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第779話 カロルと二人で晩餐を食べる

 カロルが危なげなく微速後進して格納庫へ蒼穹の覇者号をしまった。


「ちょっと晩餐の時間過ぎてしまったわね」

「みんな食事を始めているかな?」

「そうね」


 カロルが懐中時計を確かめた。

 いつもの派閥の集合時間から三十分ほど過ぎているね。


 蒼穹の覇者号を下りて地下通路を二人で歩く。

 カツンカツンと足音が通路に響いた。


 階段を上がり、女子寮へと入る。

 地下大浴場では寮生が並んで順番を待っていた。

 ああ、今日は聖女の湯の元を入れたからね。

 晩餐の後の入浴なんだね。


 聖女の湯解放戦線のエイミーさん他、三人ぐらいが列を整理してくれているようだった。


「エイミーさん、いつもありがとうね」

「あら、聖女さま、今、お帰りですか?」

「そうそう、サーヴィス先生を飛空艇で送っていった帰りよ」

「お疲れ様です」


 エイミーさんたちに笑顔で手を振って階段へ向かった。


「いつもありがたいわね」

「本当に助かるわ」


 ありがたやありがたや。


 一階に上がって、食堂に向かう。

 時間が外れていたからか、食堂は閑散としていた。


「おや、今日は遅いね」

「ちょっと用事があってね」


 クララが笑いながらしゃべりかけてきた。


 私はトレイを取って、今日の晩餐のお皿を乗せていく。

 今日の献立は、山ウズラの焼肉、空豆のポタージュ、花梨の実のサラダ、黒パンであった。

 美味しそうだなあ。


 いつもの席に付くとカロルが対面に座ってきた。

 うーん一対一で食事は良いなあ。

 なんだか嬉しい。


「いただきます」

「日々の粮を女神に感謝します」


 パクリ。

 おお、ウズラは山鳥なのに脂がのっていて美味しいね。

 おいしいおいしい。

 空豆のスープも味わいがあっていいね。


「テスト期間中は静かでいいわね」

「私は早く終わらせて、黄金週間で遊びたいね」

「そうね、そういえばアダベルが昔食べた牛の謝罪はどうするの?」

「んー、五年ぐらい前までのは謝罪に行かないといけないね。あの子も聖心教信徒になるのだから」


 テストが終わったらアダベルと一緒に土下座行脚かな。


「人的被害が無いなら、お金で済むでしょうね」

「そうだね、聖女様の祝福付きで」


 ビアンカさまにとっちめられる前の金貨や宝石の返還もしたいが、百年以上前だと難しいかもしれないなあ。

 財産が無くなってもアダベルは悲しいだろうし。

 教会のシンボルになれば別にお金は必要じゃ無くなるけどね。

 でも都市生活には金貨が必要だし。

 頭の痛い所よね。


 おろ、ニマニマしたコリンナちゃんが帰ってきた。


「マコトたちも今食事かい?」

「コリンナちゃんも? ジェラルドに夕食を奢ってもらえばよかったのに」

「い、いや、ドキドキしてかなわんから、断ったよ」

「あら、勿体ないわね」

「黄道亭とか高いお店だと値段が気になって食べた気がしないよ」


 コリンナちゃんらしいな。

 彼女はカウンターで料理を揃えて私たちのテーブルにやってきた。


 聖女派閥の執行部の三人が集まったな。


「アイスクリン食べた?」

「うん、ジェラルドさまの意外な面を見れて嬉しかったなあ。あとアイス美味かった」

「アイスは美味いよねえ、食堂で出さないかな」

「出しても付くのは上流貴族食だから、私たちには関係ないわよ」

「卵と砂糖と生クリームかな? あとはバニラか。エルマーに頼めば作れそうだけどね」

「え、そんな簡単にはできないだろ?」


 前世では金属の容器に氷と塩でアイスを自作する商品があったなあ。

 鍛冶部に頼めば簡単に作れそうだが。

 せっかくのエルマーを有効活用しよう。

 ああ、アダベルの冷凍ブレスでも作れそうだな。

 夏に向けてカマラさんに相談してみようかな。

 ホルボス山では牧畜やってないかな?

 チョコ関係のお菓子よりは費用が少なくてすみそうだ。


 まあ、乙女ゲームの世界だから、意外となんでもあるんだけどね。

 異世界調理チートが使えなくて困るね。


 食事が終わったので、食器を返却口に戻した。

 ダルシーが現れて、食事の終わった私とカロルにお茶を入れてくれた。

 コリンナちゃんは絶賛食事中だ。


「お、花梨は蒸してあるのかな、渋みが少ないね」

「良い匂いよね」


 花梨のサラダはさっぱりして美味しかった。


「フレデリク商会の方の感触はどう?」

「うん、会長さん喜んでいたよ、早速着工するってさ。教会の配管工の人に手伝って欲しいらしい」

「ああ、良いね、おじさん達なら大丈夫でしょう」


 アシル親方もそろそろ村までの道路整備が終わる頃かな。

 まあ、親方たちはそのまま村の教会と保養所建設に入るから地獄谷までは手が出ないだろうけどね。

 地獄谷の建設計画の方はフレデリク商会さんに任せよう。


 ホルボス山教会の方の設計はどうなってるかな?

 まあ、教会みたいな物は、そんな短期間で出来る物じゃないけどね。

 十年ぐらいかかるだろうなあ。


 保養所の方は木造で良いから早めに作っておきたいね。

 夏の行楽シーズンに巡礼の信者需要があるだろうから。


 初夏ぐらいに仮オープン出来ないかな?

 役場もあるし、とりあえずの計画をブリス先輩と詰めなくては。


「ホルボス山と地獄谷も色々楽しみね」

「うん、良い場所を領地に貰ったよ」


 ゆっくりでも良いから我がキンボール領の内政を進めようではないか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 牛乳と砂糖と【生クリーム】かな→卵? ヒカソラは牛乳を分離させて生クリームを作る世界かな?と。
[一言] 牛のお詫びに教会のお墨付きなんてどうでしょ? 聖竜アダベルも絶賛の味!アダ牛! 奥手同士のアオハルはいいとこで終わっちゃいましたね。 二人ともがんばれよー
[良い点] 遅い晩餐ですが、 カロルとコリンナちゃんとの語らいは ゆっくりとした時間の流れを感じて、 なんだかまったりできました。 聖地巡礼の段取り(?)もできそうですし、 地獄谷の開発は順調にできそ…
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