第772話 ケリンの森で採取実習
「それでは、適当に別れて毒消し草を摘んできてくれたまえ。一人一束程度で良いよ。足りない分は後で足すから。今日の所は毒消し草が生えていそうな場所を覚えるのと、毒消し草の姿を覚える学習だ。生の毒消し草でも薬効は少ないが毒を消せる作用はある。緊急事態の時は使えるよ」
生のまま毒消し草をかじるのかあ、苦そう。
生徒たちは思い思いにグループを作って、森の中に入り込んでいく。
うちのパーティは、私、カロル、コリンナちゃん、そしてエルマーである。
「薬草摘みは……、初めて……」
「錬金実習でもないとやらないから」
「どこらへんに生えてるんだっけ」
「水辺の日陰斜面が多いわね」
なるほど、カロルは専門家だからとても頼りになるな。
森の中にはちゃんと木で出来ていて柵もある道があって、散歩ができるようになっていた。
まあ、王都が近いからねえ。
四人で小鳥の鳴く森の小道を歩く。
足下で木道がぎしぎし鳴るね。
しかし、森で自然学習だと、WEBテンプレだと、なぜか生息しないような高レベルの魔獣が出て生徒が襲われるのだな。
熊だな。
巨大レッドベアとかが出るんだ。
それは、主人公を妬んだライバルの仕業で攻略対象者と力を合わせてそれを倒すと好感度アップだな。
……。
ヒカソラではそんなイベント在ったかな?
ゲームより小説とかの方が多い気がするね。
ヒカソラの冒険パートはダンジョン中心だったし。
そして、巨大レッドベアは出現せず、我々は小川の近くへと着いた。
「あ、あそこに毒消し草があるわ」
カロルが日陰の岸を指さした。
どれだろう。
木道から下りて川岸に行くと、葉っぱがギザギザの深い緑の植物が群生していた。
「これが毒消し草?」
「そうよ、似た姿で薬効が無い別の草もあるから注意してね」
よし、覚えておこう。
お、近くに薬草も生えてるな。
ついでに摘んで行こう。
「薬草は解るようになったのね」
「まかせてー」
「私はわからん」
「僕も……」
私が薬草の見分けがつくのは、孤児院の子供の薬草取りのバイトに良く付き合ったお陰だな。
収納袋からナイフを出して、手分けをして毒消し草を刈った。
ついでに薬草も。
カロルはなんか解らない草を摘んでいたが、なにやら解らぬ。
「解熱草と目薬草があったわ」
「さすがは錬金術士、よく知ってるね」
「プロだからね」
カロルがドヤ顔で笑った。
そういう所も可愛いなあ。
うえひひ。
さて、これでサーヴィス先生の元に帰ればうちの班は終了だな。
「きゃあああっ!!」
絹を裂くような悲鳴が上がった。
女生徒が三人、向こうの茂みから逃げてきた。
「熊!! でっかい熊っ!!」
茂みの向こうから赤い毛並みの巨大な熊が現れた。
フーフーと荒い息を吐いて興奮している。
なんと!!
巨大レッドベアのフラグが成立していたのかっ!!
いかん、このままでは……!!
コリンナちゃんが無言で懐から銀の弓を出した。
『それは地の力』
朗々とコリンナちゃんは詠唱を始める。
『鉄を引きつけ流星のごとく我が敵を討て』
足下に黄金の魔法陣が展開された。
ビュンビュンとコリンナちゃんが二本の矢を放つと、とんでもない早さで巨大レッドベアの両前足に突き刺さった。
GAOOOOOON!!
巨大レッドベアは吠え声を上げた。
ジャリンジャリンとカロルの足下に大量のチェーンが落ちてきた。
『アイスジャベリン……』
三節棍を構えたエルマーがピシリと巨大レッドベアを指すと大量の氷の矢が飛び、胴体に突き刺さった。
GA,GAOOON……
さすがの巨大レッドベアもよろよろと血を吹き出しながら逃げようとした。
ザンザンザンザン!!
巨人の大きさに組み上がったチェーン君が茂みを蹴散らかしながら巨大レッドベアに肉薄した。
GGAON?
ゴップゴップゴップ!!
チェーン君が鎖の巨腕で巨大レッドベアを殴る、殴る、さらに殴る!
頭蓋がぐずぐずになり、地面にどうと倒れ、巨大レッドベアは動かなくなった。
……。
あれだ、私の仲間は普通に強いな。
危なげなく、私らTUEEだった。
「……、なんだろう、魔物よね?」
「こんな王都の近くに出る魔物じゃないな」
「なんと危ない……」
「魔物使い(モンスターテーマー)かしら?」
騒ぎを聞きつけてサーヴィス先生が駆けてきた。
「みんな大丈夫かっ!?」
「なんら問題は無いです」
「そうか、よかった」
私は中指と親指の間にナノ単位の光分子を輪を作り一気に広げた。
カアアアアン!
なんか、茂みの中に鉄の檻が隠されているな。
怪しい人物はいない。
「サーヴィス先生、今日の野外実習は学園に届けを出してますか」
「当然だよ、さすがの私も思いつきで野外実習はしないよ。先週、学園側に計画書を出してある」
「先生は先週、ホルボス山にいたのに」
「いや、毒消し草のカリキュラムは毎年のスケジュールだからね、郵便で送っておいたんだ」
そうすると我々を狙った、計画的な犯行なのか。
うーん、どこだろう。
ポッティンジャー公爵派か、ジーン皇国系か。
「しかし、マコトくんたちが居たから助かった、ありがとう」
「先生でもあれぐらいは倒せるでしょ?」
カロルがサーヴィス先生に聞いた。
「まあ、爆薬か、溶解液を使ったかな。どっちにしても、こんなに綺麗に死骸はのこらない。冒険者ギルドに持って行けば儲かるよ。どうするね?」
「マコトか、コリンナの実績にしましょうか、二人ともまだブロンズカードですし」
「それはいいね」
サーヴィス先生は微笑んだ。
しかし、一歩間違うと人的被害が出ていた所だな。
魔物使い(モンスターテーマー)の敵が居るっぽいな。
注意しないと。
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