第736話 コリンナちゃんの新しい魔法を検証しにいく
カロルの操縦で蒼穹の覇者号は格納庫に着陸した。
「エーミール、呪矢は痛くないの?」
「お、そう言えば痛く無い」
これは鏃が呪いに変化して消えたな。
あの魔法は物質を呪いに変化させて患部に留まらせる、そして間欠に実体化して何年にもわたって痛みを与えるのだ。
「治療するから付いてきて」
「わかった」
エーミールの後から、コリンナちゃんが付いてきた。
「師匠大丈夫ですか?」
「平気だ、しかし聖女が呪矢を無効化できるとはなあ、派閥の爺どもが凄く感謝していたよ」
「この呪いは悪質だからね。人に使うような物じゃないわ」
三等船室の一室が空いているから使おう。
ドアを開けると、アイラさんが甲蟲甲胄に着替え中であった。
「あらまあ」
危ない、鎧を着終わった所であった。
「あ、ごめんなさい使用中でしたか」
「もう着替え終わりましたから、やや、極大射程殿ですね、お噂はかねがね」
「ありがとう、サイズの蜂さん」
「アイラです、よろしくお願いします」
そう言うとアイラさんは敬礼をした。
蜂の甲胄は格好いいな。
大層お腹がくびれておる。
左舷の三等船室はサイズ側の控え室になっているみたいだね。
「治療……、キルヒナーの呪矢ですか」
「そうよ、やっかいな呪いよね」
「打ち込まれたら対処のしようが無いとの事で、ずいぶんキルヒナー家は威張っていましたよ。聖女さまなら治せますか」
「治せるわ」
「それは凄い、見ていて良いですか」
「ええ、良いわよ」
三等船室に入ろうとしたら、カロルとエルマーがやってきた。
「コリンナ、大丈夫だった?」
「大丈夫だよカロル」
「なにより……」
「詳しい話は帝国の人が居ない所でね、手の内が知れるから」
アイラさんがバツの悪そうな顔をした。
「私も退席しましょうか、機密でありましょう?」
「サイズの人なら良いわよ、友邦だし」
「それは……、嬉しいですっ」
アイラさんはとびきりの笑顔を見せた。
将来は本当に友邦になると良いね。
エーミールをベッドに座らせて上を脱いで貰った。
おー、良く鍛えてあるなあ。
細マッチョだ。
私は子狐丸を抜いて彼の肩の傷に合わせた。
「い、痛いのか?」
「全然」
子狐丸をエーミールの肩にサクっと差し入れ、呪矢の呪いのコアを斬る。
「確かに何も感じない、凄いな」
カタン。
鏃が床に落ちた。
「はい、おしまい」
「か、簡単だな」
私は椅子を持って来て座った。
「じゃあ、何があったのか教えて」
「僕が話すか? それともコリンナか?」
「コリンナちゃんが何が起こったか話して」
「わかった」
カロルとエルマーも椅子を引いてきた。
コリンナちゃんは椅子が無いので、エーミールから距離を置いてベッドに座った。
アイラさんはピシリと立ったままであった。
軍人さんだなあ。
で、大体のあらましが解った。
地属性の弓矢魔法とは。
磁気誘導ってあなた、超電磁コリンナちゃんだなあ。
レールガンみたいな事も出来るかな。
「すごい、地属性の魔法、私も使えるかな?」
「んー、式の半分ぐらいはメガネが処理してる気がするよ、単体発動できるかな」
「投げナイフとか誘導できれば強いわよこれ」
「矢……、特化の可能性……」
「風の矢誘導も、矢特化魔法だ、やっぱり弓での射出がいるのではないかな」
さすがはエーミール、専門家の意見だな。
「昔の伝承で地属性の射手は結構いて、なんでかなあと思ってたけど、この魔法を使ってたのかしら」
「豪傑……、クリストファーの矢は……、蛇のようにくねり……、悪王を貫いた……、とあった……」
クリストファーは伝説の射手だね。
錬金術の祖の一人だったりもする。
風属性の錬金術師というのが定説だったが、土属性だったのかもね。
「矢がくねったりする伝承は、たぶんこの魔法ね、実際に見たいわ」
「コリンナちゃん、魔力は大丈夫?」
「ちょっとの距離なら大丈夫だよ」
よし行こう行こう、実際に見るのが一番だ。
みなでぞろぞろと飛空艇を下りる。
なんか、アイラさんが付いてきているが、まあヨシ。
格納庫を出て、待合室のドアを開けた所で、向こうから来たカーチス兄ちゃんとぶつかりそうになった。
「おおっと、ごめん。おおコウナゴ、無事か」
「無事です、そろそろ名前を覚えてくださいよ」
「良いんだ、あだ名だからな」
後ろにはヒルダさんと、コイシちゃん、カトレアさんもいるぞ。
これは長耳さんに知らされて来たかな。
「カーチス、あんたの諜報の人と話した」
「ああ、うん、そうだな」
「今度会わせて」
「いや、その、ブロウライト家の秘密だからな、今回は緊急事態だったから」
ちえ、カーチス兄ちゃんはケチだなあ。
「んで、どこに行くんだ」
「武道場でコリンナちゃんの新しい魔法の実験だよ」
「……ポッティンジャー公爵派も居るのにか?」
カーチス兄ちゃんはエーミールを見た。
「師匠は、まあ、別だからね」
「そうだ、僕は特別なんだ、ブロウライト卿、わっはっは」
「ぐぬぬ」
まったく男子どもは、すぐじゃれ合うのでいかんな。
みなでぞろぞろと武道場の矢場の方へと入った。
幸い誰も使っていない。
さあ、見せてもらおうか、ビアンカさま謹製の地属性弓矢魔法とやらを。
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