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第714話 集会室で絵を描き始める

 帰り道にごたごたがあったが無事学園に帰り着いた。

 メイド丸の事はクリフ兄ちゃんに任せておこう。


 さて、まずは美術室でイーゼルを借りてこよう、そうしよう。

 私は校舎に入り三階の美術室を目指す。

 基本的に午後は魔術の実習だから、誰も居ないはず。


 美術室のドアを開けると誰かが絵を描いていた。


「ん? 君、授業はどうしたのかね」


 ヒゲの美術教師であった。

 自作の絵も描いてるのね。


「光魔法は教えてくれる人がいないので、基本的に自習なんですよ」

「あ、聖女候補のキンボールさんか、なるほど」

「暇なので絵を描こうとおもいまして、イーゼルをお借りしたく」

「ああ、それは良いね、暇な時間は有意義に使うべきだ。イーゼルだけかね、画材などは?」

「大神殿のマルモッタン師に画材をもらいましたので」

「おおっ、マルモッタン先生! 巨匠から絵の具を貰ったのかね、いいなあ」

「有名なんですか?」

「大神殿の壁画を頼まれるというのは大陸でもトップクラスの絵描きでないとね。なかでもマルモッタン先生は沢山の受賞歴があって偉い先生だよ」


 そうだったのか巨匠。

 自称だけじゃなかったのね。


「そういえば、君とオルブライトくんは良い絵を描いていたね。油絵の描き方は解るかね」

「だいたい知っていますよ」


 前世で何回か描いたね。

 片付けとかが面倒臭いので何枚も描かなかったけどね。


「そうかそうか、良い絵が描けたら持って来なさい、コンクールに出してみよう」

「コンテストがあるんですか」

「秋に王立絵画彫刻アカデミーのコンクールがあるね、賞金もでるし、王様からお褒めの言葉もいただけるよ」


 ふむ、それは良いなあ。

 目標を持つのはモチベーション上がるし。

 ちょっと目指してみるかな。


 先生が描いた絵を覗いてみた。

 おお、凄い色。

 深い森の道に騎士と淑女が二人だけで歩いている絵だ。

 木々が二人の周りを包み込むように生えていて、なにやら不穏な雰囲気だ。


「これは、ローランの道行きの一場面ですね」

「そう、良くわかったね」


 二人は姫と騎士なんだけど、愛し合っていて、でも身分差があって結ばれない。

 他の国に行って結ばれようと森の中を逃げて行く所だな。

 このあと、追っ手が来て騎士ローランは殺されてしまう。

 有名な歌劇のワンシーンだな。

 というか、最近の流行というか、アップルトンの演劇はたいていバットエンドで泣かす奴ばかりなんだよなあ。


「学園で油絵を描く場合は絵の具はどうするんですか?」

「準備室に絵の具のかめがあって、そこから取って調合して描くね」


 あ、やっぱり工房にかめなんだな。

 携帯性が無いので外での写生とかは出来ないんだよ。

 外で見て描けるようになったのは、チューブ絵の具が発明されてからなんだよね。


「では、イーゼルを借りていきますね」

「結構重いよ、ここで描いていけばどうかね」

「収納袋がありますので」


 私は小さめのイーゼルを収納袋に入れた。


「おお、それは便利だね。使い終わったら返してくれたまえ」

「はい、お借りします。それでは」


 私は美術室をあとにした。

 最初から美術室に行けば良かったか。

 まあ、巨匠の絵の具を貰えたからいいや。



 階段を一階まで降りて裏口から集会棟へ歩く。

 みんなが授業をしている校舎は静まりかえって不思議な雰囲気であるね。


 鍵を開けて集会室に入る。

 さっそく収納袋からイーゼルを出してキャンバスを乗せてみる。

 うんうん。

 絵の具と、木炭と、パレットと、筆と、油類。

 ああ、なんだかテレピン油の匂い。

 放課後の美術室の匂いだなあ。

 高校の漫研は美術室でやっていたから懐かしい匂いだわ。


 さて、記念すべき一枚目は何を描こうか。

 ん~~~。

 カロルのポートレートでも描こうかな。


 しゃっしゃっしゃ。


 うんうん。


 あ、うん、そうじゃない。


 しゃっしゃっしゃ。


 うんうん。


 ああ、なんだか脳が絵のモードに入るなあ。

 久しぶりの感覚。


 しゃっしゃ。


 うん、カロルカロル。

 あとで本物を見て修正しなければ。


 おっと終業の鐘がなった。

 A組に帰ってホームルームを受けよう。


 私は木炭を置いて立ち上がった。

 うん、Niceカロル。

 穏やかに笑う、私が一番好きな表情だ。


 私は集会室を出て施錠した。


 あれだな、油絵の具を使うとなると制服の上に何か着ないとだめだな。

 絵の具で汚したら落ちないし。

 そうだ、硫黄の防護服でも着るかな。

 あれは船に置いてあったっけか。


 A組についた。

 みんな実習室から帰ってきてわやわやしているな。


「あ、マコト、絵の具の事、解った?」

「大神殿にいる絵の巨匠から貰ってきたよ」

「マルモッタン画伯ね、へー、良いわね」


 カロルも知ってるのか、意外に有名人だな巨匠。


 アンソニー先生がやってきた。

 起立、礼、着席。


 中間テストが近いので解らない所があったら積極的に教科の先生に質問しましょう、との事。

 先生もこの時期大変なんだなあ。

 でも学生もお勉強で大変です。


 そして王都では暗闘で大変ですな。

 あっちもこっちも大変であるよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 順調に平和な時は泣かせるのが流行るんですよね 逆にボロボロだったり戦争していると喜劇が流行る
[良い点] マコト画伯がカロルを描いてますね。 ナイスカロルをカロルが見た時に どんな反応をするか楽しみです。 しかしマルモッタン師。本当に巨匠だったんですね。
[一言] つなぎの防護服ぶかぶかだから、エプロンと袖カバーか、カマラさんに割烹着?スモッグ?ぽいのないか聞いてみるとか。 穏やかな時間ですね。
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