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第783話 ホルボス山に魔獣が現れる(ガラリア視点)②

 トール王子に付けた虻の視界にアイラが入って来た。

 よし、子供達は釣りを諦めて村に戻るようだ。

 サロモンが現れてアイラに説明を求めている。


 ディラハンは依然として村の中心部に向けて進行中。

 上空にヘンリーッカとアートゥの姿が見えた。


 アダベルちゃんが何かを言って、羽を出して空に昇った。

 音声が無いから解らないが、見てくる、だろうか。

 子供達は村へ移動を始めた。


「ア、アダベルちゃんが、西に向けて飛行を開始」

「くそっ、アダベルちゃんめ」


 リーディア団長が毒づいた。

 アダベルちゃんはエンシェントドラゴンの化身だから行動が読めない。

 魔物見物だろうか。


「はちまき道路を建設中の兵を呼び戻してくれ」

「りょ、了解」


 私は工事現場近くの虻と接続した。

 現場監督の兵の近くに飛び、地面で八の字を書くように虻を歩かせる。

 監督兵が慌てて工事中の甲蟲騎士たちを呼出し、こちらへと走り出す。


 虻の動き方で簡単な命令を伝えられるようになっているんだ。

 八の字の動きは緊急招集だ。


 子供達よりも速く工事現場の兵たちが山から下りてきた。


「何かありましたか! 団長」

「正体不明の魔物が高速接近中だ、戦闘準備! 西の村はずれに陣を敷け!」

「「「「了解!!」」」」


 ホルボス村を防衛するための訓練は積んである。

 甲蟲騎士たちは全速力で西の村はずれ、邸宅の向こうに向けて駆けていった。


「私は着替えてくる。サロモンが帰ったら西の陣に向かわせてくれ」

「りょ、了解」


 リーディア団長は邸宅に向けて駆けていった。

 私は西の陣にはいかない、私は部隊の目だから作戦本部で情報を収集し統合し、団長に報告する。

 それが仕事だ。


 ディラハンを追う虻の視界にアダベルちゃんが見えた。

 ヘンリーッカとアートゥに空中で止められていた。

 いいぞ、正体不明の敵にアダベルちゃんを近づけるな。


「ガラリア、何があった」


 サロモン副団長とアイラ、トール王子とティルダ王女、村の子供三人、孤児院の子供四人が帰ってきた。


「しょ、正体不明の魔物が接近中、ト、トール王子とティルダ王女、それと子供は安全の為に村の中央部にいて下さい」

「魔物っ? オバケ?」

「ア、アダちゃん大丈夫かなぁ」

「ア、アダベルちゃんはヘンリーッカとアートゥに止められてます」

「ヘーンリーって、誰だっけか?」

「トンボの兵隊さんだよっ、ヘンリーッカとアートゥだよ」

「さすがは王子だなあ、おぼえてるなあ」

「わ、わたしも全員の名前をいえるよっ」


 ティルダさまのお言葉に、思わず微笑んでしまった。

 王族のお二人に愛されて我々は幸せ者です。


「ふ、副団長、西の村はずれに陣を張っています、い、行って指揮を」

「わかった、子供達を頼む」

「「了解」」


 アイラとハモってしまった。

 目を合わせてニッと笑う。


 サロモン副団長は駆けだしていった。

 入れ替わるように金色の甲蟲甲冑を着込んだリーディア団長が戻ってくる。


「状況は!?」

「も、もうすぐ接敵、ア、アダベルちゃんはヘンリーッカとアートゥに止められました」

「よし!」


 邸宅に居た虻を飛ばして村の西はずれに向かわせる。

 ディラハンを追っている一匹が居るが、味方陣地近くにも視界が欲しい。


「魔物って、どんなの? ガラリア」

「ディ、ディラハンのようです」

「「ディラハン」」

「って、どんな魔物だっけ?」


 村の子供のセルジュが聞いて来た。


「あれよ、アランドの北にいる首無し騎士の魔物よ」


 孤児院の子供が答えてくれた。


「うわー、怖いっ、アダちゃん大丈夫かなあ」

「アダベル親分なら大丈夫だ、いざとなったら大きくなれるし」

「そ、そうだねっ」


 西の陣にサロモン副団長が着いた、同時に私の虻も着いた。

 そろそろディラハンと甲蟲騎士団の陣が接敵する。


「そろそろか」

「は、はい、もうすぐ」


 甲虫騎士たちは盾を構えて密集陣形を取った。

 一番しんがりにサロモン副団長が構えている。


 茂みからディラハンが陣の前に飛び出してきた。

 上空にはヘンリーッカとアートゥ、そしてアダベルちゃん。


 ディラハンは陣を一瞥いちべつして、そのまま突進してきた。

 激突する! という瞬間に竜馬は踏み切り高くジャンプした。


 いかん、この魔物、機動力が凄いぞ。


 陣の前衛が合わせて跳び上がり、後衛が盾を構えたまま後退する。

 竜馬が前足を跳んできた兵に叩きつけて、さらにジャンプする。

 アダベルちゃんの目の前まで跳んだ。

 ヘンリーッカとアートゥが槍を構えてディラハンの前進を阻む。


 ごうっ!!


 竜馬は火をヘンリーッカに吹き付けた。

 彼は火だるまになった。

 アダベルちゃんがすかさず冷気を吐いてヘンリーッカに燃え移った炎を消す。


 ディラハンはそのまま着地して、右に左に跳んで甲蟲騎士を避けていく。


「い、いけないっ! 陣が突破されますっ!!」


 私はリーディア団長に警告した。


「子供達は食堂に入れっ! アイラッ!! 戦闘準備!」

「了解!!」


 子供達が恐怖の表情で宿屋の食堂の中に駆け込んだ。



 村はずれの陣しんがりのサロモン副団長にディラハンは大剣を抜き切りつけた。

 副団長はそれを盾で受ける。


 ガキャン!!


 大剣と盾が激突して火花が散った。

 副団長が怯んだ隙にディラハンは竜馬を跳び上がらせて陣を抜けた。

 いかん!!


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