表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

766/1524

第764話 トール王子とティルダ王女をホルボス山に送っていく

「さあて、お昼前にトール王子とティルダ王女をホルボス山に送って行くかな」

「そうね、一緒に行くわ」


 よーし、副パイロット、ゲットだぜっ。

 エルマーは居ないかな。

 と、思って振り返ると、エルマーが小走りでやってきた。


「ああ……、行ってしまったか……」

「あ、ごめん、呼ぶべきだったね」

「ん……、まあ、しょうがない……」


 男子勢を呼ぶのを忘れたよ。


「これからホルボス山に飛ぶんだけど、来る?」

「いく……」


 よし、パイロット組集合だ。


「ホルボス山に行きたいですわあ」

「トール王子とティルダ王女ともご挨拶したいですわ」


 派閥員を振り返る。

 わりとみんな来たそうにしてるなあ。

 まあ、良いか。


「んじゃ、ホルボス山まで行きたい人は付いてきて。っても、向こうではあまり滞在出来ないけれどね」

「まあ、嬉しいですわっ」

「いきましょうっ、いきましょうっ」


 結局、派閥員をぞろぞろと連れて、また地下に潜る。


「あんた達は部活は無いの?」

「日曜日はない」

「お休みだみょん」


 剣術部も暇らしい。


 格納庫に行くと、飛空艇からアダベルとトール王子とティルダ王女がドドドと降りて来た。


「マコトーっ!! 遊びにつれていけーっ!!」

「遊ぼう遊ぼうっ」

「ジーンの人は帰ったっ!!」

「今日は予定があるから、また来週……」


 テスト前やん。


「来週の週末に暇だったらね」

「ちえーっ」

「つまんないつまんない」

「あまり聖女さまを困らせてはいけませんよ、王子、王女」


 リーディア団長が諫めてくれた。


「ホルボス村に帰りますか」

「そう、あちらの方が守りやすいでしょう」

「そうですね、暗殺の危険は去りましたが、誘拐はまだありそうです」


 リーディア団長も同意見のようだ。

 ザマスがまだ居るしなあ。


 みんなで飛空艇に搭乗した。

 パイロット組がメイン操縦室に入るとみんな付いてきた。


「ラウンジとかに行きなさいよ」

「ここが外がよく見えていい」

「かっこいい」

「かっこいい」


 んもう、まあ近場だから良いか。


「今日の操縦は私が」

「カロルがやってくれる? お願いね」

「まかせておいて」


 私は船のコントロールを副操縦席に移行した。


 カロルは慣れた感じで蒼穹の覇者号をふわりと浮遊させた。

 一番隔壁から順番に開いていく。


「蒼穹の覇者号、発進!」


 ゆっくりとトンネルの中を蒼穹の覇者号は進んでいく。

 そして、峡谷の棚の上で垂直に上昇してホルボス山の方へ回頭した。


 子供達は食い入るように外部を映したディスプレイを見ていた。

 遠く、小さくホルボス山が見える。


 んで、ぴゅーんと飛んで、ホルボス村上空である。

 まったく早いね。


 船が着陸態勢に入ると家々から村人が出てきて笑顔で手を振ってきた。

 村の広場に着陸した。


「さあ、着いたわよ」

「もう着いたの?」

「あ、みんなだっ」


 ディスプレイに駈け寄ってくる村の三馬鹿子供の姿があった。


「下りよう」

「そうだねっ」


 トール王子とティルダ王女は手を取りあってメイン操縦室を出て行った。

 さて、私たちもちょっと下りよう。

 挨拶だけして学園に帰るかな。


「お帰りなさい御領主さま」

「今日は良い陽気ですね」 


 広場に降りると、村人達が口々に挨拶をしてきた。

 トール王子とティルダ王女は三馬鹿と一緒にキャイキャイ騒いでいた。


「聖女さま……」


 ガラリアさんが近寄ってきた。

 おろ?


「ザスキアを捕まえました、牢にいれてます」


 げ、捕まったか。

 まあ、逃げたままでいても物騒だしな。


「処刑しますか?」


 リーディア団長が物騒な事を言ってきた。


「んー、またどこかに放流しましょうか」

「また来ますよ……」

「また捕まえましょう」

「聖女様はお優しい」


 私がガラリアさんに付いて行こうとすると、カロルとコリンナちゃんも付いてきた。


「なによ」

「一人じゃあぶないし」

「私も戦えるようになったし」


 えー、ザマスだよ、二人とも、必要無いと思うけどなあ。

 と、思ったらヒルダさんと、カトレアさん、コイシちゃんも付いてきた。

 そんなぞろぞろと。


 私たちはガラリアさんの先導で村の教会に行った。


「教会?」

「ら、乱暴者を閉じ込める牢、が、あるのです」


 ああ、村役場が無いから虎箱代わりの牢屋が教会にあるのか。


「あら、聖女様、いらっしゃいませ」


 助祭のサマンサさんが迎えてくれた。


「ザマスは大人しくしてる?」

「騒いでうるさいので何とかして欲しいです」

「わかりました、ごめんね」

「いえいえ、村の事ですので問題はありませんよ」

「こっちです」


 ガラリアさんは地下への階段に私をいざなった。

 石作りの階段をコツコツと下りる。

 割と湿気があるね。


「村役場を作ったら牢も作らないと駄目ね」

「そうね」


 地下の牢にザスキアさんは居た。

 高級そうなドレスがズタボロになって酷い有様であった。


「ああ、聖女さま、お助け下さいザマス。わたくしも仲間にして欲しいザマス」

「ええ、やだ。信用出来ないし」

「そんな事を言わずに、身を粉にして働くザマスよ」


 涙目になってザスキアさんは訴えた。

 んだが私は知っている、こういうタイプはカジュアルに裏切る。

 人柄の信用というのは、やっぱり財産なのよね。

 高潔な人柄なら寝返らせる価値があるが、信用がおけない人は駄目である。


 ザスキアさんはあちこちに傷があった。


『ヒール』


 遠隔でヒールして傷を治した。


「またジーンの国境を越えた所にでも捨ててくるわ」

「お願いザマス、聖女さま~~」

「きっとまた来るでしょう、でも、また捕まえてジーンに捨てるわ」


 七回ぐらい繰り返せば諦めるでしょう。


「どうして信用してくれないザマスか、私はこんなに純真なのにっ」

「子供にビーム撃つ人は一生信頼とかしません。あんたは信用にたる行動してないじゃん」


 ザスキアさんはオロロンオロロンと泣いた。

 嘘泣きくせー。


 ヒルダさんが前に出て、不思議なジェスチャーをした。

 見えない糸で縛ったっぽい。


 サマンサさんが鍵を開けると悄然しょうぜんと背中を丸めて彼女は牢から出てきた。


 さあ、ジーン国境へザスキアさんを捨てに行こう。

よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] おろ? 貴族の身分を詐称した時点で、ヤバンな中世(偽)欧州辺りだと即刻(物理で)首が飛ぶ案件かと思っていましたが。 ところで囮にしようとした城塞の若い衆は一緒に捕まって無いんですか…
[一言] まあメイドって職業は本来信用が全てだよね。諜報メイドのいる世界だと忘れがちですけど。 子供を苛めるメイドはダメイドなんだぞ。
[一言] オロロンオロロンと泣くという表現はのはウソ泣きっぽくて良いですね~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ