第688話 水曜日は滞りなく進んでいく
眼を覚ました。
なんだか中年のハゲオヤジになった夢を見たぞ。
国家的陰謀を組み立てていて、聖女の私に困っていたなあ。
なんだろ。
あ、詳しいところが揮発した。
変な夢だったな。
ハシゴを下りるとコリンナちゃんがベットから顔をだした。
「おはよう、マコト」
「おはよう、コリンナちゃん」
さてさて、朝の洗顔やら用足しやらを済ませていく。
ダルシーがケトルを持って来てお茶を入れてくれる。
いつもの朝の流れだね。
「色々終わった感があって静かだね」
「嵐の前の静けさかもしれん」
「不吉な」
ああ、お茶が美味しい、朝のお茶は目が覚めるね。
さて、今日はホルボス山行きの航行も無いし、のんびり学園生活を楽しもう。
主に勉強会を優先だ。
205号室を出て施錠して階段を下りる。
いつものエレベーターホールにいつもの派閥のみんながいる。
というか、グレーテ王女もいるぞ。
「おはよう、グレーテ王女」
「おはようございます、聖女さま。しばらく派閥の皆さんとご一緒させていただきたいのですが、かまいませんか?」
「ええ、いいわよ」
なんで派閥の輪に入ってくるのだろうか、とか思ったけど、学校生活が物珍しいのだろうね。
みんなで食堂に入ってポリッジを注文する。
ジュリエットさんがグレーテ王女のお世話をしてくれるから助かるね。
テーブルに座って、皆を待ってからご挨拶。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
今日は王女も唱和してくれたね。
なんだか満足げに笑っておられる。
「あら、ポリッジみたいな物なのに、おいしゅうございますわね」
「熟練の技ってすごいですよね」
「私も、最近はここのポリッジを食べないと朝って感じがしないんですよ~っ」
今日の私はナッツポリッジ、ポリポリしていて美味しい。
グレーテ王女は甘々ポリッジであった。
「本当にアップルトンは暖かくて良いですわ。ジーンは春が来るのが遅くて、まだまだ寒うございますの」
「帝都ではオーロラは見えますの?」
「オーロラはもうすこし北でないと見えませんわねえ、でも帝国内で見える都市もありますのよ」
いいなあ、オーロラ、見たいなあ。
飛空艇で北に行けば見れるだろうか。
ああ、世界中をうろうろしたいなあ。
「グレーテ王女、今日は何をするの?」
「お兄さまと一緒に国立美術館に行きますわ。明日は念願のピアノコンサートですの、楽しみですわ」
「王都を満喫してくださいね」
たぶん、週末に暗闘組織が王都に入って来そうだから、楽しむのは今のうちだね。
なんかそんな予感がする。
甲蟲騎士団にも言っておかないといけないな。
さて、食事も終わったのでグレーテ王女と別れて我々は登校である。
一歩、寮を出ると綺麗に晴れわたった空で吸い込まれそうだ。
春めいてぽかぽか暖かいね。
おろ、玄関ホールに壁新聞の新しい奴があるな。
そういえば月曜日は貼っていなかった。
なになに?
『要人テロか、学園寮襲撃事件!』
先週の水曜日の事件の記事が一面で出ていた。
だが、まあ、事態は二転三転したので事情が古いな。
「聖女さま、結局、要人テロはどうなったのですか?」
新聞記者のレイラ先輩が詰めよってきた。
んー、どこまで話して良い物やら。
「詳しい事は公式発表を待ってね、一応事件は解決して王都は平穏になりました」
「本当にもう、聖女さまの周りは事件が起きすぎで困りますよ」
「私も困ってますよ」
好きで事件を巻き起こしてる訳じゃ無いからねえ。
事件の方が私を目がけてやってくるのじゃ。
階段を上がり、みんなと別れてカロルと一緒にA組にいく。
「おはよう、キンボールさん」
「おはよう……」
「良い天気だな、キンボール」
「おはよー」
「おはようございます」
みんなと朝の挨拶であるな。
「男子寮に……、ディーマー皇子が、来た……」
「なにやら王城よりも、寮の方がくつろげると言って寮に移ったのだ」
「気持ちは解るんだけどね」
「女子寮にはグレーテ王女が来たわよ」
「まあ、歳が近いし、学生といると楽しいのであろう」
ジェラルドは、基本的にケビン王子のお付きの者なので、男子寮に部屋は無い。
王城で寝泊まりしているのだな。
宰相の息子といえど、特別扱いしすぎなのではないだろうか。
「とりあえず、平和が戻ってなによりだよ。キンボールさんの顔色も良くなったしね」
「そんなに酷かった?」
「うむ、白羊皮紙のような顔色であった」
基本的に羊皮紙って薄いブラウンだからな。
漂白した白羊皮紙という物があるのだ。
「でも、これで覇軍の直線号を追い出せば、平和になるだろう」
「んー、週末に何かあるよ」
「ん、それは予知か?」
「……、そう、なのかな?」
予知というよりも、なんか予感みたいな、そんな感じ。
ジーンの『塔』みたいな部署から荒くれ者が来そう。
なんだか知らないけど確信がある。
「ふむ、ジーンの第二波か」
「国境の警備と人の入管を厳しくしなくてはいけないね」
狙われるのは、ホルボス村のトール王子とティルダ王女。
そして、ディーマー皇子とグレーテ王女。
そして私か。
「ジーン皇国が必殺工作に使ってくる機関ってどこ?」
「『城塞』だな。ジーンの諜報機関だ」
ふむ、甲蟲騎士団とアップルトンを相手にするのだから、相当な組織だろうね。
用心しないと。
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