第695話 村の子供はサイズの遺児たちの運命にいきどおる
村をうろうろと歩く。
道行く人は、みな私に笑顔で挨拶してくれる。
うーむ、御領主気分だね。
「なんとも田舎だな。王都に近いからここが戦場になった事は無いのだろう。平和ボケしている」
「普通の田舎はそういうもんだよ」
「ホルボス山の山頂に城を築くべきだ。あそこはいい」
「やだよ、そんな不便な城」
「不便だから敵兵も攻めあぐねるんだ」
まったくエーミールは軍事脳だなあ。
家にも女っ気がなかったし、モテないんだろうなあ。
良い所のボンボンなのになあ。
「村への動線はどうだ? エーミール」
「街道から道は一本、これは良いな、途中に検問所を仮設してもいい、村に来るよそ者を減らせばテロの可能性は減る」
ふむ、巡礼者が来る前でよかったな。
ホルボス教会が新設されたら巡礼の信者が沢山来そうだし。
お、村の三馬鹿のセルジュが居た。
と、思ったら逃げた。
知らない男性と一緒だから怖くなったのかな。
と、思ったら三人組になってやってきた。
「聖女さま、今日はアダベル親分は来てないの?」
「今日は別の用事だからね。今、トール王子とティルダ王女は?」
私はリーディア団長に聞いた。
「お昼寝していますよ。午前中はこの子たちと釣りに行ったので疲れたみたいです」
「おー、何か釣れた」
「フナを五匹釣ったよ、トールが二匹釣ったぜ、あいつは釣りの才能があるよ」
「それは良いねえ」
「晩ご飯に食べるんだってジェシーさんに頼んでましたよ」
フナ料理か、美味しいかな?
でも自分で釣った魚は美味しいだろうね。
うんうん。
「その人、だれー?」
ラウルくんがエーミールとヴィクターを指さした。
「軍人の人だよ。トール王子とティルダ王女を狙って悪い奴が来るかもだから対策をしてるんだ」
「それは大変だっ!」
「なんだよ、あの二人はお父さんもお母さんも殺されたのに、まだ悪い事をしにくるのかよっ!!」
オーレルが怒って言った。
「大丈夫、オーレル、私たちが必ず守るから心配しないでね」
「頼むよ、あいつら良い奴なんだ」
「そうだよ、友達もいなくて、俺たちと遊ぶのがすっごい楽しそうでさあ、王族だからってそんなのは酷いよっ!」
お前たちが良い奴らだな。
エーミールはしかめっ面をした。
「やばいな」
「なにがよ」
「村の子供と遊び回ってるのは誘拐の格好の目標になる」
「だからって邸宅に閉じ込めておく訳にはいかないでしょ」
「うーん、せめて今週末は邸宅に閉じ込めておくべきだな」
「解りました、みんなも今週末は危ないから遊びに行くのは我慢してね」
「はーい、リーディア団長」
「わかりました」
「トールとティルダがさらわれたら困るもんな」
村の子供も意外と聞き分けが良いな。
「馬車溜まりに検問所をつけろ、山奥の村だ、来るのも出るのも馬車か馬で動くしかないはずだ」
「あ、それはいいなヴィクター、冴えてるな」
そうか、さらった子供を徒歩で移動させる訳がないもんな。
馬車と馬を封じれば誘拐の可能性は減るのか。
「良いですね、それは甲蟲騎士団でやります」
「甲蟲甲胄で検問しなさいよ、悪漢はびびるわよ」
「確かに威圧的だからな」
うむ、テロをしている人達にテロ対策をしてもらうと能率が良いな。
視点が違うしな。
自分たちがテロをするときに嫌な事をすれば良いので簡単だ。
「短中距離で甲蟲騎士にかなう敵はそうそう用意できまい、ジーン側も相当な豪傑を手配しないと無理だな」
「『城塞』の武闘派が乗り込んで来そうだが」
「なるべく王都内で潰す、豪傑は目立つからな、ここに向かわれたらリンダ師でも飛空艇で空輸すればいい」
「あー、飛空艇を使えるのはでかいな。あれ自体に武装は?」
「秘密」
「船首に魔導機関砲、あとマジックミサイルが八門、あと何か凄い砲があるらしい」
やろー、ヴィクターはクロとして何回も乗り込んでるから武装を掴んでるな。
エーミールはしょっぱい顔をした。
「なんだよそれ、今時、武装飛空艇なんて聞いた事がないぞ」
「いいだろー」
「豪傑たちは空から攻撃しろ、それが楽だ」
「最悪の場合はそうするよ」
エーミールは思案顔になった。
「週末はターゲットを飛空艇に乗せておけばどうだ? 一番安全だ」
「我々がディーマー皇子を狙っていた時はそうしてましたね、あれには困りました」
「それが安全かなあ、とりあえず帰国まではみんなを乗せて格納庫か」
確実といえば、それが一番確実よね。
「ターゲットが飛空艇で守られていれば、我々が地上で心置きなく迎撃出来る」
「解った、その方向で調整するよ」
トール王子とティルダ王女も飛空艇好きだから大丈夫だろう。
中でアダベルに接待させれば良いしな。
ディーマー皇子もグレーテ王女も問題無さそうだ。
「とりあえず、帰りに空から村を一周してくれ、地勢を見たい」
「わかった、色々ありがとうね、エーミール」
「二千三百万……、二千二百万ドランクの借りがあるからな」
「百万返さなくていい?」
「返せ」
ちっ。
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