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第732話 地獄谷を出発、一路王都へ

 カロルが瓶に温泉を汲み入れていた。


「何するの、それ?」

「成分を分析して、あと湯の花作りの実験よ。ホルボス村のは、もう取ったわ」

「すばやい」

「こちらの方が強いお湯な感じね」


 瓶の中のお湯を振りながらカロルは言った。

 確かにこっちのお湯の方が強そうだ。

 触るとピリピリするものね。


 同じ山の温泉でも結構違う感じだね。


 集落の広場に水盤ができていた。


「あれ、これは?」

「昨日、教会の工事の人がきてやってくれただよ」


 ああ、配管工の人達がもう来たのか。


「川まで汲みにいかないですんでありがたい事だよ」


 掬って飲んで見た。

 おお、爽やかな感じの山水だね。


「配管工の人達は?」

「今朝、王都に帰っていったよ」


 色んな人が働いて集落が良い所になっていくなあ。

 うんうん。


「冒険者とか変な人とか来なかった?」

「二組ぐらい来たなあ」

「ホルボス村に抜ける道は無いかとか聞いていたよ」

「脇道で半日かかるって言ったら戻っていっただよ」


 頂上を越える道もあるんだけど、途中は硫黄の採掘場で危険だからね。

 諜報員の行き倒れはぞっとしないな。


「また見に来るから、お仕事頑張ってね」

「ありがとうございますよ、御領主さま」

「ほんに俺たちは幸運だよ」

「まだまだ、もっと幸せになってもらうからね」

「ありがてえありがてえ」


 おがむなおがむな。


 子供達がお湯溜まりを足湯にしていた。

 トール王子とティルダ王女も、ちんまり座っていて可愛いな。


「さあ、みんな帰るわよ」

「わかったー」

「あー、私の靴下がないーっ」

「足がスベスベになったぞ」


 カオスな子供達をつれて飛空艇に戻る。


「マコ姉ちゃん、こっちの村の温泉は入れないの?」

「今はまだね、そのうち作ります」

「宿泊施設……、が要る……」


 簡単な旅館とか欲しいね。


 さてさて、離陸である。


「さあ、学園に帰りましょう」


 今から帰れば三時頃だね。


「ラウンジでジュースを飲もうぜー」

「わああっ、やったーっ」

「お菓子もあるかな」


 収納袋にソバボウロの袋があったので、アダベルに渡す。


「お、ソバボウロだ」


 いや、袋に手を突っ込んでもしゃもしゃ食べ出さないでよ。

 子供達も手を突っ込んでもしゃもしゃ食べ出す。


「おいしい、素朴」

「あー、ソバのお菓子だね」

「おいしいおいしい」

「ラウンジに行ってジュースと一緒に食べなさいよ」

「「「はーい」」」


 子供達はどどどとメイン操縦室を出ていった。

 まったく元気だな。


 カロルは子供達を見送りながらふふふと笑った。


 伝令管の蓋を開けて、


『蒼穹の覇者号、発進します、危ないのでお下がり下さい』


 とアナウンスして離陸した。

 集落の人達は笑顔で手を振ってくれた。


 ホルボス山の山頂を越える高度を取って回頭する。

 高く上がると王都が見えるね。

 出力を上げて前進。


 ちょっと飛ぶと王都上空であるよ。

 まずは孤児達を大神殿に下ろさないとね。


 ついっと大神殿は聖騎士団の練兵場上空、そして高度を下ろして着陸。

 やっぱりホルボス山は、すぐ近所だわ。

 関東で言うと、都心から高尾山な感じかな。

 高尾山よりも高いけどね。


 メイン操縦室から出ると、子供達が廊下にいた。


「ねえねえ、トールくんとティルダちゃんに孤児院を見せたいんだけどーっ」

「大神殿の中とか案内したいーっ」


 あーー。


「気持ちは解るけど、二人は避難中だからね、次の機会にしようね」

「そうだぞ、王都見物は村の子分たちも連れてきてみんなで行こうよ」

「あ、そっかー」

「残念だけどしょうがないね」

「みんなありがとうー、気持ちが嬉しいよ」

「平和になったら案内してよ」

「そうだねそうだね、平和になったらね」


 孤児達は、アダベルと、トール王子とティルダ王女にバイバイと手を振って下りていった。


「大神殿、見たかったな」

「また今度連れて来てやるからー、この私の籠で」

「籠でくるんだ-」

「二人と村の子分三人でちょうど乗れるよ、迎えに行くよ」

「うん、楽しみっ」


 よしよし。


『マコトさま、長耳ともうします、緊急……』


 は?

 今、耳元で声がしたぞっ。

 風の声を伝える魔法っぽい。

 急に切れたのは、ハッチが閉まったからっぽい。


「エイダさん、ハッチを開けて」

【了解しました】


 ハッチがウイーーンと開いた。


 ああ、こっちからは喋れないのか?


「もしもし」


 あ、前世の癖が出た。


『長耳です、緊急事態です。王都の東地区繁華街でエーミールさまとコリンナさんがナージャ・キルヒナーに襲われています。今すぐ救援に向かってください』

「ええっ!!」


 私はメイン操縦室に飛びこもうとして止まった。

 さっき、ハッチが閉まったら音声が切れた。


「どど、どうしたマコト」


 アダベルとトール王子とティルダ王女が目を丸くして私を見ていた。

 だが、かまってられない。

 ごめんね。


「密閉空間では声を届けられないの?」

『はい、ある程度の風が通る場所がないといけません』


 では上だ、副操縦室に向かって私は駆けだした。


「エイダさん、バリアを解いて、副操縦室に風が通るようにして」

【了解です、低速飛行しかできませんが】

「現場は王都内だから問題無いっ」


 螺旋階段を駆け上がる。

 私の後ろを、アダベルと王子王女が付いてきている。


 ラウンジを横切り、副操縦室に飛びこむ。

 窓は手動か。

 押し開く感じだ。


『聞こえますかマコトさま』

「聞こえるわ、長耳さん。今から飛び立つから正確な位置を教えて」

『わかりました』


「なんだなんだ」


 アダベルが副操縦席によじ登りながらそう言った。


「コリンナちゃんとエーミールを助けにいくの」

「おおおっ、ピンチなのかっ!」


 私はトール王子とティルダ王女を振り返った。

 下ろして行きたい所だけれど、大神殿を諜報員が張り込みしてたら逆に危ない。

 そして、そんな時間も無いな。


「エイダさん、コントロールを副操縦席に、蒼穹の覇者号、緊急発進します!」

【了解しました】


『ちょっと、マコトどうしたの』


 メイン操縦室からカロルの通信が入った。


「コリンナちゃんが危ないっ、助けに行く!」


 私は素早く出力レバーを押し上げ、操舵輪を引いて蒼穹の覇者号を空に舞い上がらせた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ナージャさんェ…マコトのバルスを受けるかwktk
[良い点] 皇子が空気。 [一言] 長耳さんが直接マコトちゃんにコンタクト。 ダルシーちゃん経由ではダメ? 罠?
[良い点] ほのぼのからのコリンナちゃんピンチ!! 話の落差がありすぎてくらくらします。 でもものすごく面白いです!! そりゃ、敵が攻めてくるんですもの。 こちらはほのぼのしていても、 相手には関係な…
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