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第69話 派閥の集会所を借りよう

 ハーブティをすする。

 今日はローズマリーだな、美味い。


「そういえば、派閥の人が増えたから、集まる場所が欲しいのだけど、こういうのどうするのかな」

「そうね、サロンを借りるとか聞いた事があるわよ」

「サロン?」

「ポッティンジャー派閥だと、レストランに大きいサロンがあるらしい。ケーキやお茶がレストランから調達できるとか聞いたな」


 ほほうそれは優雅な。

 だけど、お高いんでしょう?


「どれくらいかかるかなあ」

「いや、マコトでは払えない、というかそんな華美なのは無駄金だ」


 コリンナちゃんは贅沢に厳しい。


「集まるだけなら集会室が借りられるらしいわよ」

「ふむ、まだお店が開くには早いから、学園の事務局に行って、聞いて見るかな」

「そうしよう、予算は二万ぐらいまでか?」


 月二万はきついなあ。


 私たちは立ち上がり、部屋を出た。

 諜報メイドどもはいつの間にか姿を消していた。

 必要な時にだけ出てくるのは凄いよなあ。


 階段をゆっくり降りて一階へ。

 三人でぽかぽか陽気の学内の道を行く。

 ああ、今日も良い天気だねえ。

 絶好のお買い物びよりだ。


 事務局は学園の一階、職員室の向こうにある。

 日曜だというのに、職員さんがなんか仕事をしていらっしゃるぜ。


「はい、何かご用でしょうか」


 ポニーテールの快活な感じの職員さんがカウンター越しに話しかけてきてくれた。


「仲間が集まる集会場を借りたいのですが、空いてる場所はありますか」

「あー、そうですねえ、ちょっとまってください」


 職員さんはロッカーに行き、バインダーを取り出した。


「ええと、あ、一カ所だけ空いてますよ」

「一カ所しか空いてないんですか?」

「はい、春なものですから、みなさん集まって集会するための場所は塞がってしまうんですよね」

「場所はどこですか、一ヶ月の賃料は?」

「体育館の横の集会棟ですね。一ヶ月五千ドランクとなります。広さはそうですね、この事務局の四分の一程度かな」


 ふむ、だいたい十畳ぐらいかな。

 まあ、とりあえず押さえておいて、人が増えたら広いところに移ろうかな。


「では、そこを貸してください」


 私はお財布から大銀貨を五枚出した。


「ちょっと、マコト、見に行かなくていいの?」

「そうだぞ、どんな所か見ないで大丈夫か」

「一カ所しか無いから選択の余地がないよ。一応押さえておくんだ」


 事務員さんから鍵をもらい、体育館横の集会棟に向かう。

 集会棟は文字通り、集会所が集まっている建物だ。

 派閥とか、仲良しクラブの集会とかに使われるぞ。


 空いているという部屋は155室、イチゴーゴーだ、イチゴ食べたい。

 集会棟の西の端だ。


「ここか」

「ここみたいね」

「ドアが汚い」


 鍵を差し込み回す。

 ガチャリ。

 ドアを開けるとほこり臭い。

 中を見回す。


「物置だわ」

「物置だね」

「中の物は処分していいのかな」


 155室の中は雑多な物で満ちあふれていた。

 壊れた椅子、タンス、チェスト、寝具、ハードル、旗。


「ダルシー、掃除しなさい」

「……」

「マコト、メイドさんに無茶ぶりしてはいかん」

「アンヌ、手伝ってあげなさい」

「……」


 メイドたちが出てこない。


「カリーナさんとか、プロのハウスメイドを呼んで来るべきか」


 しかし、なんでこんなにガラクタ満載かな。


「とりあえず職員さんに捨てても良いか聞いてから片付け掃除だね」

「広さは、まあまああるね。寮の部屋ぐらいだな」


 聖女派閥の集会場はすぐには使えないようだ。


「必要な物は、テーブルと椅子とソファかな。毛布も持ってきて、午後は昼寝してようかな」

「怠惰な」

「午後の魔術の授業が無くて、ずっとエルマー親子に実験されてる私の気持ちが貴様にわかってたまるかっ」

「光魔法は大変ね」


 たいへんなんだよーカロルー。


 家具調度は、カーチスやらエルマーやらの上級貴族のタウンハウスで使い古した物をもらってくるかな。

 

 学校内に居場所を作るのも大変だなあ。


 おや、お隣ががやがや騒がしいな。


「ちょっと隣に挨拶してくるわ」

「ついてく」

「付いていくわ」

「なぜっ」

「正直不安」

「心配だわ」


 まったく、信用が無いなあ。


 隣のドアには『ペンティア同好会』と書いてあった。


「ペンティアってなに?」

「ボードゲームかな?」


 オタクさんたちかー。

 とりあえずノックしてみる。


「はあい、どなたですか」


 ドアを開けて童顔の男子生徒が出てきた。


「隣で集会する者なんですが、ご挨拶にきました」

「あ、そうなの、隣は物置じゃなかったんだ」

「いろいろうるさくするかもしれないですが、よろしくおねがいします」

「これはご丁寧に、こちらこそ宜しくおねがいしますよ。僕は会長のカーターです」

「ありがとうございます。私はマコト・キンボールです。聖女派閥の領袖です」


 バタン。


 は?

 ドアをいきなり閉められたぞっ。

 なんぞっ?


「かかか、帰ってください、聖女さまは間に合ってます」

「聖女の押し売りじゃねえよっ!!」


 ガンガン。


「開けろーっ!!」

「か、帰って~」

「やめてさしあげろ、マコト」

「怖がってるじゃないの、やめようよ」


 ぬーー、腹立たしい。

 覚えてろ、ペンティア同好会会長カーターめ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人のお世話をする事に喜びを感じるメイドさんはそんなにおかしいじゃないの気がしますw 逆に、戦闘や潜伏が上手いのに掃除が出来ないメイドさんはおかしいかもw マコトさんにそこまで怯えるのか!…
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