第673話 武道場に行ったら皇子が稽古していた
おっと、阿呆を眺めていて本来の目的を忘れるところだった。
武道場に行って、カーチス兄ちゃんを連行してこなくては。
「聖女候補さん、俺に惚れるなよっ」
「惚れないって」
ティフォンくんは自信過剰過ぎると思うな。
その若さでプラチナは凄いが。
あ、私も薬草取りとかをして早くシルバーに上げないと。
カオスあふれる中庭を後にして、一路武道場へ。
階段を上がって、武道場に入ると、ディーマー皇子とカーチス兄ちゃんが戦っていた。
なんぞ?
「これは何事?」
観戦中のカトレアさんに聞いてみた。
「ああ、マコト、ナーダン先生が稽古を付けてくれると言って練習してたんだが、皇子がカーチスさまと仕合をしたいと言って、この通りだ」
「意外にディーマー殿下は上手いみょんよ」
試合場の上で、皇子とカーチス兄ちゃんがカンカンやっているな。
「足を使えカーチス!」
「皇子、良いですぞ!」
バッテン先生とナーダン師が選手にさかんに声を掛けていた。
実力はどっこいどっこいな感じだね。
ヨシ、私も声を掛けよう。
「おーいカーチス、勉強は?!」
「うっ!!」
動揺したのかカーチス兄ちゃんの足裁きが乱れた。
「マコト、お前、漢の勝負の時にやっかいな事を思い出させんじゃねえっ」
「そうだそうだ、聖女よ、これは真剣な決闘なのだ、愛するお前といえど邪魔はゆるさんぞっ」
「学生の本分は勉強だよっ」
「頼む、今日だけ、今日だけ大目に見てくれ、明日は参加するからっ」
カーチス兄ちゃんが拝むように言った。
「カーチスさまはナーダン師の指導をそれはそれは楽しみにしておりましたの、今日だけはお目こぼしねがえませんか?」
「んもう、エルザさんが甘やかすから」
「ごめんなさいね」
エルザさんは笑みを含んでそう言った。
「しょうがない、今日の所は勘弁してあげるから、明日は集会室で勉強するのよ」
「わかったわかった。さあ、ディーマー皇子、つづけよう。やっと体が温まって来た所だ」
「うむ、ブロウライト卿の腕は我とちょうどいい感じだ。続けよう」
また試合場でカンカンやり始めた。
スポーツで育まれる友情かあ。
まあ、ちゃんと勉強してくれるなら問題は無いのだが。
私は武道場を後にした。
「あら、居なかったの?」
集会室に戻ると開口一番、カロルが聞いてきた。
「居たけど、憧れのナーダン師の指導を受けているという事で、今日は許す。明日はゆるさん」
「ジーン皇国の一番の剣豪ですからね。しかたがないわ」
あれだ、憧れのプロ野球選手にコーチしても貰っている野球少年のような顔だったな。
「ところで、お義姉様、二人はどう?」
「地頭が良いから何とかなるでしょう。頑張れば来年A組に上がれるわよ」
「えへへ」
「うれしいですっ」
メリッサさんとマリリンが照れた。
二人とも弱いのは……。
全般的であった。
お義姉様は希望的観測すぎる気がするなあ。
まあ、頑張れば結果がどうあれ良いんだけどね。
メリッサさんの計算をマイアバカスを出して検算した。
うん、ケアレスミスがある。
「自分のアバカスあるんだ」
「買った」
前世では授業でソロバンを少しやっただけだが、だいたい同じだ。
慣れると計算が速い。
「良いわね、私も買おうかしら」
「カロルは計算はどうしてるの?」
「筆算よ」
彼女は羊皮紙にすらすらと筆算した。
……なんか日本のやり方と違う。
異世界筆算だ。
不思議だなあ。
「私も将来使うから、アバカスを買おうかしら」
「それがよろしいわ、メリッサさま」
「数学の基本は、数字になれること、あびるぐらい計算すれば覚えます」
ジャンヌお義姉様の教えに、はは~とお洒落組はかしこまった。
「問題は歴史だなあ。これは時間が掛かるからなあ」
「国語もソネットぐらいは作れないと」
「ところで二人は読書の習慣は?」
「ありませんわ……」
「文章を読むと眠くなりますわ……」
ぐぬぬ。
「いっぺんにやらないことよ。大急ぎで詰め込んだ知識は忘れるのも早いし。ちゃんと授業を聞いてノートを取って、そのノートを後で開いて復習する習慣をつけましょう。勉強なんて、だいたいは習慣よ」
「がんばりましゅ……」
「ご迷惑をおかけしましゅ……」
二人とも、語尾が幼児退行しているぞ。
貴族の子供は頑張る奴はとんでもなく頑張るけど、さぼる奴はとことん何もしないからなあ。
基本的に貴族というのは暇でぶらぶらしてるのが偉いという間違った考え方がはびこっているのだよなあ。
「どうしたら読書が捗りますの?」
「さあ?」
私にとって読書は別に苦にならない楽しみだからなあ。
読まないと死ぬタイプだし。
教えろと言っても困る。
「お洒落の本とかは読まないの?」
「それは読みますわ。でも遅いんですの」
「頭の中で声を出して読むのをやめると早くなるわよ」
ジャンヌお義姉様がナイスノウハウを出した。
「ええっ、そんな事が出来ますの!?」
「私もつい声が出てしまいますわっ」
「文字を読まないで見る感じでずんずんやってると、そのうち音が出ないでも読めるようになるわよ。そうすると結構早く読めるのよ」
「まあ、なんて不思議な」
「そんな境地があるんですのねえ」
軽い速読術だね。
パターン認識で速度を上げる奴だ。
これは早い人は凄い速度になるよね。
お洒落組が知らない境地らしく、二人とも感心する事しきりであったよ。
とりあえず頑張れお洒落組。
ガッツだ。
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