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第686話 だらだらしながら本を読み晩餐の時間を待つ

 ほかほかになって205号室に入るとコリンナちゃんが机に向かって勉強をしていた。

 この子は、いつでも勉強してるなあ。


「お、帰ったかマコト」

「ただいまコリンナちゃん」


 ハシゴを登って自分のベットにごろりと横になり収納袋から本を出した。

 ゴロゴロしながらの読書はこたえられない魅力という物があるね。

 ゴロゴロ。


 今回は歴史の本。

 ジーン皇国建国記を借りてきた。

 ディーマー皇子のご先祖さまだな。


 偽欧州大陸の半分を征服した大ジーン帝国は内部から腐り果て内乱となり、分裂し、周辺国家の連合軍によって滅ぼされた。

 幼いマティアス第三皇子は母であり竜人の姫でもあるエリカの手によって竜人の里にかくまわれて幼少期を過ごした。


 彼が青年になったころ、元ジーン帝国であった場所は群雄割拠し、戦争につぐ戦争で大地は荒れ果て人心は荒廃していた。

 そこへ攻め込んで来たのは、魔王アルセニーに率いられた魔王軍であった。

 マティアス皇子は親友である勇者イヴォンと共に魔王軍迎撃に立ち上がったのだ。


 くう、燃えるねえ。


 ちなみに剛魔剣タンキエムであるが、どうしてマティアス皇子が手に入れたかは諸説あるようだ。

 親友のドワーフが打ってくれたという説、竜人の里に古来から眠っていたという説とか。

 今度、タンキエム本人に聞いてみよう。


 まあ、なんだかんだで魔王を打ち倒し、ちりぢりだった国を一つにまとめて現在のジーン皇国のいしずえを築いたのだな。


「マコト、そろそろ晩餐にいこう」


 おっと、夢中になって本を読んでいたら、もうそんな時間か。


「ジーン皇国の建国史を読んでいた」

「ああ、あそこらへんの時代はロマンあふれるよな」

「わくわくするよねえ」


 続きは後で読もう。

 ちょうど英雄みんなで魔王城へ攻め入る場面だ。


 部屋をコリンナちゃんと一緒に出て施錠して階段へ。

 もうすっかり外は暗くなってるね。


 エレベーターホールに派閥のみんなが集まっていた。

 合流して食堂へ行く。


 あら?


 上級貴族のところにグレーテ王女が居るぞ。

 目が合うとほんのり笑って軽く会釈をしてくれた。

 女子寮に移るというのは嘘では無かったのか。


「王女がおる」

「王城は豪華だけど味気無いんだってさ」

「わからんでもない」


 上級と下級の境のパーティションの上からグレーテ王女が顔を出した。


「こちらとそちらでは何が違うのかしら」

「そっちは上級で、こっちは下級よ。メニューが違うの」

「あら、聖女さまは下級なのですの?」

「聖女候補だけど、身分は男爵令嬢なのよ」


 グレーテ王女は目を見開いた。


「意外に庶民なのですわねっ」

「おほほ、その者は元はパン屋の娘ですわ、グレーテ王女さま、庶民がうつりましてよっ、こちらで優雅にお食事をしましょう」


 また命令さんが憎まれ口を叩きおる。


「パン屋の娘さんでしたの?」

「元はね。勇者とか聖女は光魔法が使えるだけで、結構庶民の出が多いわよ」

「それで親しみやすうございますのね。得心がいきましたわ」


 そう言うとグレーテ王女はぐるりとパーティションを回って下級ブースにやってきた。


「聖女さまがいらっしゃる所が楽しい場所なのですわ。混ぜてくださいませ」

「いいけど……」

「どうすればよろしいのかしら?」


 あれよな、上流階級の人は自分でトレイを持ったりしないんだよな。

 でもまあ、経験か、ジュリエットさんとかはちゃんと出来てるしね。


「グレーテ王女、こちらのカウンターでお料理を貰って自分で運ぶんですのよっ」

「まあ、斬新ですわね、やってみましょう」


 当のジュリエットさんが先輩風を吹かせてお料理の取り方を教えていた。

 帝国メイドのサラさんがハラハラしながら見守る中、グレーテ王女はお料理を運んだ。


 私もお料理を取った。

 ちなみに今日のお料理は、鱒のバター焼き、トマトスープ、キノコのサラダ、黒パンであった。

 バターの良い匂いがする。


「あれはお姫様?」

「そうだよクララ、ジーン皇国のお姫様だよ」

「まあ、イルダさんのお料理なら大丈夫でしょう」

「たぶんね」


 下級貴族食は簡素な見た目だが、味はイルダさん仕込みでとても美味しいから、大丈夫だろう。


「もう食べてもよろしいかしら?」

「まだまってくださいね、みんなが席について、マコトさんがお食事の挨拶をしますのでっ」

「まあ、規律正しいのね」


 学生寮だしね。


 皆が揃ったので食事の挨拶だ。


「いただきます」

「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」

「日々の粮を女神さまに感謝いたします」


 グレーテ王女はなんだかニコニコと楽しそうだ。

 パクリと鱒を口に入れた。


「あらっ、これ、美味しいわっ」

「この寮の料理人はイルダさんと言って、すごく美味しいのよ」

「さすがは美食の国、アップルトンですわね。素晴らしいわ」


 いや、まあ、一ヶ月前は塩辛ポリッジとか、かみ切れない鳥とか出されましたけどね。

 グレーテ王女はわくわくした感じでお食事をしていた。


 もぎゅもぎゅ。

 うん、鱒が良い味だなあ。

 取り合わせも良い。


 王女とおしゃべりをしながら食事は進む。


 やっぱり人間も動物だから一緒に食事をするとなんだか仲良くなった感じがするのよね。

 大人になると宴会が多いわけですよ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王女さん、宮廷晩餐会はどうした?
[一言] 命令さんは空気が読めてないなぁ
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