第760話 カロルと愛を確かめ合った後ディーマー皇子と踊る
「マコト!」
おおうっ、カロルが後ろから抱きついてきた。
「ありがとうマコト、ごめんねっ」
「何を言ってますか、愛するカロルの為ならなんでもないよ」
涙ぐんでいるカロルの頭をぽんぽんと叩いた。
カロルは泣き虫だなあ。
「そうですか、マコトさまはマイレィディのために派閥を」
「俺が勧めたんだけどな」
「そうだったな……、カーチスグッジョブ……」
ああ、カロルとカーチス兄ちゃんとエルマーと始めた派閥もこんなに大きくなったなあ。
感無量である。
まあ、短期間に育ち過ぎ、重武装になりすぎな気もしないでもないが。
「派閥のためなら、ポッティンジャー公爵派と組むのもありだけどなあ。カロルを追い出せというなら無理だわ」
「そんな事になったら困るぞ、コリンナくん」
「国王派は困りますね」
「国内随一の派閥が誕生してわれわれでは抑えきれなくなる。断ってくれてありがたい」
派閥の力というのは、言ってみれば政治力でもあるからね。
ポッティンジャー公爵派が聖女派閥と合体して力を付けると、王様とかは困るのだろうな。
カロルに向き直りしっかりと抱きしめて頭を撫でる。
彼女の体温が心地良いね。
よしよし、よしよし。
泣かなくても大丈夫だよ、私があなたを絶対に守るから。
しばらくしてカロルは落ち着いた。
「あ、ごめんなさいマコト、ちょっと感情が高ぶってしまったわ」
「いつでもどうぞ」
私が笑うと、カロルは華のように笑った。
うん、カロルの笑顔が好きだよ。
ディーマー皇子がやってきた。
「こんな所に居たのか、探したぞマコト」
「なにかあった?」
「一曲踊ろう」
ダンスの誘いかよっ。
あんまり気が進まないが、こいつらのお別れ舞踏会だからなあ。
一曲ぐらいサービスするかな。
「いいよ。じゃあ、行ってくる」
カロルがうなずいた。
なんか、再び愛を確かめ合った感じがする。
舞踏会は色々と人の仲が進展するね。
秋のダンパが楽しみじゃ。
ディーマー皇子に手を引かれて大ホールに戻る。
おお、豪胆な奴め、真ん中で踊るのか。
「ディーマー、踊りの方は?」
「まかせろっ」
まあ皇太子だしな。
ちゃんと教育されているだろうよ。
楽団から前奏が流れてきた。
げっ、ブルースじゃん。
よりによってチークダンスとは。
まあ良いか。
ぺこりと一礼して、体を密着させる。
というか、ディーマーでっかいなあ。
私がちびなのもあるけど。
踊りにくそうだ。
この体格差だとワルツが良かったな。
あ、だけどリードが上手いな。
チークだから密着してゆっくりなんだけど、動く意思がはっきりしてるので読みやすい。
「ふむ、聖女は踊りやすいな」
「わりとダンスは得意なんだよ」
お互い抱き合ってゆっくりと動く。
ジーンの人間はアップルトンの男衆とちょっと匂いが違う感じ。
香水かな?
「今回の表敬訪問は得る物が大きかった。沢山の事を理解したよ」
「わりと感じが変わったよね」
「お前と知り合って、色々と解った事があった。ジーンは大国だから何をしてもいいのだと、力で脅せば弱小国なぞ、すぐ平伏すると思っていた」
「そんな風に思っていたのか」
「うむ、今考えると我は子供であったな。それを気付かせてくれたのは、マコト、お前だ」
まあ、色々とあったからなあ。
ひっぱたいた事もあったな。
「お前は生意気で我にも物怖じせずに、ずけずけと物を言い平気な顔でこちらの要求を断った。なんという無遠慮な女か、と思った」
「外国の偉いさんだしな」
「いや、お前はアップルトンの王族にもあまりへりくだらないぞ」
そうかもしれない。
まあ、ケビン王子とかとは仲が結構良いからな。
最近丁寧だったのは、トール王子とティルダ王女ぐらいかな。
あの二人は王族というのを忘れて欲しく無いからさ。
「甲蟲騎士団から飛空艇で我らを救ってくれたり、ナーダンを瀕死の重傷にしたり、まったく好き放題にやってくれた」
「まあなあ、聖女候補なんで」
ディーマー皇子は柔らかい笑みを浮かべた。
ほう、そういう表情もするんだ。
「我は生まれて初めて女性に気持ちを動かされた。聖女マコト、お前の事が好きだ」
お、おおおっ、くそっ、いきなり告白はやめろよなあっ。
頬が熱くなるだろっ。
イケメンだから破壊力が大きいし、心がなんかこもってる感じで自動的にとても照れくさいぞっ。
「そ、それは、ありがとう……」
「このまま覇軍の直線号でジーン皇国へさらって行きたいぐらいだ」
「そりゃ勘弁だな」
「だめかあ」
「私はここの学園生活を大事に思ってるし、親友を置いていけないしね」
「だが、まだ三年ある。我は必ずお前を妻にするぞ」
「がんばってくれ」
望み薄だと思うけどなあ。
それでも、皇太子の地位でぐいぐい押さなくなっただけ成長が見えるな。
異性に告白されたのなんか初めてで照れくさいなあ。
なんだかんだ言って、ディーマーとも、グレーテとも仲良くなったな。
このまま皇帝になってくれれば戦争の可能性が薄くなるから良いな。
「聖女マコト、我は約束をしよう、皇帝に即位して必ずお前を迎えにくると」
「そういうのは即位してから言え」
そういうのは狸の皮算用って言うんだぜ、ディーマー。
うーん、しかし、恋愛感情からのプロポーズは効くなあ。
好感度が上がった感じだな。
人間はムードに流されやすい生き物なんだな。
いつの間にか窓の近くに来ていた。
遠く空中庭園が見えて、その奧に満月が掛かっていた。
『それは地の力……』
カーチス兄ちゃんと踊っていたコリンナちゃんが詠唱しながら我々の前に出た。
足下に金色の魔法陣が広がる。
「狙撃っ?」
コリンナちゃんはうなずく。
空中庭園の柵に逆さまにぶら下がった人影が見える。
ナージャだっ!!
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