第744話 覇軍の直線号の機関室であがく
カンカンカンと金属製の階段を駆け下りると、そこは機関室だった。
どこだー、魔石タンクはどこだー。
「あの丸い物が火魔石タンクだ、隣にあるのが風魔石タンクだ」
うっは、かなりでっかい。
直上に天窓があってそこから魔石を運び入れるっぽい。
北海道にある飼料を入れるサイロぐらいの大きさだ。
「下はどこら辺まであるの?」
「船底まで魔石タンクだ」
タンクの横にハシゴがあったので上ってみる。
蓋があってそれを開くと赤い魔石がぎっしりつまっていた。
上部は外せるようになっていて、そこから魔石を投げ入れる構造のようだな。
とりあえずサーチ。
魔石は透明なので光を通すだろう。
上部から下部に向けて光の輪を打ち込んだ。
カアアアアン。
あ、ある、底の方に羊皮紙の巻物がある。
そうとう深くにあるな。
「マコト、鎖を潜らせて取れないかな?」
「多分届かないと思う、というか鎖の先で絡め取れるの?」
「アタッチメントがあるわ」
カロルは鈎状の部品を鎖の先に付けた。
ジャリジャリジャリと鎖が蛇のようにくねりながら動いた。
「やめた方がいい、無理な力が掛かると起爆するようにしてある」
エバンズが淡々と言った。
くそう、対応済みか。
巻物はタンクの底の方、しかも真ん中にある。
端に寄っていたら子狐丸のすり抜けで破壊する事も出来るだろうが、長さが足りない。
何か無いか何か。
リンダさんのダンバルガムで斬るしか無いのか。
人足が掘るとなると、上部を外して機関室の空きスペースに魔石を移動させるのか。
六時間は妥当な時間だな。
「コリンナさまの磁気誘導矢に私の糸を結んで射貫いてもらうのはどうかしら」
「巻物が破壊されると起爆する」
「くっ、隙がありませんわね」
エバンズは両手を広げた。
「マコトさん、もう良いだろう、あなたは努力をした、仮にタンクごと叩き斬っても魔石が雪崩を打ってこぼれ落ち、巻物だけを取り出す事は難しい。さあ、早く逃げるんだ」
「い、や、だ」
何か無いか、何か無いか。
ダンバルガムが斬った時の魔石雪崩は障壁で囲えば……。
上から障壁で魔石をどかすようにトンネルを作ればどうだ……。
いや、人が通れるぐらいのサイズにすると魔石がこぼれ落ちる。
巻物が通れるぐらいの幅で……。
「大丈夫ですかっ!!」
「タンクに爆弾って本当ですかいっ!」
どたどたと船長と機関員が階段を下りてきた。
「巻物を確認した、今、取り出す方法を考えてる」
「場所はタンクのどの辺ですかい?」
「一番底よっ」
「一番底! 無理だ魔石を掘り出すのに半日かかる」
「何か方法は無いのか機関士長!」
「うーん」
機関士長は唸った。
横からタンクを破壊して取り出すのも大変だろう。
上からエッケザックスで巻物を撃ち抜いて起爆しないようにする……。
いや、危険度が多すぎる。
貫いたビームで魔石が反応してしまいそうだ。
【マスターマコト、ビアンカさまからメッセージです】
「なにっ!!」
ビアンカさまが、また何かナイスアイデアをくれるのかっ!!
【希少薬品を納める時間停止瓶は魔法障壁の厚さを調節する事でできる。だそうです】
「「「は?」」」
今欲しいのは時間停止瓶の作り方じゃないよっ!!
巻物の起爆を止める……。
あっ!!
障壁に厚みを付加すれば中に入った物の時間が止まるのか!!
そして障壁は硬化ガラス程度の堅さがある。
上から巻物を障壁で包めばカロルの鎖で引っ張り上げられるかもっ!!
「カロル!」
「解ったわ!」
カロルがハシゴに上がってきた。
「巻物を障壁で包む。それから巻物まで円筒の障壁のトンネルを作る」
「解った、トンネルの中に鎖を入れて巻物を引き上げるわ」
さあ、始めよう。
しかし、ビアンカさまも遠回りにヒントをくれるなあ。
まったくもう、もっと早く伝えろよう。
絶対楽しんでるよな。
狭いハシゴの上でカロルと肩をくっつけ合って私はサーチで巻物の位置を確かめる。
カアアアアン!
1秒に二回ぐらいの間隔でサーチの視界を確保する。
巻物を包むように……。
ちがう、厚みの無い障壁をまず作って、厚みを拡張する感じだ。
うおっ、結構魔力を持っていかれる。
いつもは厚みの無い障壁だからね。
薄い所から厚みを付けると、魔石が上下に逃げる。
上手に巻物だけを包み、こんだっ。
「ふー、ふー」
「だ、大丈夫マコト」
「大丈夫」
障壁の筒を作るのも同じ仕掛けでいこう。
厚みの無い只の線状の障壁をまっすぐタンクに差し入れて。
開く!
ぽかりと魔石タンクの真ん中に障壁のトンネルが出来た。
「チェーンを入れるわ」
ジャリジャリジャリとチェーンがトンネルに吸い込まれていく。
私は小さな光弾を発生させて筒の中を照らした。
「見える?」
「なんとか、あと、鎖の感触は伝わるし」
おお、鎖の触覚があるのか。
ジャリジャリジャリと鎖が吸い込まれ、そして止まった。
「届かないっ」
カロルは魔石タンクに身を乗り出して、筒の中に鎖の端を持った手を入れた。
私は障壁を保持しながら、カロルの体を支える。
「よしっ!」
カロルが手を引っ張り出し、ハシゴに戻った。
ジャリジャリジャリと鎖が勝手に動いていく。
そして巻物が筒の上に姿を現した。
「ふう」
「ふう」
カロルと同時にため息をついてしまった。
鎖でぐるぐる巻きになった巻物を私は手に取った。
見えない障壁に包まれて時限魔法は停止しているようだ。
私はハシゴを下りる。
「私の勝ちね」
「恐れいった、私の負けだ」
手の中の巻物を見せるとエバンズは深く頭を下げた。
彼は悲しそうな顔をしていたが、どこかほっとした感じもあった。
船長と機関士長がへなへなと床に座った。
私もハシゴに腰をかけた。
「大丈夫ですか、領袖」
「大丈夫、またビアンカさまに助けられたけど」
「あの人は、なんでいつもギリギリに助言してくるのかしら」
「ギリギリにならないと……、運命が定まって無い……、のかもしれない……」
エルマーの言うとおりかもなあ。
あまり早く助言すると運命が変わってしまうのかも。
まあ、半分ぐらいは趣味だと思うけどね。
「あれね」
「なによ」
「時間停止瓶を作り放題だわ、うれしいっ」
「あ、はい」
商売人の顔をして、カロルの目がギラリと光ったのだった。
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