第715話 集会室でみんなに挨拶をしてから出かける
終わった終わった、放課後である。
んー、やっぱり開放感があるよねえ。
「放課後はアダベルの籠を見に行くの?」
「うむ、三時に帰ってきてオヤツにエクレアを食べて、夕方までみんなの勉強を見る」
「なにげに……、忙しい……」
今日はまだ大丈夫だろう。
問題は明日、明後日だな。
油断は出来ないけどね。
「飛空艇に乗る前に集会室でみんなに言ってからにしましょうよ」
「それもそうね」
またカーチス兄ちゃんにマコトが勉強をさぼっていると言われるのは業腹だし。
私は、国防に、アダベルのお世話にと色々と忙しいのじゃ。
とはいえ、みんなの勉強を見ると言った以上やらないと駄目ね。
飛空艇パイロット組は三人とも先生役だし。
あー、もう一人の先生役のコリンナちゃんはエーミールに連れ回されるのだなあ。
先生役の人間ばかり忙しい。
カロルの言う事ももっともなので先に集会室に顔を出すことにした。
パイロット組で階段を下りて集会棟へ。
そういや、カロルに絵を見られるな。
なんかちょっとこっぱずかしい。
集会室には私たちが一番乗りであった。
「あら」
カロルが下絵状態のキャンバスを発見して寄っていった。
「あらあらあら、わー」
「早速デッサンしたんだ。カロルをモデルにして本描きをする予定だよ」
「ちょっと嬉しくて恥ずかしいわね」
「ヌード描いて良い、ヌードッ!」
「それは嫌」
ちえ、カロルはわがままだなあ。
「よく……、描けている……。よく……、こんな表情をカロリーヌはする……」
「そうかしら、うふふっ」
ドアが開いてお洒落組が入ってきた。
「あら、素敵!」
「カロリーヌさまだわ、凄いですわ」
「そうだろうそうだろう」
褒められて、なんとなく大いばりである。
続けて、剣術部とエルザさん、ブリス先輩も来た。
「あ、ブリス先輩、お勉強は出来る方ですよね」
「そうですね、そこそこです」
「ブリスさまは三年生で十位から落ちた事が無い秀才ですわよ」
「まあ、勉強が苦にならない方なので」
「お洒落組のお勉強を見て下さいませんか、パイロット組がアダベルの籠を見に行くので」
「ああ、かまいませんよ領袖」
「わあ、ありがとうございます」
「助かりますわあ」
先生役がいるといいね。
カーチス兄ちゃんがキャンバスに近寄った。
「ぬわー、マコトは絵が上手いなあ」
「わあ、すごいみょん」
「これをホルボスの邸宅に飾るのか、いいな」
「本当に凄いですわね」
「みんなの絵も順番に描いていくからね」
「わあ、うれしいですわ」
「歴史に残りそうですわー」
よしよし、好評のようだね。
「これから私たちはアダベルの籠を見にいきますので、みなさんはお勉強を頑張ってください」
「あら」
「あら」
「私たちはグレーテ王女と一緒に王都ショッピングですわ」
ああ、そんな事を言っていたね。
「わたくしも付いて行きますのでご安心ください」
カーチス兄ちゃんが渋い顔をした。
「なんだ、剣術組だけかあ」
「殿は気合いが足りません。勉強なぞ、がーっとやってしまえば良いのです」
「正直、カトレアに成績で負けているのが信じられない」
「何を言いますか、殿! 私は勉強も出来る才女なのですぞっ」
実際、カトレアさんの成績が良いのが疑問だよなあ。
なにかズルい手を使っているのでは、とか思ったり思わなかったり。
というか、いつものように一直線に勉強した結果だろうねえ。
彼女は猪武者だから。
まあ、カトレアさんが勉強が出来なかったら、どうやって教えようか途方に暮れてる所だから優秀なのはありがたい。
「三時には帰ってくるから、それまで大人しく勉強してなさいよ」
「わかったよ、姉ちゃんかお前は」
あはは、姉ちゃんいるのかカーチス兄ちゃん。
「コリンナちゃんはエーミールに引っ張り回されてるんだろうなあ」
「コウナゴにとっては災難だが、射手が一人居ると戦闘に幅が出来ていいな」
まだ、適当なあだ名で呼んでいるのだな。
「私たちも二年生になる前になにか武術を考えませんといけませんわね」
「こまりましたわ、私は運動はからきしで」
「魔法はどうなの、メリッサさん」
「ほ、ほどほどですわ」
あんまり出来ないのか。
「マリリンは槍を教えてやる。ダンジョンでは嫌われる武器だが王宮なんかではメジャーだ。王宮女性武官が目指せるぞ」
「まあ、カーチスさま。お願いしますわ」
マリリンは体が大きいし筋力もあるからなあ。
メリッサさんは小さくて魔法も使えぬ。
偵察兵をやるほどすばしっこくもなさそうだ。
「まあ、何かやれる事はあるよ。治癒魔法とか」
「それが……、属性が風なので……」
あちゃあ、火と風の属性は回復魔法が無いんだよねえ。
水か土ならば良かったのに。
「風なら感知系だな、音を聞いたり方向を感知したりするんだ」
「メリッサさまは流行に敏感ですから、向いてらっしゃるかも」
「そうですかー? 私に出来ますかしら」
感知系は情報精査とか判断とかも必要なんだよねえ。
うーん。
「まあ、二年になるまで考えておきましょう」
「そ、そうですわね、がんばりますわ」
さて、パイロット組とお洒落組はお出かけである。
剣術部はブリス先輩にお勉強を見て貰うようだ。
頼りになるなあ、ブリス先輩。
ええ人だ。
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