第728話 午後は集会室でお茶を飲みながら絵を描く
空中庭園ランチから学園へ戻ってまいりました。
なにげに王城にちょくちょく行くようになったな。
学生の身分でおこがましい気もするのだが、用事があるのだから仕方があるまい。
「マコトは午後はどうするの?」
「集会室で絵でも描いてるよ」
「暇ならば……、実験……」
「嫌でございます」
しばらくは光魔法実験はごめんだ。
十年分ぐらいの研究用データは取ったはずだからそれを使えば良いのだ。
校舎に入るみんなを見送って、私は中庭経由で集会棟へ向かう。
メリッサさんが落ちた池の柵は半分ぐらいできてるな。
安全第一だよ。
集会室に入り棚から絵の具類を取り出した。
カロルの素描が描かれたキャンバスに向かい合う。
背景はどうしようかな。
そうだ空中庭園な感じにして、遠景の街を入れるか。
豚の膀胱に入った絵の具をパレットに出す。
ラベルが付いてないから、どれがどの色か出してみないと解らないな。
あ、これが赤か。
意外に発色が良い赤だな。
顔料は辰砂かな、カドミウムかな。
赤は、あまり体には良くない成分なのだな。
黄色、青、黒、黄土色、あ、白は大きい膀胱に入ってるな。
お弟子さん解ってるね。
水彩ならパレットに出しっぱなしで固めて使ってもいいんだけど、油はその手が使えないのよね。
水彩はすぐ乾くから忙しいのだけれど、油絵は乾くのに三日ぐらいかかる。
のんびり描き足したり、塗りつぶしたりして作って行く絵なんだな。
「マコトさま、制服が汚れます」
「あ、そうだねダルシー」
収納袋から硫黄防護服を取り出す。
ぶっかぶかだが着心地は良いね。
専用のスモックとか売ってないのかな。
仕立屋に作って貰わないと駄目なのかもね。
大まかに色を作ってペタペタと塗っていく。
今の時点だと下塗りだね。
肌の部分は薄い緑色を塗りたくる。
これは別にガミラス人という訳ではなくて、補色の関係で下地に緑があると肌色の発色が良くなるのだ。
うん、もはや何の絵かもわからぬ。
まあ、制作途中の絵とはそういう物なのだ。
ペタペタペタペタ。
うんうん、下塗り下塗り。
デジタルじゃないから新鮮だな。
下塗りが終わった。
うん。
これ以上は乾かないと先に行けないな。
カロルさんは三日待ちだ。
部屋の隅にキャンバスを立てかけた。
「お茶をどうぞ」
「ありがとうダルシー」
作業が一段落した所でダルシーがお茶を入れてくれた。
カプカプと飲む。
「ダルシーも描いてあげよう」
「え、では脱ぎます」
「なんで脱ぐんだ」
「マコトさまの為ならヌードでも大丈夫です」
「ダルシーはメイド服が一番可愛いよ」
ポッとダルシーは赤面した。
かわいいのう。
新しいキャンバスにダルシーを素描する。
ダルシーらしいポーズは……。
重拳は違うなあ、空を跳んでる感じかな。
うんうん。
背景に黄金の暁号を入れようか。
「わあ、凄いです」
「綺麗に塗って邸宅に飾ろう」
「光栄です」
空を跳ぶダルシーという感じの下書きができあがった。
二枚目はこれだね。
ついでに下塗りも済ませよう。
ペタペタペタペタ。
キンコーンカンコーン。
おっと夢中になって描いていたら六時間目の終業の鐘がなった。
ダルシーの絵も部屋の隅に立てかける。
「油絵は意外に時間が掛かるのですね」
「そうだね、完成まで二週間ぐらいかな、時間は掛かるよ」
絵の具が乾かないと次の工程に行けないからね。
油絵はのんびりした描き方なのだ。
硫黄防護服を脱いで収納袋に入れる。
なんでも入るから収納袋は良いな。
集会室を出て施錠する。
ダルシーはいつの間にかいない。
渡り廊下を歩いて校舎の中に入り階段を上って二階のA組に入る。
カロルはもう実習室から帰ってきていた。
「絵の方は進んだ?」
「いま下塗り中だよ」
「完成が楽しみね」
次はコリンナちゃんを描こうかな。
もしくはアダベルか。
アンソニー先生がやってきて終わりのホームルーム。
起立、礼、着席。
テスト週間直前の週末は羽目を外して遊び回る生徒がいますが、中間テストが終わった黄金週間にたっぷり遊びましょう。との事。
まあ、そうだね。
学生の本分は勉強じゃ。
ホームルームが終わり終業の鐘が鳴って放課後だーっ!
「今日の予定は? マコト艇長」
「まずはアダベルを捕まえてホルボス山へ行って、トール王子とティルダ王女を飛空艇に乗せる……、あ、食事の手配とかしてないや」
「もう調理班を頼んである、キンボールは時にうかつだからな」
「わ、ありがとうジェラルド、助かった」
凄腕文官は気が利くな。
また王宮料理人さんたちが乗ってくれるようだ。
「帝国のメイドさんとかも乗るから結構いっぱいね、トール王子とティルダ王女のお付きの人はどうしようか」
「甲蟲騎士さんから誰かでるでしょうよ」
リーディア団長とガラリアさんかな?
護衛兼メイドだ。
「安全性が高い場所があるのは助かる。まあ、王城でも今回は大丈夫だろうとは思うが、念には念を入れた方がいいな」
今回は甲蟲騎士団が相手じゃ無くて、諜報組織だから、わりと楽そうだね。
「また下水から攻めてこられないかな」
「一般の諜報員が十人ぐらいなら寮の護衛騎士で対応可能だろう。あと、下水の進入口は下水道局が塞いだそうだ」
おお、コリンナパパが仕事をしたのか。
それなら大丈夫だな。
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