第647話 ご飯を食べてお風呂に入って寝るのだ
さてーと、食堂に入ろうと思ったのだが、みなさん荷物を下ろさなければならないのだった。
収納袋持ちの私とカロルだけがエレベーターホールで出待ちであるよ。
いつもと逆だね。
「収納袋は鞄いらずでいいな」
コリンナちゃんがうらやましがった。
「便利だよ~、こんど素材を獲って自作しようよ」
「どこのダンジョン?」
「どこだっけか?」
「東の国境あたりのストッケルダンジョンよ、植物系モンスターのハングリートレントの胃袋を加工するの。けっこう大変だって聞くわね」
「何級?」
「A級よ、けっこうあぶないわね」
「けっこう後だなあ、さすがにA級はやばいって」
「何を言っているのだ、ガドラガはS級だぞ」
「そりゃ底の方はS級だが、私らが授業で行くのは上の方だ」
「まあそうだが」
コリンナちゃんは205号室に荷物を置きに行った。
みんなでダンジョンアタックも楽しそうだな。
「旅行楽しかったね」
「そうだね、カロルが操縦は上手くなって凄いよ、私も頑張らないと」
「飛空艇の操縦は面白いわね、大きな乗り物を操ってるって感じがして良いわ」
二人で同じベンチに座っておしゃべりをする。
うん、良い感じの雰囲気だ。
なかなか二人きりにはなれないからね。
黙り込んだ二人の間にながれる空気も、また良い物でございますね。
うしし。
おっと、手と手が触れましたよ。
なんか意識しちゃうね。
こういうワキワキした空気感でしか取れない栄養素がありますな。
「ガドラガに行くのが……、た、楽しみね」
「そ、そうですね」
カロルと二人きりでガドラガだなあ。
まあ、昼間はベロナ先輩のパーティでダンジョンに潜るのだが。
迷宮泊するのかね。
テント買わないと駄目かな。
というか、雨が降らないのだから迷宮にテントは要らないのか。
寝袋にくるまって寝るだけなのか。
エレベーターがチーンと鳴って、ゆりゆり先輩とジュリエットさんが降りて来た。
「あらあら、まあまあ、お気になさらずに続けてくださいませ」
「そいつは無理です」
「別に何もしてないですよっ」
「マコトさまとカロリーヌさまは何時も仲良しでよろしいですわねっ」
なかなか慣れていないので人前でイチャイチャするのが恥ずかしくて出来ないのが難よね。
そうこうしているとみんな下りてきたので、食堂に入る。
「今日は遅かったね」
「土日にホルボス山に行ってきたから。そば粉が手に入ったからひよこ堂でそばパンを作ってもらうんだ」
「そば粉! 半分ちょうだい」
「クララも作りたいの?」
「クリフ兄さんとできばえを競争したい。最近パンのツンフトで兄さん評判がいいのよ」
「そうなんだ」
「独創的なパンを作る職人だって、まあ、だいたいはあんたのアイデアでしょうけどね」
「だいたいそう」
私はクララと笑いあった。
トレイを取ってお料理を乗せて行く。
さて、今日の献立は?
鴨のローストと緑豆のスープ、キノコのサラダ、黒パンであった。
良い匂いだなあ。
ケトルからコップにお茶を注いでテーブルまで持っていく。
食堂に来ると、なんか帰って来たな感があるね。
我が家が一番。
みなが席についたので、お食事のお祈り。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
鴨をパクリ。
んーー、いつもながら良い味わいだなあ。
脂がのっていてジューシーである。
目を閉じると池を泳ぐ鴨の親子の映像が浮かぶ。
ああ、鴨南蛮食べたい。
緑豆が入ったスープも素材の味が出ていてほっこりと美味しい。
イルダさんのお料理はすごいなあ。
キノコのサラダはシメジっぽいキノコをマヨネーズで和えて葉野菜と搦めてある。
シャキシャキして美味しいね。
「ホルボス村のお料理も素朴で美味しかったけど、寮の食事を食べるとここが私の場所なんだなって感じるわね」
「わかる」
「私も」
三年間イルダさんのお料理に慣らされると口が奢ってしまいそうであるね。
美味しい物は正義なのだ。
「もうすぐ黄金週間ですわね。領袖、クリフトン卿から日取りや場所は聞いていますか?」
「あ、聞いてないや」
「あ、私が聞いておくよ」
「コリンナちゃん、お願いするよ」
「明日、商会に事情聴取に行くのだけれど、コリンナも来る?」
「どうしようかなあ」
「マクナイトさまが来るようよ」
「行く!」
コリンナちゃんを釣るにはジェラルドを出せば良いのか。
これは良い事に気がついた。
とはいえ、ジェラルドは基本的にウザイので諸刃の剣と言えよう。
「じゃあ、私と、マコトと、コリンナと、マクナイトさまで押しかけますか」
「ブリス先輩も来るって」
「熱心ね、良い事だわ」
「本当に助かるね。良い人と知り合ったものだ」
凄腕の文官は貴重だからね。
ホルボス山一帯の開発には欠かせない人材だな。
地獄谷集落へは街道を行って、酷い山道を行かないといけない。
なんとか街道までの道を整備して、できればホルボス村にも行ける道を作らないとなあ。
ブリス先輩が行き来するのに大変だし。
明日、悪い商会を締め上げて集落の整備と道の整備代をせしめよう。
聖女はあこぎな商売を許さないのだ。
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