第671話 蒼穹の覇者号は今日もホルボス村に飛ぶ、そして帰る
大神殿からひょいと飛び立って、スイーっと飛んで、村の広場に着陸である。
ちなみに今日の操縦はエルマーであるよ。
船が着陸すると村長と、リーディア団長と、王子と王女が駆けよってきた。
「アダちゃーん!!」
「アダベル~~!!」
「うっはっは、今日も来たよ」
アダベルは開いたハッチから飛び降りて二人に抱きついた。
「いやいや、お帰りなさい、聖女さま」
「ただいま、村長さん、リーディア団長」
「毎日すいません、聖女さま」
「近いからね」
子供達もタラップをドドドと降りて来てトール王子とティルダ王女を囲んだ。
きゃいきゃいと盛りあがっているなあ。
そして学園長が降りて来た。
「ああ、ここがホルボス村ですか、うん、とても良い山ですね」
ホルボス山のテーブル状の山頂を見上げて学園長はしみじみと言った。
「あ、村長さん、リーディア団長、うちの学園の学園長です」
「マコト君にお願いして、図々しくも来てしまいました、アップルトン魔法学園のフランク・ダドリーと申します」
「これはこれはよくいらっしゃった」
村長はニコニコ笑った。
「はじめまして、甲蟲騎士団の団長のリーディアと申します」
よろしくおねがいしますとか、大人同士の長い挨拶がはじまった。
村の三馬鹿も現れて、一緒にわいきゃいしているなあ。
「それでは学園長、我々は帰ります。四時頃迎えに来ますね」
「ありがとうマコト君。あちこち見てまわるとするよ」
「村には温泉がありますでな、是非入って行ってくだされ」
「それは良いですな」
学園長も歳だから、温泉にはまるが良い。
健康に長生きすれば良いのだ。
「マコト、ありがとうっ!」
「仲良く遊ぶのよ、四時頃に迎えに来るわ」
「わかったっ!! みんなケーキ食べようぜっ!!」
「うおー、マジマジ?」
「王都のケーキ!! 宿屋のおばちゃんにお茶を出してもらおうっ!」
「ケーキケーキ!!」
大盛り上がりだなあ。
トール王子とティルダ王女も楽しそうだ。
メイン操縦室に戻る。
「さあ、学園に戻ろう」
「本当に乗り合い馬車みたいに便利ね」
「操縦は楽しい……」
飛空艇はヒョンと飛び上がり、スイッと王都に入ってビアンカ邸基地に入った。
慣れると何でも無いね。
「マコトは午後はどうするの?」
「本でも読んでるよ、また三時半頃にね」
「わかった……」
聖女さま特権で月曜日以外半ドンなので暇を潰すのが大変だ。
エルマーは光魔法の実験をしたいだろうが、あれはもう飽きたのだ。
三人で武道場倉庫口から地上に上がると鐘が鳴った。
カロルとエルマーは走っていった。
若干間に合わなかったか。
さて、どうしようかな。
図書館に本を返して、また何か借りよう。
いそいそと図書館に行くと、受付でルカっちが読書をしていた。
「ルカっち、授業は?」
「ん、さぼり、マコトっちは午後の授業無いんだっけ」
「月曜の錬金の授業だけよ。これ返すね」
私は収納袋から本を出して返却棚に置いた。
「ん、受け取った」
ルカっちは貸し出し帳に印をして閉じた。
さて、何の本を読もうかな。
本棚の間を練り歩いて本のタイトルを読んで行く。
興味のある歴史の本とか、地理の本を借りた。
これでしばらく読む物には困らないだろう。
「マコトっちは聖女さまなのに、信仰の本とかは読まないのかい?」
「あっち方面は仕事だからねえ、大神殿でたんまり読んだよ」
「ああ、神殿の方が揃っているか」
そう言ってルカっちは貸し出し帳にはんこを押した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
さて、集会室で読むかな。
ここの所、どたばたしていたので、のんびりした時間は久しぶりだな。
誰も居ない集会室で一人本を読む。
ここは暖かくて居心地が良いな。
エルマーが家からもってきたソファーも座り心地が良い。
本を読むのは好きだ。
色々な知識を得ると自分が広がったような気になれる。
新しい知識、珍しい考え方、いろいろと本で知ることが出来るね。
「お茶をいれましょうか?」
「あ、ダルシーおねがいね」
ダルシーがお茶を入れてくれる。
うん、美味しくなってるね。
ははは、優雅優雅。
だらだらと本を読んでいたら六時間目の終業の鐘がなった。
さて、教室に戻るかな。
155号室を施錠して校舎へ歩く。
裏口から校舎に入り、階段を上がってA組へ。
「午後は何をしていたの?」
「集会室で読書してたよ」
「優雅ね」
「私もそう思うのだが、授業を用意してくれないのだから仕方が無いのだ」
「希少属性の弊害よね」
光は百年に一人だからなあ。
新大陸や、アジア、アフリカの聖女さんや勇者さんは何してるのかな。
一度、会ってみたいものだな。
まあ、それぞれの地域に魔王さんもいるのだけれどね。
飛空艇がまだ多かった時代は、余所の地域の勇者や聖女と共闘したりしたみたいだ。
今は少なくなったからしかたがないね。
私だけは会いに行けるが。
あー、世界旅行したい。
各地の光魔法を覚えたい。
「おい、知ってるか? 二年のストライト隊が邪竜討伐に名乗り出たらしいぜ」
「なんだって、それは剛毅だなあ。倒せたら大金星だな」
近くの男子生徒の噂話が耳に入った。
はあ? なにやってんだ、あの小デブたちは。
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