第652話 そそくさと学園に戻る、で錬金授業
「おまちくだされ~~、今日のご訪問は?」
「アダベルと子供達を送ってきただけよ、すぐ帰ります」
飛空艇を見て、村長が駆け込んできたのだが、子供達の再会シーンで声を掛けられなかったらしい。
「そ、そうですか、ですが、お茶を一杯いかがですか?」
「お昼休みが終わっちゃうから、お気持ちだけ」
「飛空艇は速いもんですな。では、またのご訪問をお待ちしておりますじゃ」
「ありがとう、週末にブリス先輩を運んでくるから、またその時でも」
「はい、いつでもいらっしゃってくださいませ」
土曜日はお茶を一杯貰って帰るか。
あまり領民をじゃけんにしても良くないね。
「マコト、ありがとーっ!!」
「ありがと、マコ姉ちゃんっ!」
「夕方迎えにきてねーっ!」
「了解了解、良い子にして遊んでなさいよ」
「「「「はーーい」」」」
孤児たちは、とても返事が良いね。
私は手をふってタラップを上がった。
メイン操縦室に入り、艇長席に座った。
「ときどきアダベルに呼ばれそうね」
「毎日じゃなければ別にかまわないよ」
「お昼に……、毎日行きそうだ……」
う、それは面倒臭いな。
でもまあ、アダベルがトール王子とティルダ王女を思っての事だからなあ。
あまり強く言えないね。
エンジン出力を上げて、蒼穹の覇者号は空に飛び立った。
そして、王都を目指して飛ぶ、着く、格納庫の岩棚上空、高度を下げて、バックして格納。
以上!
「ほんと、すぐそこね」
「ヒルムガルドぐらいまでは、すぐそこ感が出てきたね」
「マーラー領へ日帰り出来るものね」
アップルトンの国内なら日帰り圏内になったな。
隣国とかでも高高度飛行すれば日帰りだ。
世界がグッと狭くなったな。
飛空艇はチートだなあ。
私たちは飛空艇を下りる。
よしよし、授業が始まるまで十分ほどある。
「武道場口からでて、実習室に行こう」
「いきましょう」
「いこう……」
格納庫を出て待合室へ入り、階段を上がって武道場の倉庫から外に出る。
校舎の二階奧の錬金実習室に入ると、まだサーヴィス先生は来ていなかった。
「おはようございます、聖女さま」
「水曜日の夜は怖かったですわね」
「あのテロリスト達は捕まりましたの?」
「まあ、事件は解決しましたよ、ご安心ください」
ライルさんや、オルニーさん、ガスコインさんがワンテンポ遅れた時事話題をふっかけてきた。
甲蟲騎士は寝返らしたので大丈夫大丈夫。
サーヴィス先生がやってきた。
「さて、今日も良い天気で錬金日和だね。今日は魔導具制作の最終日だ。今日でだいたい完成させること、終わらなかったら、来週の授業までの宿題にします」
「「「「はーーい」」」」
とはいえ、三回にわたってドライヤーを作っていたので、だいたい回路は完成しているな。
カロルのミストドライヤーも完成して、魔石を付けてブインブインいわせている。
「カロル、終わったなら手伝って」
「良いわよコリンナ」
とはいえ、回路を書くのは自分の手なので、カロルはミスがないかチェックする感じだね。
手本の設計図面があるので書き写すだけなので割と簡単なのよね。
エルマーのドライヤーも完成のようだ。
三段階に温度が切り替わるらしい。
私のドライヤーも線と線を繋げて、完成!
電池、じゃなくて魔石を付けて、スイッチオン!
が、うごかない。
「あれーーー?」
「ああ、線が一本足りないわよ、マコト」
「おおっと」
錬金インクで線をつなぎなおして、スイッチオン!
ブイーーーン。
よし、動いた、ちゃんと暖かい風が出てるね。
「このドライヤーの小さくて出力が弱い物を作ると、冬のカイロみたいな物ができますわね」
「それはナイスアイデアですわ」
オルニーさんとガスコインさんがそんな事を話していた。
服に回路を書くと暖かい服が出来るな。
魔導具は面白い。
前世の電気器具とはちょっと違うので応用が沢山ありそうだね。
だいたいの人がドライヤーを完成させたようだ。
「では、羊皮紙に名前を書いて提出してください。チェックして採点したら皆さんに返しますので、自分で使ったり、家族にあげたり自由にしてください」
おおっ、と生徒がどよめいた。
やっぱりドライヤーはまだまだ品薄だからね。
持ってない人は嬉しいかもしれない。
授業終了の鐘が鳴った。
「それでは次回からは別の課題に入ります。森で薬草を採るところから毒消しポーションを制作します」
おお、採取クエストからやるのか。
本格的だね。
毒消しは自作できると便利だし、簡易的な物でも作れれば冒険の安全につながるし、いい授業だね。
王都のそばの森かな。
いいね、ちょっとしたピクニックだね。
起立、礼、をしてサーヴィス先生は帰っていった。
我々も教室に戻ろう。
「森でモンスターが出たらどうしましょう」
「そのための武術ですけれども、わたくし、武術の成績がからきしですわ」
「男子が守ってくれますわよ」
エルマーが棒で守ってくれるぞ、きっと。
「そういや、エルマーの棒の先生は見つかったの?」
「ブロウライト伯が……、紹介してくれた……、明後日から始める……」
「おお、良かったじゃない、どんな先生?」
「……芙蓉料理店の……、おじさん……」
「そ、そうか」
三節棍なんかマイナーな武器だからなあ。
先生も少ないんだろうね。
がんばれ、エルマー。
かっこ良く、棒で戦うんだ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




