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第713話 画材をゲットした帰り道、クリフ兄ちゃんがピンチだった

 ほどなくしてお弟子さんが大荷物を抱えて帰って来た。


「工房は近所なんですか?」

「すぐそこなんだ、暇な時に遊びに来てくださいよ」


 へえ、絵の具が無くなったらすぐ取りに行けるね。


「これが絵の具です、二十色あります」


 なんだかニンニクみたいな代物がごろごろと箱の中にある。

 なんだこれは。


「豚の膀胱に詰めてあるんすよ、使う時はピンを抜いて絞り出してください」


 あー、錫とか鉛のチューブの発明はまだなのね。


「私がいつも使っている色だ、聖女さまのお気に召すといいのだが」

「とりあえず描いて見て様子をみるよ」

「欲しい色があったら言ってください、調合しますよ」


 筆は細い物から太い物まで六本。

 テレピン油と筆洗いの油の壺、木製のパレットなどがあった。


「へー、これを使って絵を描くのか」

「アダベルも、子供達も描いてあげるよ」

「ほんとうっ!」

「「「わーいわーい」」」


 お弟子さんがキャンバスを三枚くれた。


「キャンバスも必要だとおもいやして、張ってあったのを持って来やした」

「おお、忘れていた、良く気がついた、偉いぞっ」

「へへへ、キャンバスが無いと描けませんからね」


 良く気がつくお弟子さんだなあ。


「ありがとう、助かったわ親方」

「描けたら是非見せてくださいよ、なんとも楽しみだ」

「聖女さまの絵を見たいでやす」


 道具一式を収納袋に入れた。

 これでホルボス山でもスケッチができるぜ。

 イーゼルが欲しいが、学校にあった気がする。

 美術室にあるものを借りよう。


「それじゃ、学園に帰ります。籠は放課後に見に行こうね」

「ん、籠も楽しみ」

「また、アギヨンの街にいくんだ、お爺ちゃん領主さんはいるかな」

「気球にも乗りたいー」

「じゃあ、遊んで待っててね」

「わかった」

「まってるよー、マコねえ」

「たのしみたのしみ」


 マルモッタン親方たちに手をふって、子供達を連れて大食堂を後にする。


「あ、リンダさん、何か非常事態の時は飛空艇から発光弾を撃つから、そうしたら完全武装で集合してね」

「解りました、ジーン皇国との荒事はお任せください」

「たよりにしてますよ」


 リンダさんは、荒事だけは本当に頼りになるからなあ。


 さてさて、学園に帰ろう。

 まだ五時限目が終わるぐらいかな。

 放課後までに木炭で下絵ぐらはいけるかな。


 ポコポコとうららかな春の王都大通りを歩く。

 ひよこ堂が見えてきた。


「おうっ、誰に断ってメイド丸の商売してんだっ、舐めてんのかパン屋っ!!」


 あら?

 クリフ兄ちゃんがガラの悪い男に絡まれてる。


「えー、うちは菓子の鑑札もありますし、ちゃんとした商売ですよ」

「困りますねえ、メイド丸は我々メイド丸ツンフトの独占事業です、売りたいなら会費を払って貰わないとねえ」

「はあ? そんな話は聞いたことが無いぞ、なんだメイド丸ツンフトって?」


 あの派手でゲスな格好は見た事があるな、えーと、なんて言ったか、なんとか子爵。


「メイド丸の商売はねーっ、女中通りの専売なんだよーっ、なんでパン屋のくせにしらないかなあっ」

「そうだよねー、非常識ったらないねーっ」


 ああ、くそ馬鹿メイドも一緒だ。

 ダルシーが姿を現した。


「チャールズとミッキーとクソメイド達をぶちのめしていいですか?」


 ああ、そうそう、そんな名前だった。


「ダルシー、ゴー!!」


 猛犬のようにダルシーが暴れこんだ。


「うわ、なんだっ!!」

「ぎゃ、聖女のメイドっ!!」


 強い、圧倒的に強い。

 ダルシーはチャールズを地に這わせ、ミッキーをアッパーで上に打ち上げ、クソメイド二人を蹴り倒した。


「ダ、ダルシーさん、あ、マコト」


 クリフ兄ちゃんはキョドっておった。

 まあ、普通の市民だからなあ。


 私は腕組みをしてチャールズどもの前に立ち塞がった。


「おまえら、ここが私の実家と知って難癖をつけにきたのか」

「「「「ひっ、ひーっ!!」」」


 みな土下座を始めた。


「せ、聖女さまのご実家とはつゆしらず」

「お許しください~~!!」

「メイド丸の専売ってなんだ?」

「そ、そ、それはですね、メイド丸は、お、お菓子ではないので、お、お菓子の鑑札がいりませんので、その、我々三社がツンフトを作ってですね、販売管理をしていますので、その、パン屋に無断で参入されるとですね、商売の邪魔なのでございます、どうか、どうか、ご理解ねがえませんか、どうかどうか」

「ダルシー、こいつらのメイド丸、知ってる?」

「なんて製品?」

「チャールズ子爵本舗の真メイド丸で、です」

「真メイド丸……、不味い奴です」

「不味いのか」

「安いけど不味いです」

「そ、そんな酷い」


 なんだか、鑑札の要らない隙間商売をしていたようだ。

 王都では、何を売るにも王府の許可がいるのだよ。

 ひよこ堂ではパンとお菓子の鑑札を取っている。


 これは都市に同じ商売のお店が乱立して品物の品質が下がらないようにする慣習なんだよね。

 子爵なのにちんけな商売をしてんなあ。


「そばぼうろはメイド丸にも使えるが、基本的にお菓子だ、よっておまえらの言い分は筋が通らない言いがかりだ。文句があるならお菓子ツンフトに訴えて判断してもらうぞ、いいのか」

「そ、それは、その、こ、困ります」

「じゃあ、帰れ、これ以上、文句を言うなら私が相手だぞ」

「わ、解りました解りました、お菓子ツンフトにだけはどうかご勘弁ください」


 ひーんひーんと泣きながらチャールズどもは逃げ出していった。


「いやあ、マコト、助かったよ。ダルシーさんもありがとう、凄く強いんだね」

「い、いえ、何でも無いです。お兄さまがご無事でなによりです」


 ダルシーは赤面して消えた。

 クリフ兄ちゃんもなにげにイケメンだしなあ。


「しかし、安い商売してんだなあ」

「メイド丸はお菓子とも携帯食料ともつかないから、隙間産業なんだろうな。ちょっとあいつらじゃ無い別の店にも行って話を聞いてくるよ」

「そうだね、ちゃんとしたお店がどういう反応するか聞いてくればいいね。美味しい所はお菓子の店で作ってると思うのだけどねえ」

「普通そうだよなあ」


 クリフ兄ちゃんは首をひねった。

 まあ、面倒ごとになるならお菓子ツンフトに駆け込めばいいね。

 同業者組合ってのはそのためにあるんだし。

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― 新着の感想 ―
[一言] メイド丸って専門のメイドさんが管理してるもんだと思ってましたよ。メイド組合が品質管理してるとか。意外と曖昧なんだね、そこんとこ。 なんか現実の正露丸の混沌っぷりを思い出してニヤニヤしてしま…
[良い点] キャンバスもゲット!!٩( 'ω' )و [一言] 爵位持ちが難癖つけてきたら庶民辛い。 持つべきは爵位と権力と知識を持つ味方。 鑑札なしで、メイド丸(お菓子)を製造販売してる子爵側がモ…
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