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第765話 ザスキアさんを国境の街に捨てにいく

「お、ザマスだザマス、捕まったのか」


 アダベルが寄って来て、そんな事を言った。

 一応サマンサさんに言って古着に着替えさせてからザスキアさんを連行しているのである。


 トール王子とティルダ王女は村の三馬鹿の後ろに隠れた。


「悪者かー?」

「殺すの御領主さま?」

「ゴツイ女だなあ」

「いや、ジーン皇国に捨ててくる。そう言えば他にも工作員が居たって聞いたけど」


 ガラリアさんに聞いて見た。


「せ、聖騎士団の方が、連行して、い、行きました」


 ああ、大神殿に連行していったのか。

 村に拘束しておく場所が一カ所しか無いからね。

 そっちも、あとで放逐しよう。


「私たちはこのまま学園に帰るけど、アダベルは」

「んーーー、村で遊んで行く。帰りは自分で帰るよ」

「そう、学園長が心配するから日のあるうちに帰るのよ」

「解ったっ!」

「わーい、アダちゃんあそぼうあそぼう」

「釣りがしたいよ」

「よーし、また行こうかっ」


 ガラリアさんがアブを一匹、トール王子の背中にくっつけた。

 彼女が見ているなら安全だな。


 ザスキアさんを飛空艇に乗せて、私たちはメイン操縦室へ。

 ダルシーとアンヌさんが四等船室で彼女を監視してくれるそうだ。


「じゃあ発進するね」

「せっかく来たけど、まあ帰りましょう」


 リーディア団長とアイラさんも下りた。

 今の蒼穹の覇者号にはザスキアさんと派閥員だけだな。


 蒼穹の覇者号は空に舞い上がった。


「エイダさん、一番近くの国境の街はどこ?」

【北部のカルホーンの街です】


 ピコンとマップにマーカーが付いた。

 だいたい一時間弱ぐらいかな。

 遠くに捨てないと、すぐ帰って来ちゃうからね。


「じゃあ、カロル、カルホーンの街までお願いね」

「了解よ、マコト艇長」


 カロルはニコッと笑って操舵輪を回した。


 蒼穹の覇者号は回頭し、北を目指した。

 うむ、カロルに操縦して貰うとラクチンである。

 飛空艇は高度を上げて雲の上を行く。

 いやあ、爽快だねえ。


 雲海の上をブイーンと飛ぶ事四十分、地平線あたりに街が見えてきた。


【国境の街カルホーンです】


 わりと大きめな川沿いの街で、円形の街の真ん中に壁がある。


「あの壁の……、向こうがジーン皇国だ……」

「街の中に国境があるのかあ」

「逆よマコト、国境があって街道が通ってたから街が出来たらしいわ」


 なるほどね。

 わりと古い国境地帯なんだな。


 アップルトン側の街の広場にカロルは蒼穹の覇者号を下ろした。


 ザスキアさんをヒルダさんが引いて船を下りると偉い感じの人がやってきた。


「これは聖女さま、国境の街カルホーンにようこそ。今日はどんな御用でしょう」

「町長さんかな?」

「はい、ユーパート男爵家のブノワと申します、お見知りおきを」


 ブノワさんは人の良さそうなおじさんであった。


「ジーン皇国の工作員を捨てに来たの、国境はあそこかしら」


 なんだか、前世の駅の改札のような所があって、兵隊さんが立っていた。


「おや、処刑しなくてよろしいのですか」

「面倒臭いので放り出すわ」

「さようですか、あちらが出国入国ゲートになっております」


 私がそちらに歩くと兵隊さんが敬礼してくれた。

 ヒルダさんがザスキアさんを連行してきた。


 パスポートとか必要なのかな?


「この人を追放したいんだけど、なにか書類は要りますか?」

「ええと、何をした人ですか?」

「ジーンの工作員です。捕まえておいてもお金が掛かるので捨てたいと思って」

「そ、そうですか、ええと、アラン、こういう時は?」

「んー、俺たちは、よそ見をしていれば良いのでは無いか?」

「そうだな、俺たちは職務怠慢なので、よそ見をしていたら誰かが通ったような、通らないような」

「良いの? それで」

「割とゆるゆるなんですよ。商隊なんかは荷物をあらためますけどね。きっとジーン側が引き取ってくれるでしょう。ボーマン、そうだよな」


 ジーン側から制服の違う兵隊さんが顔を出した。


「ああ、かまわないぜトーマス」


 なんだか、国境なのにゆるゆるだな。


 ヒルダさんに合図をしてザスキアさんの糸を解いて貰った。

 彼女は私をキッと睨み、そして国境線を走って抜けた。


「お、お前達っ!! あの聖女を捕まえるザマスっ!!」

「はあ? 何言ってんのあんた」


 ジーン皇国国境警備兵のボーマンさんが呆れたような声を出した。


「あ、あいつを捕まえれば皇弟閣下から多大な褒美が出るザマスよっ!!」

「えー、勘弁してくださいよ。そんな命令は来てないし、聖女さんを捕まえるなんて嫌ですよ、罰が当たりますよ」

「ありがとう、ボーマンさん」


 私が手を振るとボーマンさんはにっこり笑った。


「意外に良い奴なんですよ、ボーマンは」


 アップルトン国境警備兵のアランさんがそう言った。

 国境の街なのに意外と和やかだなあ。


「そいじゃね、ザスキアさん。また来たらまた捕まえて捨てるからねー」

「お、覚えておくザマスよっ!! 聖女マコトめーっ!!」


 はっはっは、愉快愉快。

 私はザスキアさんに手を振って飛空艇に向かった。


 カーンカーンと街の鐘が鳴った。

 あ、もうお昼か。


「音楽会は何時からだっけ?」

「二時からね」

「うお、急いで帰ろう」

「お昼はどうする?」


 コリンナちゃんが聞いて来た。


「近所のパン屋さんで買って帰り道に食べよう」

「そうね」


 時間があればカルホーンの街で食べても良かったんだが、音楽会に遅刻してはいかん。

 余所の街のパンも面白そうだし。


 私たちは街のパン屋さんで思い思いのパンを買い飛空艇に乗り込んだ。


 さあ、急いで帰ろうっ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 国境もまあ、戦争してないからのう
[一言] ザマスお前ほんとそう言うとこだぞ(´・ω・`) まあ麻薬禍の山高帽みたいに不特定多数に大迷惑かけたわけではあんまり…いや子供殴ってたり人質取ってたな…まあ、好感度0状態なだけマシなのではな…
[良い点] ザマスは最後まで信用ならないやつでしたね。 またきそうで嫌ですが。 というか捨て台詞が三下のセリフで面白かったです。 捨てていくっていうから、飛空艇から放り出すのかと 思いましたが、キチン…
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