第737話 凄いぞコリンナちゃんの磁気誘導矢!
『それは地の力、鉄を引きつけ流星のごとく我が敵を討て、磁気誘導矢』
コリンナちゃんが朗々と詠唱をすると足下に金色の魔法陣が広がった。
「この時点で磁力で矢を防ぐ効果が始まっているんだ」
そう言ってエーミールが矢を投げると地面にぺしゃりと落ちた。
これは安全!
弓を引き絞ったコリンナちゃんが矢を放った。
矢は……、へろへろへろと的の手前で落ちそうになった。
が。
地面に付く前にシュルンと矢は浮き上がる。
なんか気持ちの悪い動きでシュルシュルシュルと矢場の石畳を這うようにして矢は飛ぶ。
「くねるっ」
矢は、そのまま加速してズドンと的に半分以上突き刺さった。
「「「おおーっ」」」
「えっへっへ」
コリンナちゃんは照れたように頭をかいた。
「私もやってみようっと」
同じ地属性のカロルが矢場に立った。
練習場の弓を構える。
『それは地の力、鉄を引きつけ流星のごとく我が敵を討て、磁気誘導矢』
カロルの足下にも金色の魔法陣が浮き上がる。
が。
小さい。
「メガネが式を増幅しているわね」
カロルが矢を打った。
普通に的まで飛んで刺さった。
「誘導も弱いわ」
「やっぱりメガネが誘導体かあ」
「だが……、面白い……」
カロルが自分の腰を叩いた。
ジャリジャリジャリーンと大量の鎖が落ちる。
『それは地の力、鉄を引きつけ流星のごとく我が敵を討て、磁気誘導鎖』
カロルの詠唱と共に、鎖がびゅーんと伸びて的を打った。
「うーん、打撃力が上がったような、そうでも無いような、解析してアレンジしないと駄目みたいね」
「というか、カロルはどうやってチェーンを動かしているの」
「魔力よ」
普通に魔力かあ。
ボール系を打ち出すシステムの複雑な奴なんだな。
いや、ゴーレムコントロールの魔法かな?
「とりあえず、奥の手だな、基本的に普通に射手としての実力をつけて、最後の決め手に使うのがいいな」
「そうですね、今の魔力量だと二発が良い所なんで」
「だが、面白い、地属性の射手とは、師匠として僕は鼻が高いぞ、コリンナ」
「いえいえ、もらい物の呪文ですから」
カーチス兄ちゃんが腕組みをしてふむふむとうなずいた。
「二発でもコウナゴに必殺技が出来たのはいいな。変な動きだから意表を突くことができる」
「仕掛けが解っても理解ができん、なんで磁石の力で高速で飛ぶんだ? おかしいじゃないか」
「岩肌の上に磁石を作ってそれを思念で移動させてるのよ。原理上思考の速度で飛ぶわね」
「石の種類によって引く強さが違うから結構むずかしいよ、カトレアさん」
「うむむ」
カロルに説明されても、カトレアさんは納得いかないようだ。
だが私には解る。
リニアモーターカーの原理だ。
鏃の鉄を反発させて磁力で引いてる感じだな。
「岩のある所ならどこでもつかえるみょんか?」
「そうだな、漆喰とかでも引けるけど弱いよ」
「ダンジョンは全部岩で出来てるから飛ばし放題みょんなあ」
ああ、そうだね。
ダンジョンなら周りが全部、岩だからコントロールし放題だ。
「ああ、それは良いなあ、ガドラガの実習で良い点を取れそう」
「うむ、二年になるまでに体力と魔力を鍛えたまえ」
「はーい、師匠」
ヒルダさんがニコニコしていた。
「良かったですわね、コリンナさま、私も少し心配してましたの」
「ガドラガの実習ってキツイですかヒルダさん」
「迷宮慣れしてない生徒が多かったので、前回は結構大変でしたわ、遭難して死人も出ましたし」
「よし、コウナゴ、今度剣術組と一緒にダンジョンに行こうぜ、パーティでの動きとか覚えないといけないしな」
「それが……、いい……」
「エルマーの棒の先生は決まったの?」
「今度の……、日曜日……、初顔合わせ……」
「おお、良かったね」
「芙蓉料理屋の若旦那が教えてくれるそうだ。ほら、派閥結成会議の時に行ったカイエンって店だ」
「おお、本場の芙蓉の人かあ、頑張ってねエルマー」
「がんばる……、ぞ……」
いやあ、みんな色々な魔法を覚えたり、武器を手に入れたりで成長していくなあ。
なかなか聖女派閥は良い感じじゃないかな。
アイラさんもニコニコしていた。
……。
あれ?
なんか変じゃない?
なんでナージャはエーミールを襲ったんだろう……。
「どうしたのマコト、心配事?」
「いや、なんでナージャはエーミールを襲ったのかなって思って、作戦の本筋じゃないよね」
「あ、それは気付かなかった、確かに狙うのはターゲットである、ディーマー皇子かグレーテ王女であるべきだな……」
「前日に師匠と私が都内でうろうろしているのを見て、先に片付けるつもりだったんじゃないですか?」
確かに、高名な射手であるエーミールが狙撃場所をチェックしていたら先に潰そうとなるかもね。
うーん、しかし三日で狙撃をやれるものなのか?
あまりにも時間が少なすぎるような気がする。
まさか、なにかの陽動か?
なんとなく不安だな……。
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