第775話 集会室に帰って勉強会をする
冒険者ギルドから学園に戻ってきた。
集会室のドアを開けると派閥のみんなが絶賛勉強中だった。
なぜかジェラルドが居てメリッサさんの勉強を見ていた。
「ああ、帰ってきたかね、コリンナくん」
「お待たせしました、マクナイトさま」
「いや、大丈夫だ、ではフレデリク商会へ行こう」
「はいっ。マコト行ってくる」
ああ、そういや地獄谷の都市計画書をフレデリク商会に届けるとか言ってたな。
「行ってらっしゃい」
嬉々として、コリンナちゃんはジェラルドめと一緒に集会室を出ていった。
んむ、アイスクリンを一緒に食べてくればええよ。
私は粛々と勉強会じゃ。
「マコト、絵の続きは何時描くの?」
「明日の午後でも描くよ。そろそろ絵の具も落ち着いた頃だし」
油絵の作業はのんびりしたペースだからね。
一週間ぐらいでカロルの絵は描き上がるかな?
「カロリーヌさまの絵は完成するのが楽しみですわ」
「ありがと、メリッサさん。お勉強を見ようか?」
「助かります、私はお勉強が苦手で」
「一生懸命やってれば、そのうち何とかなるわよ」
私は席についてメリッサさんの数学の勉強を見た。
カロルはマリリンについた。
勉強が不安なのは、この二人ぐらいで、あとは自習で大丈夫でしょう。
カトレアさんも、コイシちゃんも真面目に自習してる感じ。
カーチス兄ちゃんもエルザさんが付いて勉強を見てもらってるわね。
というか、エルザさんはC組なのに、カーチス兄ちゃんより出来るのか。
静かになった集会室で、みな真面目に勉強をしている。
うーん、テスト前の緊張感だね。
一時間ほど真面目に勉強したあと、ダルシーと、アンヌさんと、ミーシャさんがお茶を入れてくれた。
ひよこ堂のクッキーと一緒にティータイムである。
ああ、美味しい。
「そういえば、マコトさま、あの、その、見て貰った、あのお洒落記事を直してみたのですが……」
「お、いいねえ、見せて見せて」
メリッサさんは、おずおずと数枚の羊皮紙を私に手渡してきた。
どれどれー。
おお、結構良くなってるね。
装飾過多が減って、格段に読みやすくなってるね。
「良いわね、上手くなってるわ」
「わあっ、ありがとうございます。
……。
あれっ、ひょっとしたら……。
私は新しい羊皮紙にメリッサさんの記事を書き写した。
そのままではなくて、雰囲気を口語っぽくしてみた。
「わああああっ!! なんですのこれっ、まるで語りかけられているような文体ですわっ」
ああ、やっぱりそうか。
この時代、言文一致してないというか、羊皮紙が高いから、圧倒的に文章が圧縮されているのね。
だから良い文章は格調高くなるけど、読みにくいは読みにくいんだ。
そこへ、口語を元にしたエッセイっぽい文体を持ち込むと……。
超読みやすいわけよ。
ふふふ、現代日本の椎名誠系文体チートじゃ。
「語るような感じでおしゃれ記事を書いてみて、きっと受けるよ」
「凄いですわ、こんな文章初めてですわっ」
「私もこの文体なら書けそうですわ。簡単なのになんて伝わり易いのかしらっ」
「マリリンも真似して良いわよ」
「ありがとうございます、明日までに書いてきますわ」
「私もこの記事をこの文体で書いてみたいですわっ」
「まあ、文章量は二倍ぐらいになるから、あまり沢山の情報は乗せられないからね、そこだけは気をつけてね」
「はい、ありがとうございます、マコトさまっ」
カロルが私の書いた文章を見て、うんうんとうなずいて感心していた。
「マコトは絵も描けるし、文章も上手いのね、凄いわ」
うっひっひっ、漫画は総合芸術なんだぜーっ。
わりかし潰しが利くのだな。
私は嬉しくなってお茶をカプリと飲んだ。
文系のお稽古事は頑張れば頑張るほど能力が拡張されて、忘れないからお得よね。
基本は脳内のイメージ想起力なので、魔法にも、推理にも、戦闘にも関係しているのよね。
前世の現代人というのは、そういうチート能力持ちなのかもしれないなあ。
いやあ、便利便利。
さて、お茶を飲み干して勉強会再開である。
カリカリカリカリカリ。
「そういやカロル、王都内に魔獣屋さんてあるの?」
「無いわ、テロの可能性があるから、魔獣屋さんは禁止よ、一番近くて隣の町ね」
なるほど、王都は魔獣禁止か。
「テイマーが魔獣を連れて入る事は?」
「基本的にできねえな、王都外の預かり所に預けるんだよ」
カーチス兄ちゃんが話を継いだ。
さすがはよく知ってるな。
「他の街なら魔獣も入れる?」
「入れる街もあるが、その時も鑑札を首輪に下げるとか規制がかかるぜ」
わりと魔物使いって大変なんだなあ。
「強い魔獣を連れているのがテイマーの格を決めるからなあ、プラチナ冒険者のテイマーでも、あまり大都市には来ないな、迷宮都市に居るぜ」
迷宮都市なら制限が無いのか。
まあ、魔獣なんか、ダンジョンアタック以外には、あまり使われないからね。
なるほどなあ。
んー、ケリンの森では、どうして魔物使いが居なかったんだろう。
なぜ檻だけあったのか。
テロじゃなくて、取引だったのか?
もしくは残置。
学園の生徒の中にテイマーが居て、そいつに渡す武器として残置していた?
どうもしっくりこないな。
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