第667話 火曜日は日常が戻ってくる
小鳥の鳴き声で目を覚ました。
春だからか、最近よく鳴いているね。
上体を起こして伸びをした。
んーー、良く寝た。
魔力も回復して調子がいいな。
カーテンを開けると、メイドさんたちが部屋を出る後ろ姿が見えた。
いってらっしゃい。
ハシゴを降りて、歯を磨いたり用をたしたり、いつもの日常だね。
コリンナちゃんもベットから出てきた。
「おはようマコト、今日も良い天気だな」
「そうだねえ、だんだんと暖かくなっていくね」
春のこの時期の気候はすがすがしくていいね。
気持ちがふわっと軽くなる感じ。
ダルシーがケトルを持って来てお茶を入れてくれる。
うん、美味しいね。
「もめ事は全部終わったんだな」
「たぶんねー、地獄谷の件もアダベルが踏み潰してお終いかな」
「ダンスパーティから事件続きだったからな、しばらくのんびりしろ」
「うん、そう願っている」
もう事件はうんざりでございますよ。
普通の学生ってのは、こんなに事件は起こらないはずだ。
あちこちからもめ事がやってくるのだなあ。
ほっと一息ついて、部屋を出て食堂に向かう。
いつも通りエレベーターホールでみんなと合流して食堂へ。
「知ってる? 下町に邪竜アダベルトが出たんだって」
「そ、そうなんだ」
クララが重大ニュースみたいに教えてくれた。
うん、知ってるよ。
「なんか、小さい女の子に化けて王都に潜伏してるんだって、怖いね~」
「そうだなんだ、コワイね」
アダベルが王都中の噂になってるっぽいなあ。
これは不味いかもしれない。
振り返ると、派閥の皆が口をもにょもにょしていた。
うん、教えたいけど教えられないって辛いよね。
とりあえず、ナッツポリッジを頼んでトレイに乗せた。
ミニサラダを取って、ケトルからカップにお茶を入れる。
テーブルに運んでみんなを待つ。
「アダベルが噂になっているわね」
トレイを運んで来たカロルが私にそう言った。
ちなみに彼女は今日も塩ポリッジであるよ。
「ちょっと困ったね」
「ドラゴンはやっぱり、みんな怖がるわね」
「孤児とかは全然平気なのになあ」
「先に小さい姿で知り合ったからでしょ」
そりゃそうだね。
先にアホの子と解ればドラゴンになっても怖くないか。
なんとかしないとなあ。
パクパク食べて完食。
今日もイルダさんのポリッジはおいしゅうございました。
今日は特に諜報報告も無いようでヒルダさんは座ったままだね。
ごちそうさまをして、学園へ登校する。
ああ、風の匂いが甘いね。
春だねえ。
小鳥も鳴いているよ。
カロルと一緒にA組に行くとケビン王子が寄って来た。
「キンボールさん、昨日、下町に出た竜は、アダベルさん?」
「そうだよ、ヤクザにさらわれて巨大化して屋敷を踏み潰したのよ」
「ああ、それでか、なるほどね」
「人の身内をさらってまで利権を手放したく無いとは、許せませんな王子」
「そうだね、ちょっと他の所でも悪質な商売してないか調べてみないと」
「『塔』に頼みましょう」
「それが良いかな」
世に悪徳商法の種は尽きないのだなあ。
「結構騒ぎになってるから、冒険者ギルドで討伐隊が組まれるかもしれないって、父が言っていたよ」
「討伐隊!!」
アダベル危うし。
並の冒険者では勝てないだろうけど、世の中には規格外がいるからなあ。
これもまたもめ事になりそうな予感がするなあ。
やれやれだぜ。
アンソニー先生がやってきて、朝のホームルーム。
中間試験が近いので、がんばってお勉強をしましょう、との事。
その前に黄金週間で、聖女派閥の大人達のパーティだわな。
ジョンおじさんに日程を聞かないとなあ。
火曜日の授業は、歴史、国語、数学、魔術理論だね。
歴史と国語は大好き。
数学と魔術理論は、まあまあだね。
数学の時間、ふと外を見たら、第三グラウンドの覇軍の直線号が浮き上がった。
おお、修理が終わったのか。
私がぶっ壊した上部構造が元通りになっていた。
さっさとジーンに帰れ。
と、思ったら着陸した。
起動テストだったらしい。
ちなみに皇子と王女は今週末に帰るらしい。
ジーン料理をご馳走してくれるそうだが、いつになるのかな。
ややこしい魔術理論の講義をなんとか理解して、お昼の鐘がなった。
さて、今日はどうするかな。
順番だと外食の日だけどなあ。
「では、我が聖女派閥の者をジーン料理のランチに連れて行ってやろう」
教室に唐突にディーマー皇子が現れた。
グレーテ王女も一緒だ。
「いきなりだなあ」
「なに、カーチスに聖女派閥は皆でランチを一緒にとると聞いたのでな。派閥の皆にも世話になったからお礼だ。感謝の言葉はいらぬ」
「さいですか」
皇子は、カーチス兄ちゃんと仲良くなってんだなあ。
「ケビンもどうだ」
「そうですねえ」
ケビン王子も半笑いだな。
だが、今日は火曜日だ。
「王子、ビビアン様が怒るよ」
「そうだね。ディーマー、今回はパスで」
「そうか、残念であるな」
カーチス兄ちゃんたちがB組からどやどや来て、結局、皆でディーマー皇子にゴチになる事となった。
なんだか妙に皇子のテンションが高いな。
ジーン料理は興味がありますけどね。
偽ドイツだから、アイスバインとか出るのかな。
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