍人じゃなくて冒険者の性格が強い魔術師さんみたいね。
「アリアーヌさんは基本的にガドラガ大玄洞に行ってるんですか?」
「はい、気の合う奴らとパーティを組んでアタックしてるっすよ。迷宮はロマンっすよ」
「私、六月頃、ガドラガの実習について行くんですよ」
「おや、魔法学園のガドラガ実習は二年からじゃなかったっすか?」
「中層のレアキメラに襲われて遭難したパーティが敵討ちに行きたいって言ってたので誘われたんですよ」
アリアーヌさんは顔をしかめた。
「ああ、痛ましい事件がありましたね。魔法学院では十年ぶりの実習で貴族の死亡事故だったとか。そうっすかー、六月ですかー」
お、アリアーヌさんぐらいの凄腕魔術師が参加してくれると安心かもなあ。
「まあ、ダメ元で申請してみたまえ、アリアーヌくん、仕事が空いていたら許可しよう」
「ありがとうございますっ、長官!」
おおっ、これは期待できるかも。
「所で、アリアーヌ先生の雷魔法とはどんな感じですか?」
「サンダーボールですよ」
なんだ、魔術の初歩の初歩やん。
「ふふふ、聖女さま、あなたは雷の特性を知っていますか?」
「大気中を雷が移動するんでしょ、抵抗の少ない場所を走るからジグザグになる感じで」
「おお、知ってるっすねっ。さすがさすが。で、雷魔術の初歩の魔法はサンダーウイップなんですよ」
「ボール系じゃないの?」
「雷を一カ所に止めてボール状にするのは、かなり難しいんすよ。なので雷を生でぶっぱなすサンダーウイップが初歩魔法になってるっす」
それは知らなかった。
知り合いに雷魔法使いはいないからなあ。
「雷魔法はいろいろと面倒くさい性格を持ってましてね、サンダーウイップは敵に向けて撃っても大気の状態次第で味方の方に飛んで行ったりするんすよ。で、雷の中級魔法がサンダーボールです。雷の動きを呪文でコントロールして球状にする魔法っす。私はそれを自由に動かす事ができるっすよ」
あっ。
私はサンダーボールの有効性に気が付いた。
敵に打ち込む使い方もできるけど、機雷みたいに空間の任意の場所に設置できるんだ。
これは機動力のあるディラハンと相性が良いな。
「甲蟲騎士団の後ろにアリアーヌが居れば鉄壁の陣が敷けるわけさ」
「これは凄いですね、ディラハンにぴったりですよ」
迷宮みたいな狭い場所でも、罠みたいに設置も出来るんだなあ。
魔法も使い方だなあ。
「それでは、アリアーヌくん、ホルボス山に出向を命じる。期限はしばらくの間だ。良いかね」
「喜んで拝命するっすっ」
「我々はこのまま飛空艇でホルボス山に戻るが、君は準備をしてから馬車で来たまえよ」
「大丈夫っす。迷宮アタック用の装備はロッカーに仕舞ってあるっすから、一緒に行くっすよ。聖女様の飛空艇に乗りたいっすっ」
なんだね、アリアーヌさんは、魔術師で研究家だけど、根がバックパッカーみたいな人だなあ。
私たちがエレベーターを呼んでいるうちに、アリアーヌさんは大きいリュックを背負って走ってきた。
「おお、まだエレベーターは行ってなかったっすね、ラッキーラッキー」
アリアーヌさんのリュックには登山に行く人みたいにシェラカップとかコッヘルがぶら下がってカランカランと音を立てていた。
エレベーターが来たので乗り込んだ。
サーヴィス先生が最上階の所へレバーを倒した。
「ジョンおじさん、出向料金の方はどうしましょうか?」
ジョンおじさんは顔をしかめてブンブンと横にふった。
「サーヴィス先生が迷惑を掛けているしね、料金はいいよ、魔導カタパルトの研究も仕上がってくるし」
「あ、ありがとうございます」
「そうそう、簡易ドライヤーで儲かってるからね、気にしないでくれたまえ」
「ああ、簡易ドライヤーも聖女さまがらみなんすかっ?」
「特許を持ってるのはマコトくんだよ、アリアーヌ」
「そりゃ凄い、あれは凄い発明っすよねえ」
私が前世であった物が欲しかっただけなんだけど、結構儲かっていて申し訳ない感じもするね。
エレベーターは私たちを乗せて、魔法塔の最上階へと着いた。
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