表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

703/1527

第703話 神殿で孤児達を下ろし学園に帰投するのだ

 ついっと飛んで王都上空へ。


「飛空艇って本当に早いわね、常識が変わってしまうわ」

「昔は沢山飛んでたのにね」

「新しく……、エンジンを作らねば……」


 魔導エンジンが新造できれば新しい時代の始まりだね。

 カイレ親方みたいに空にロマンを感じる人がいるのだから、きっと何十年後かには出来るだろう。

 前世みたいに航空網が発達するのかな?


 カロルは聖騎士の練兵場へ、すいっと飛空艇を降ろした。

 滑らかで上手いなあ。


「明日はホルボス山に行くのか?」

「明日かあ、週末に悪者が来る恐れがあるから、トール王子とティルダ王女を飛空艇に避難させるのよ、アダベルも一緒に乗ってあげてくれる?」

「乗るっ、そうか悪漢が来るのか、またザマスかな?」

「ザマスさんはどうだろうねえ」


 来るような気もしないではないが、意外に目立つからなあの人。

 ごっつい筋肉質の美人でメイド、口調がエセ上流という、濃い味わいだからねえ。


「アダベルは学園まで乗って行く?」

「いや、夕飯の時間まで孤児院で遊ぶ!」

「そうなんだ、気を付けて帰りなさいよ、お菓子に釣られて誰かに付いていかないでね」

「わ、わかってるよう、もう大丈夫だ」


 どうだかねえ。


 アダベルと孤児達を外まで送って行く。

 孤児院の保母の女官さんがやってきて子供達とアダベルを引き取ってくれた。


「またねーマコねえっ」

「明日もヘルムトお爺さんの街にいくーっ」

「籠楽しみ」

「籠が出来たら毎日ホルボス山に行けるな」

「アダちゃん大変だよ」

「良いんだ、友達の為ならなんでもないっ」

「無理しないでねー」


 まったく、子供達とアダベルの話を聞いてると胸の中がほっこりするね。

 ちゃんと籠が出来るといいなあ。



 私はタラップを上がってメイン操縦室に戻った。


「明日は……、僕が……、うごかす……」

「解った、明後日は私だね」

「みんな上手くなってきたわね」

「操縦は……、たのしい……」


 私も艇長として負けてられんっ。

 飛行時間を増やしてベテランパイロットにならなくては。


 飛空艇はふわりと浮き上がり学園を目指す。


 ……、あ。

 聖女の湯の事を忘れていた、今日は水曜日だった。

 夕方近くで、いつもより遅くなるなあ。

 お湯待ちの客がいるかもしれない。


「聖女の湯を忘れていた」

「あっ」


 カロルも忘れていたらしい。


「帰ってすぐ浴場に行きましょう。お湯待ちの人がいそうだわ」

「集会室の金庫に何本か入れておいても良いかもね」

「そうね、私たちがいなかったらコリンナが出してくれるだろうし」


 エーミール騒動ですっかり忘れていたよ。



 カロルは急いで、でも丁寧に格納庫に蒼穹の覇者号を入れた。


「急いで行こう」

「そうね」


 私たちはタラップを駆け下りた。


「では……、また明日……」

「またね、エルマー」

「お疲れ様」

「うん……」


 エルマーは待合室に入っていった。

 私たちは地下通路を小走りだ。

 カンカンと足音が響くね。


 急いで女子寮への階段を駆け上がる。

 大浴場の前には人混みが出来ておる。

 ひい。


「ごめんごめん、遅れてしまった」

「ああ、聖女さま、今日は無いのかと思いましたよ」

「水曜日は聖女の湯の日なので楽しみにしてましたの」


 聖女の湯解放戦線のエイミーさんが列をまとめていてくれたようだ。

 ごめんごめん。


「じゃあ、湯の元入れ立てのお風呂にみんなで入りましょう」

「あまり効き目は強く無いですが、入れ立ての湯も味わい深いですよ。強い効き目が欲しい人は夜にしてくださいー」


 お、エイミーさんのデマを真に受けたご令嬢が何人か帰っていったぞ。

 ごめんねえ。


 脱衣所に入り、ちゃっちゃと服を脱いだ。

 今日はカロルも一緒に入ってくれるようだね。

 いっしっし。


「もう、エロ笑いはやめてね」

「してないよう」


 浴室に入ると、お洒落組の二人とエルザさんが先に入っていた。


「あ、来ましたわ」

「今日は遅かったですわね」

「エーミールの襲来で、すっかり忘れていたよ」


 ダルシーから聖女の湯の元を受け取り、トプトプと浴槽に入れる。

 ああ、良い匂いがするなあ。


「ああ、気持ちがいいですわ」

「今日は遅いから、夜にまた入ろうかとマリリンと話していましたの」


 かけ湯をして浴槽へ入る。

 ああ、良い湯だね。


「ホルボス山の入浴剤をここで試してみましょうか」

「温泉由来の入浴剤ですか、目先が変わっていいですね」


 エイミーさんも乗り気だな。


「良い硫黄泉よ、体にも良さそう」

「それは楽しみです」


 エイミーさんは、うふふと笑った。


「温泉由来だから、市販しますよ。気に入ったら購入してくださいね」

「それは良いですね。聖女さまの領地の温泉ですか、霊験あらたかそうです」


 まあ、普通の温泉成分で魔術的な物は何も無いのだが、健康にはいいであろう。


「魔法学園から入浴剤を流行らせると売り上げが良さそうね」


 カロルが経営者の顔でつぶやいた。

 友鳴り草を使った飛空艇アメニティを再現できれば凄く売れそうだなあ。

 今度、旬の時に摘みに行こう。


 聖女ブランドのお風呂用品で一儲けだ。

 うんうん。



よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。

また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 大航空時代がやってくるのでしょうかね? 空への憧れというのは人間にはついて回るものですからね。 でも、魔法で空を飛べないんですかね? 風魔法でばびゅーんって。 あ、制御できないと自由落下で…
[一言] マコトちゃん、濃ゆい青春を送ってる…。 【土】ザイツ王国遺児救出作戦 〜#630 【日】地獄谷視察と呪いの森浄化、ホルボス村ランチミーティング、ホルボス村臨時診療所開設、大神殿から諜報メイ…
[一言] 現実だと硫黄泉の湯の花は風呂釜にもダメージ与えるけどこの世界はどうだろう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ