第669話 子供は乱暴狼藉をするのが仕事です
うん、子供テーブルが凄い事になっている。
なにしろ孤児院の子供たちだからなあ。
マナーとか有るわけが無い。
学園長とリンダさんが大わらわである。
ディーマー皇子はそちらを見て苦い顔をした。
が、ほっとくようだ。
それが正しい。
出されたメニューはランチプレートであった、アイスバインとおぼしきお肉と別の焼肉が乗っていた。
付け合わせにザワークラウトとジャガイモの焼いた物が添えてある。
パンはライ麦パン、スープは具だくさんのポトフ風だね。
サラダはポテトサラダであるな。
「味付けが違うわね、面白い味だわ」
「ちょっとしょっぱいかも」
「パンがどっしりしているな」
ちょっと味付けがアップルトンと違うのだけれど、これはこれで美味しい。
シェフは良い腕前のようだね。
カーチス兄ちゃんと、メリッサさんと、カトレアさんがビールを飲んでいるなあ。
私らはお茶だが。
皇子と王女は白ワインを優雅に飲んでいる。
「ふふっ、こんな賑やかな食事は久しぶりだわね」
「そうだな、いつもグレーテと二人きりで静かな時間だったから新鮮だ」
孤児院ではわりといつもの事なのだがなあ。
どうでも良いけど、アダベルが率先して騒いで学園長に怒られている。
「ジーンのお料理も美味しいね」
「そうだろうそうだろう、食といえばアップルトンではあるが、ジーンの料理も負けてはおらんと思っているぞ」
風土によって料理の味が変わるのだろうなあ。
というか、ポトフが美味しい。
ソーセージが入ってるね。
「やはり、ジーン料理にはビールだな」
「同感です、カーチスさま」
「あまり飲んでは駄目だみょん」
「ビールなんか水みたいな物だ、わははっ」
さっそくカーチス兄ちゃんが酔っているな。
「王城の居心地はどう?」
「素敵ですけれども、落ち着きませんので、また、学園の女子寮に移ろうかと思ってますの」
「なんでまた」
「寮だと、沢山の同年代の方々と一緒で賑やかで楽しかったですわ。お風呂も良いし、食堂のお食事も美味しかったし」
「我は飛空艇の中が一番落ち着けたな。閉じ込められた感じはあったが、静かな時間が過ごせた」
「蒼穹の覇者号も良かったですわね、お兄さま」
王城だと豪華で素敵だけれども、静かすぎるのかな。
学園は騒がしすぎると思うのだが。
どっちにしろ、兄妹二人で固まって、他の人とあまり交流をしないのは良くないと思うな。
学校行けよ。
ランチプレートを食べ終わると、珈琲とデザートが出てきた。
子供達が歓声を上げた。
「ケーキ!!」
「「「ケーキだあっ!!」」」
フルーツケーキ状の物に白く粉砂糖が掛かっている。
シュトーレンっぽいな。
フォークで突き刺すと、どっしりと重い。
パクリ。
ああ、甘い、あまーーい。
しかもバターが凄いな。
野趣溢れる原始のケーキという感じだ。
これは甘々。
甘々先輩が好みそうな味だね。
子供達が笑顔でテンション上がっている。
甘さは大正義なのだ。
「うむ、これは良く出来ているな」
「ジーンの味ですわね」
そうかそうか、ジーンのケーキはこんな感じか。
カロリー爆弾みたいな代物だな。
「ごちそうさまでした、ディーマー皇子」
「どうだ、感想の方は」
「すごく美味しいわね、お国ではこんな感じ?」
「ちょっとアップルトン人に合わせてますわね」
「国ではもうすこし、重みがあるな。こちらの国民は軽い方が良いのだろう」
うっは、本場はもっと重いのか。
これは太るぞ。
「ケーキ美味かった、ディーマーありがとうっ」
「気に入られたか、アダベル殿」
「うん、国によって味がちがうんだなあ、って解った。大発見だ」
「喜んで貰ってなによりだ」
リンダさんと学園長が子供達をとりまとめて退場させた。
子供相手は大変よね。
リンダさんも豪傑なんだけど、わりと子供には優しいのだ。
「エイダさん、大神殿の騎士団の練習場まで迎えに来て」
【了解です、マスターマコト】
エイダさんは勝手に飛んでくれるから楽よね。
「ホルボス村にもエイダさんだけで飛べるんじゃないか?」
「出来るだろうけど、それはならんのです、コリンナちゃん」
「なんでよ」
「事故が起きた時に責任の所在が解らないから」
「あ、なるほど」
機械に飛ばせていると、何かあった時に困るのよね。
悪い帝国が鹵獲するって追いかけて来たりの時だな。
「おいしかったね~~」
「皇子さま、ごちそうさまでした~~」
「お肉が美味しかったです、でもケーキはもっと美味しかったです」
「そうかそうか、それはなによりだ」
子供達にお料理を褒められてディーマー皇子は満面の笑みで答えた。
グレーテ王女も優しそうな微笑みを浮かべて子供達を見ていた。
『子供は千年前と何も変わらぬな』
タンキエムがしみじみとつぶやいた。
インテリジェンスソードは色々な子供を見てきたんだろうなあ。
「日曜日にジーンに帰る予定だ、ついては土曜の夜、舞踏会が開催される。聖女も来てくれないか」
「いいよー、男女ペア?」
「相手がいるならペアがいいだろうな」
どうすっかな、エルマーと行くかな。
男装してカロルと一緒にというのは攻めすぎであろうか。
まあ、国際交流なので無茶はすまい。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




