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第711話 画材を買いたいがどこで売っているのだろう

 五時限目の予鈴が鳴ってみんなは校舎に戻っていった。

 私は一人となった。


 さて、どうしようか。

 画材が欲しいのだがなにしろ中世である、画材屋さんなんかは無いのだ。

 前に探したら文房具屋(超高級)はあったが画材屋は無かった。


 大神殿に行って聞いてみるか。

 中世で絵を描く所は王宮か教会だからね。

 あとは貴族のお抱え絵師とかだな。

 宮廷画家の人達は気難しそうだから、教会画家の方をあたろう。


 歩いて校門を出て大神殿に向かう。

 今日も良い天気だなあ。

 お散歩日和だね。


 あ、美術の先生に聞くという手があったな。

 美術部があるのだから画材もあるだろうね。

 大神殿で見つからなかったら学園に戻るか。


「おおいマコト、どうした」

「お、クリフ兄ちゃん、サボりよサボり」

「駄目じゃ無いかちゃんとしないと」

「午後は魔法の実習なんだけど、光魔法を教えてくれる先生が居ないんだよ」

「ああ、それでか。店を手伝っていくか?」

「今、暇な時間じゃない」

「それもそうだ」


 聖女が売り子をするパン屋も何だなあ。


「そういや、クララのそばパンを食べた」

「どうだった?」

「可も無く不可も無くだね」

「ソバ粉だけじゃあなあ、弱いよな」

「そのうちソバボウロを食べに来るとか言ってたよ」

「お、それは楽しみ、そばパンも食べさせて貰おう」


 店先から中を覗くと、ソバボウロ新発売と書いた木札が飾ってあった。


「販売始めたの?」

「ああ、今日から、買っていくか?」

「買う、ダルシー」


 ダルシーが現れた。


「はい、マコトさま」

「ソバボウロを買ってあげますから食べなさい」

「はい、ありがとうございます」


 良い笑顔でダルシーは答えた。


「私の分とダルシーの分を下さい」

「はいよ」


 お値段は亜麻布袋にいっぱいで二百ドランク、まあまあね。

 ダルシーは押し頂くように受け取った。


「売れ行きは」

「メイドさんがちょこちょこ買っていくな。あと貴族のお嬢さんもお茶うけに買っていく感じだ、まあまあかな」


 さっそく食べる、カリカリ。

 うん、風味があって美味しい。


「そいじゃまたねー」

「おう、またなー」


 ダルシーがまた隠れてしまった。

 私は一人とぼとぼと大神殿へ向かうのであった。

 ソバボウロを食べながら。

 歩き食い聖女である。



 大神殿に着いた。

 アンドレとルイゾンが掃き掃除をしていた。


「あ、聖女さま、こんちゃーす」

「またサボりですかい?」

「まあねえ、あんたたちも真面目にやってるみたいね、ご褒美にソバボウロをあたえよう」

「「はは~~っ」」


 ノリが良いね寺男コンビは。

 亜麻布袋に手を突っ込んで二人でもっしゃもっしゃ食べだした。


「あ、意外にいけますね」

「これ、メイドさんが食べる奴ですよね」

「ひよこ堂の新商品だよ」

「なんか後引くクッキーですな」

「美味い美味い」


 大階段の上からリンダさんがダッシュでやってきた。


「マコトさま!! 今日はなんの御用ですか!!」

「今日はちょっと問い合わせに、リンダさんも食べなさい」

「はっ、頂きますっ」


 リンダさんもモシャモシャ食べ始めた。


「これがそば粉で作ったメイド丸ですか。お兄さまがそば粉を取りに来ましたね」

「もうひよこ堂で売ってるよ」

「携帯食に良いですね、聖堂騎士団公式糧食としましょう」

「そんな大げさな」

「それで今日は何の御用でしょうか」

「絵を描こうと思ったのだけれど、絵の具とかキャンバスとかをどこで調達すれば良いか解らなくて、教会ならお抱え絵師さんがいるだろうから教えて貰おうと思ったのよ」

「絵、ですか、私も描いてもらえますか」

「あ、うん、いいよ」

「それはとても嬉しいですっ」

「俺らも俺らも」

「おまえらは駄目だっ」


 教会の人も描こうかな。


「大神殿の展示室に飾りましょう!」

「ま、まずはホルボス山の邸宅に飾る奴を描かないとね、教会のはその後で」

「いつまでも待っておりますっ」

「待ってます」

「待ちます」

「おまえらは駄目だっ」


 なかなか話が進まないぞ。


「お抱えの絵師がちょうど大食堂の壁画を描き直しているので聞きに行きましょう」

「あら、また描き直してるの?」

「一年に一回、あちこちを描き直しているのです。今年の大食堂は女神さまの天地創造の絵ですよ」


 これまでの大食堂の絵は天使様と勇者の交流の画題だったなあ。

 あの絵は結構好きだったんだけど、消しちゃうのか。



 教会というのは信者様の寄進があるので余ったお金で芸術家に仕事を回しているんだね。

 文化というのはそういう感じに回っていくのである。

 美術も、音楽も、わりと教会産の物が多いんだよ。


「それでは行きましょう」


 リンダさんの先導で大階段を上っていく。

 大神殿の壮麗な建築も、すばらしい彫刻も、人々の信仰の御浄財で作られているんだな。

 そう思うと信仰の力はすごいよね。


「マコトさまは絵の才能がありますから、素晴らしい絵ができそうですね」

「そんなでもないよ、下手の横好きだから」


 前世の漫画修行が生きてるとは言えないね。

 しかし、教会の絵はテンペラ画だよね、ちょっと相談に来るところが違ったかな。

 まあ、見本を作るのに油絵とか描くでしょう。

 教会の絵描きさんと知り合うのも楽しみだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現代漫画習得者が描く異世界絵画・・・一体どんな絵になるのかなー? カロルへの愛情をこめたらマリ見てのOPみたいな絵になったりして。
[一言] この世界にはメディチ家みたいな芸術家にパトロンになりうる資産家は生まれてないのかな まあメディチ家もトスカーナ大公になったから結局は王なんだけど
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