第697話 教会建築部の親方は猫獣人だ、ヨシ!
温泉から上がってダイニングでお茶を飲んでいると、エーミールとヴィクターが帰って来た。
なんだかほかほかになってるな。
「良い温泉だなあ、冬に来るともっとよさそうだ」
「ああ、良いわね、アップルトンも冬は寒いから。二人ともお茶のむ?」
「もらおうか」
「いただく」
ジェシーさんが二人の前にお茶とソバクッキーを出した。
「ここの所、部屋で引きこもっていたから外に出るとウキウキするな。目が見えるって良いもんだ」
「俺はここを視覚では見ていたが、実際に来て気づく事も多かった」
ヴィクターの視点は猫だから低いしね。
「とりあえず、村はこんな物だな、あとは相手の出方しだいだ」
「今回は王都が主戦場になりそうだな」
王都、しかも学園周辺が戦場になりそうだなあ。
無関係な人が巻き添えを喰わなければいいんだけど。
お茶を飲み終わったので玄関ホールから地下礼拝堂に抜け、ホルボス基地へと向かった。
基地に着くと学者さんたちがわくわくした顔で私たちを歓迎した。
そんなにカタパルトが見たいのか。
サーヴィス先生も、そろそろ家に戻った方が……。
四人で蒼穹の覇者号に乗り込む。
今日は珍しくダルシーが隠れないね。
ポッティンジャー公爵派の二人を警戒している模様である。
「学者さんっていかれてるよな」
「あんなものだよ、世界の真理を探究するとああなるのよ」
エーミールは肩をすくめた。
さて、学者さんのリクエストにこたえて魔導カタパルトで飛び出すかな。
「エイダさん、魔導カタパルトを使います」
【了解しました】
ディスプレイ画面に数字が浮かぶ。
前方の扉が左右に開いて空が見え、遠く王都も見える。
「発進!」
【蒼穹の覇者号、射出シーケンス開始します】
ファンファンと警報が鳴り、蒼穹の覇者号は魔導システムで空に打ち出された。
またも学者さんたちが飛び上がって喜んでいる。
幸せそうでなによりです。
エーミールのリクエストで村の上空をゆっくりと旋回する。
村人が見上げて笑顔で手を振っているな。
「なるほど、エイダ、画像は大きくなるのか?」
【はい、エーミールさま】
「おお、解りやすいな。地勢が一目瞭然だ。見たところ杣道はなさそうだな」
「やはり、村に入る道は一本だな」
軍人というのは地理学者みたいなもんだな。
やっぱり高台とか川とかがあると軍の進行が阻害されるからなんだろうなあ。
こっちの世界でもミリオタは業が深そうだな。
お、村に入る道あたりでもう工事をしているぞ、あの制服は教会建築部の人達だな。
「着陸して工事の人に挨拶してくるよ」
「教会の建築部か、凄腕と評判だな」
「ここの所、新しい教会が建たなかったので困ってたらしい。良い公共事業だね」
飛空艇を操って路肩に止めた。
ここら辺は街道が広くて良いね。
タラップを下りていくと、工事の人が笑顔で頭を下げてきた。
「聖女さまにゃ、こんにちは~~」
「こんにちは、アシル親方、お疲れ様です」
「なんのなんの聖女さまの領地に続く道にゃ、張り切って作るにゃよ」
アシル親方は猫の獣人だ。
なんだか前世の影響で、現場で適当な事をしてそうに感じてしまうのだが、アシル親方は一流だ、適当な作業はしない、たぶん。
アシル組は獣人の人が多い。
獣人さんたちは南方の国の出身で一時期は奴隷にされてこっちの大陸に連れてこられたんだけど、今は解放されてちゃんとした自由市民だ。
「とりあえず、ちゃっちゃと砂利を敷いて村まで整備するにゃよ。その後、教会を新設するにゃ」
「ありがとう、がんばってね」
「聖女さまのためなら百人力にゃ」
ホルボス村に向かう道に道しるべが立っていた。
『この先ホルボス村、三千クレイド。ホルボスダンジョン、ランクC』
と、あった。
「これは冒険者に偽装した奴が来るな」
「こうしましょ」
私は羊皮紙に『ホルボスダンジョンは消滅しました』と書いて道しるべに付けた。
「あとでちゃんと彫った奴を作っておいとくにゃんよ」
「そうしてくれる、ありがとうアシル親方」
「なんのなんのにゃ」
「親方、今週末に冒険者のふりをして村に入ろうとする悪漢がいるかもしれないから、見つけたら追い返してくれないか」
「悪漢かにゃ、それは見過ごせないにゃ、叩き返すにゃよ」
「あんまり危ない事はしなくて良いわよ、騒いでくれたら村の騎士団が駆けつけると思うから」
「聖騎士団がもう入ってるにゃか?」
「いえ、領地の騎士団よ」
べらぼうに強い、聖女の騎士団だな。
借り物だけど。
「じゃあ、がんばってね、親方」
「がんばるにゃー」
私たちは飛空艇にのりこんだ。
「教会では獣人も使っているのか」
「意外に器用だし、気の良い人達よ」
「現場作業員なのに、なんだか可愛い感じだな」
そう、姿が可愛いのでアシル親方の組は女性に人気であるよ。
差し入れとか沢山貰えるらしい。
アシル親方に手をふって、私たちは船に乗り込んだ。
さあ、学園に戻ろう。
そして、アダベルを連れてゴンドラのテストに行こう。
後で。
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