第781話 お昼は下町に繰り出すぞっ
午前の授業はつつがなく終わった。
火曜日は座学ばかりだからね。
中間テストが近いので試験範囲の説明が多かったね。
お昼休みになったので、カーチス兄ちゃん等、B組の面々がぞろぞろとやってきた。
「おーう、今日はどこに行くんだ?」
「またツバメ食堂にいこうか?」
「お、良いな、俺は今度はウナギを食べよう」
王家主従が寄って来た。
「今日はツバメ食堂か、良いですねケビン王子」
「うん、そうだね、楽しみだ」
「……、あんたらは上級貴族レストランで接待だ」
「くっ」
「くっ」
火曜日と木曜日の王家主従はビビアンさまの接待じゃ。
さすがに覚えているぞ。
王家主従はシオシオとなって教室を出ていった。
さてさて、聖女派閥が出発だ。
階段を下りて、玄関に行くまでに二年生と三年生の派閥員を拾って校門を出る。
「今日はツバメ食堂ですわね。入れるかしら」
ゆりゆり先輩がつぶやいた。
ブリス先輩はニコニコしている。
「下町の食堂に行くのは初めてです」
貴族のご令息だとそうだよね。
「何でも凄く美味しいですのよ、ブリスさま」
「それは楽しみです」
カマラさんが居たらソースとかケチャップの事を頼もうかな。
それにしても天気が良くて歩くのが楽しいね。
みんなでトコトコ歩いて下町エリアのツバメ食堂へやってきた。
お、今日もウナギのノボリが出ているな。
でも、お客さんも沢山だなあ。
「あ、マコトさん、いらっしゃい。ちょっと待っててね」
「すぐ空くかな? カマラさん」
「うん、ちょうど個室のお客さんが終わるから」
「あれ、個室作ったの?」
「貴族のお客さんがゆっくり食べたいってリクエストがあったので増築したんだよ。マコトさんたちが来ても良いように二十人ぐらい入れるのをね」
儲かってるなあ。
そして助かるなあ。
「何がお勧めですか、領袖」
「ウナギ」
「ウナギは美味しいわよね」
今日はウナギにする人が多そうだなあ。
「先にご注文をとりますね、今日は何にしますか?」
「私は牛丼で」
まだ牛丼は食べて無かったからね。
「ウナーギ」
「ウナーギ」
「ウナギだ」
「ウナーギ……」
「カツ丼でお願いしますわ」
「わたくしはウナーギで」
「今日は牛丼だみょん」
「ウナーギだ」
おお、思ったよりウナギが多い。
そしてなんか訛ってる。
「ウナギは足りるかな?」
「大丈夫よ。結構数はあるわ」
それは良かった。
店の前でしばらく待っていると、身なりの良いお客さんが出てきて、私たちは個室に通された。
うん、広くて良い感じね。
「ああ、ウナーギの良い匂いですわ」
「まだ食べて無いカツドーンが楽しみですわ」
カマラさんと弟さんが、注文された丼を続々と運んできた。
おお、牛丼だあ。
お味噌汁も付いてるぞ。
「さすがに卵は付いてないのね」
「生卵は危ないからね。ごめんね」
たしかに、前世の卵の衛生状態はこの世界では無理なんだよね。
牛丼に卵が欲しいけれど、しょうがないね。
紅ショウガは付いてるけど。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パカリと蓋を開ける。
あー、懐かしい匂いだ~~。
涙が出そう。
パクリ。
あ~~~~~~~~~~、美味しい~~~~!!
「牛丼美味しいよね」
「ウナギはどう?」
「ウナーギ美味しいわね、香ばしくて」
「うーん、こんな魚料理は食べた事がありません。ウナーギみたいな雑魚をこんなに美味しく料理できるなんて」
ブリス先輩のお口にも合ったようだ。
良かった良かった。
お味噌汁を飲む。
ん~~、優しい味。
この世界にも、ワカメあるんだねえ。
「マコト、涙ぐんでるよ、そんなに美味しかった?」
「うん、まあ、美味しい物は良いよね」
牛丼は前世の味で、遠くに残してきた郷愁だ。
帰りたいなあ。
帰りたいなあ。
でも、帰れないんだよなあ。
ふと暖かい手を背中に感じた。
カロルが手を置いてくれていた。
うん。
そうだね。
置いてきた物は、もう手に戻らないけど、新しく見つけた物がある。
うん、それも沢山。
うんうん。
ほわっと胸の奥に暖かい物が生まれた。
ありがとうね、カロル。
私は、あなたが大好きだよ。
「ありがとう」
「ううん、いつもマコトに支えてもらっているし、時々は私にも頼ってね」
そう言って、私の大好きな人は花のように笑った。
あー、牛丼美味しい。
みな、ぱくぱくとドンブリを美味しそうに食べていた。
「ウナーギ美味しいですわー」
「癖になりそうですわー」
「ああ、この変な粉が良い味わいだよなあ」
「香ばしい……」
山椒粉もあるのかあ。
ああ、またウナギも食べたいなあ。
みな食べおわったので、お茶を飲んでまったりする。
「甘く無いお茶ですわね」
「ほうじ茶と言います、蓬莱で飲まれてるんですよ」
「口がさっぱりしますね」
コリンナちゃんが派閥のお財布からお代を払った。
「はあ、美味しかったわ、懐かしくて悲しくなっちゃった」
「うん、あるよね、私も時々悲しくなるよ」
「カマラさんもあるんだ」
「みんな何かを置いて来てるんだろうね」
カマラさんもそうなのか。
「あ、ソースとケチャップを手に入れたい」
「え、あるよ、この前作ったよ」
「ほんとっ! お好み焼きとか、たこ焼きとか作れるじゃん」
カマラさんは奧から二本の瓶を持って来た。
「まだ、ちょっと味に違和感があるけど、感想を聞かせてね」
「ああ、再現はきっちりできてないのか」
「ブルドックとも、ハインツとも、若干違うんだよね」
「うんうん、味を見て、感想を言うよ」
うっひっひ、ソースとケチャップをゲットだぜ!
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