第77話 私とコリンナちゃんは晩餐バイトでくるくる働く
お風呂に入ったので、新品の下着に着替える。
おお、コリンナちゃん、スポーツブラが良く似合うなあ。
「あら、珍しい下着ですわね、おそろい……」
メリッサさんが、スポーツブラに興味津々で見つめてきた。
彼女は、なんかでっかい乳バンドをしておる。
この世界、下着の歴史がおかしい。
「王都のメインストリートの大神殿の向こうの下着専門店で買ったんだ。すごい楽よ」
「マコトの言うとおり、楽」
「私も欲しいですわ、あとでカリーナに買いに行かせなきゃ」
ゆりゆり先輩の巨大な胸を支えるのは高そうなブラジャーだなあ。
特注品かな。
「うちも買いにいくみょん」
コイシちゃんもチッパイだからなあ。
カトレアさんは結構、胸があるのだが。
さて、制服を着て、心機一転、晩餐のバイトに行くぜ。
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コリンナちゃんと同伴して、女子寮食堂のロッカールームに入る。
「こんにちはー」
「あ、マコトさん、コリンナさん、こんにちは」
メリサさんが挨拶をしてくる。
「マーラー家の問題が片付いたから、明日にでもイルダさんを呼べますよ」
「本当ですかっ! それは素晴らしい知らせですっ」
ダルシーに合鍵作りと一緒に、大神殿に一報を頼めば良かったな。
でも、お使いしてくれる人がいると、スゴイ楽だな。
三角巾をしてエプロンを装備。
コリンナちゃんにも装備してあげる。
「マーラー家から、返金と、賠償金かあ、これは大黒字だ。みんなにボーナスも出せるけど、これはイルダさんの判断しだいだな」
「そうだね、私らはあくまで代理だしね」
厨房のドアを開けて、エドラさんが顔を出した。
「マコトさん、コリンナさん、来たねー。晩餐の試食は大丈夫かい?」
「あ、大丈夫よ」
「今晩のパンは凄いからね、クララはたいしたもんだよ」
「そんなに、それは楽しみだなあ」
エドラさんが、上級貴族食一食と、下級貴族食二食を運んできて、ロッカールームのテーブルに並べた。
今日の上級貴族食は、角ウサギのソテー、川鱒とほうれん草の炒め物、アスパラサラダ、ポテトスープ、白パン、オレンジゼリーであった。
「角ウサギとは珍しいね」
「なんだか、大漁だったらしくてね、安かったらしい」
下級貴族食は青カカサギのシチュー、シーザーサラダ、コンソメスープ、黒パンであった。
なんだか、白パン、黒パンの存在感が違う。
「じゃあ、いただきまーす」
「天の女神の恵みに感謝を」
だから、私に向かって祈るなコリンナちゃん。
ぱくり。
んー、おいしい。
青カカサギは初めて食べるけど、鶏とは違った味わいで美味しい。
あー、これは、黒パンが美味しいとは、すっぱ美味しい。
「パンが美味しいな、これはすごい」
「黒パンが普通に美味しいよ、さすがクララだね」
角ウサギのソテーを半分に切って食べる。
あー、脂がのっていて美味しい。
野趣もあるし、いいねいいね。
いろいろ口の中の彩りが鮮やかで楽しい。
おいしいおいしい。
ちょっと多めだったけど、コリンナちゃんと力を合わせて完食した。
おいしかった。
「「ごちそうさま」」
「どうだったい?」
「パンが美味しくなると、全体的に持ち上がるね」
「上級も下級も珍しい食材でおいしかった」
「うん、なによりだね。今日のお客の反応が楽しみだ」
「楽しみだねっ」
厨房に入る。
「クララ、パンが美味しかったよ」
「ふふん、半月堂と比べちゃいやなんだぜー」
「さすがは名月堂の職人だね、美味しかったよ」
「ありがとう、コリンナさん」
パン職人が入るとこんなに違うんだね。
私がカウンター、コリンナちゃんが手持ち金庫前に陣取り、晩餐の時間が始まった。
なんだかどんどん人が来るね。
「今日も混みそうだな」
「早めに入場規制をしようかな」
テーブルがどんどん塞がっていく。
今日は休日なのにとか思ったが、休日の夜はみんな帰ってるんだよね。
カウンターの前に列ができて、私はお料理のお皿をどんどん並べる機械と化した。
「マコトさん、今日の料理はなに?」
「青カカサギのシチューですよ」
ラクロス三勇士先輩がやってきた。
「それは珍しいね、あまり捕れる鳥じゃないのに」
「ダルシーちゃんはどうしたの?」
「今、お使いを頼んでいて」
「そっかー」
三勇士先輩方はトレイに料理を乗せて、テーブルに移動していった。
「「「おいしいっ」」」
「パンが別物~」
「シチューが珍しくて美味しいっ」
「黒パンのくせに美味いぞっ」
大好評のようだね。
なにより。
開場してから一時間ぐらいで下級貴族席は満杯になった。
上級貴族席はそこそこ空いてる。
私は出入り口に立って、入場制限を始める。
今日はゆりゆり先輩が食堂の監視に来ているな。
上級貴族席で優雅にご飯を食べておる。
ゆりゆり先輩も喋らなければ立派な公爵令嬢に見えるのだが。
お、腹ぺこ三勇士先輩が来て、上級貴族席に座った。
今日はもめ事を起こさないでくれよう。
「マコトさん、こんばんは」
「あ、ヒルダ先輩、いらっしゃい」
「応接セットは集会所の前に置いておきましたわよ」
「わかりました、ありがとうございます」
ヒルダ先輩は、カトレアさんと一緒に上級貴族席に座った。
シャーリーさんが現れて、上級食カウンターに向かう。
腹ぺこ三勇士の命令先輩が、シャーリーさんの前に足を出した。
「なにごとですか、これは」
「もう、私たちは毒蜘蛛なんか怖くないのよ、派閥から外れた奴なんかね」
「……」
シャーリーさんがヒルダさんの方を見る。
ヒルダさんは、ニィッっと笑った。
あーもう、あーもう、もめ事を起こすんじゃ無いですよっ。




