第76話 集会室の掃除が終わったんだぜ
「ふう、こんなもんかね、マコトー、掃除が一応終わったよ」
「ほんと、早いねっ」
「メイドの仕事は手際が命さね」
なにげにカリーナさんがどや顔だ。
ダルシーとシャーリーさんが、疲れ切った顔をしておる。
ごくろうごくろうであるよ。
部屋に入ると、なるほどピカピカであるよ。
さっきまで物置状態だった部屋とは思えない。
窓も綺麗に磨かれて日が部屋に差し込んでいる。
ガラクタが一切無い部屋はがらんとして広く感じる。
「家具の方はどうする、買うか?」
「辺境伯のタウンハウスに余ってる家具とか無いの?」
「さあなあ? 要らない家具は捨ててると思うが」
「……侯爵家も……、同じだ……、タウンハウスは……手狭だから」
まったく金持ちどもは、これだから。
「新品を買いましょうよ、マコトさまっ」
「そんなお金はないわよ、メリッサさん、勿体ないし」
「金なら出すぞ」
「……出そう」
どうしようかなあ。
お金で買うのはなんか違う感じなんだよなあ。
「必要な物は、机と椅子と、応接セット?」
カロルが問いかけてきた。
「そうだねー、会議とかしたいからテーブルは十人がけかな」
「オルブライトのタウンハウスにある家具を持ってくるわ、そろそろ買い換え時期だったし」
「マーラー家からは応接セットをだしますわ。どうせお父様の物だからいらないし」
「それは助かるよ、お願いします」
「いいのよ、みんなで使う部屋なんだし」
「ここは水場は無いのか? お茶とかどうするんだ」
「たてもののはじに、ながしとこんろがありますよ-」
ミーシャさんが、カーチスに答えた。
ふむ、水回りは共同か、まあ、食事する場所でもないからいいかな。
「……持ってくるのが基本……か、クレイトン家は……食器ダンスを……提供する」
「あ、ずりいぞ、エルマー、じゃあ、俺んちは、そのー、あ、エルザがクロスとか出す」
「カーチスさま……、まあ、良いですわ、クロスとそれらを入れるチェストをだしますわ」
エルザさんが呆れた声で言うと、カーチスはなんだよという顔をした。
みんなが品物を出し合うと、大分家具がそろうかな。
あと、足りない物は、ドワンゴの賞金の二十五万で出そうか。
うんうん。
「さ、みんな解散、荷物を入れたりするのは明日にしようよ」
「私はタウンハウスに行って、家具を運ぶ手配をしてくるわ」
「私もそうしますわ、カトレア、いらっしゃい」
「わかりました」
うーむ、カトレアさんはヒルダさんの部下になったのか。
「ヒルダさんの部下でも、カトレアさんは聖女派閥の一員だからね」
「うん、ありがとう、マコト」
カトレアさんは吹っ切れたように笑った。
「何があったかは、わたくしからお伝えしますわ、マコトさん」
「そういや、なんでカトレアさんを部下にしてるの」
「ポッティンジャー公爵派閥からぶっこぬいてまいりましたの、詳しくは後で」
「わかりました、あとでねー、ヒルダさん」
カロルとヒルダさん、カトレアさんが、校門に向けて歩き始めた。
「明日ぐらいから、この部屋で集まれるのか、いいな」
「合鍵をいくつか作っておくよ」
「私が行ってまいります」
「ダルシーおねがいできる?」
「もちろんでございます」
私は155号室を施錠して、鍵を一つ外してダルシーに渡した。
彼女はポンと飛び上がり、校門方面へ飛んだ。
「……やっぱり空飛ぶメイドは変だわ」
「変わってんね」
カリーナさんがつぶやいた。
変だよね。
さて、お風呂に行ってから食堂でバイトするかな。
「マコトさま、これからどうしますの?」
「お風呂、メリッサさんも行く?」
「行きますわっ」
「私もいくかな」
コリンナちゃんがつぶやくと、遠くからどどどどどとドレスで駆けてくる人がいた。
「わた、わたくしも、お風呂に、ご一緒しますわっ!」
「こ、こんにちわ、ユリーシャ先輩」
うーわー。
「うちも、行くみょん」
コイシちゃんもか、うんうん。
だが、ユリーシャ先輩、あんたは遠慮しろ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
と、言っても、ユリーシャ先輩が自重するわけもなく。
現在、地下大浴場で、みんなで一緒にお風呂でござる。
ミーシャさんもついてきたぞ。
彼女は、裸になっても童女だなあ。
「コリンナさまっ、あなた、メガネを外すと、もの凄い美人ですわっ、なぜ、お隠しにっ!!」
「え、あの、いいメガネが買えなくて」
湯船の中で、コリンナちゃんがユリーシャ先輩に、怒濤の寄り切りをくらっている。
コリンナちゃんの手をとった、ユリーシャ先輩の目がガチでコワイ。
「買ってさしあげますわ、買ってさしあげますから、私の事をお姉様とお呼びになって下さいまし」
「えー、いやですけど」
「ああ、なんてつれない、でも、それがいい」
相変わらずキモイな、この人は。
「この人、当て身で気絶させるかみょん?」
「やめなさい、こんなんでも公爵令嬢なんだから」
コイシちゃんは蓬莱の血を引いてるからか、肌がスベスベで綺麗よなあ。
じろじろ見ていたら、彼女は赤くなって離れていった。
えー、良いじゃん、見るぐらいっ。
「あれだな、ブラを買っても、マコトと一緒にお風呂に入ったら意味がないな」
「そんな事を言ってはいけないコリンナちゃん。私たちは高等生なんだよっ」
「そればっか」




