第633話 朝っぱらからあの人が来る
「おはようございますっ! あなたのリンダ・クレイブルが参りましたよっ」
朝っぱらからリンダさんが邸宅に来おった。
「ほうこれがビアンカさまの別邸ですか、凄い物ですな」
しかも教皇様付きだ。
教皇様は良いお年なのにフットワークが軽いな。
「噂ではなにやらジーン皇国まで飛空艇を飛ばして聖女さまらしい慈善活動をなされたとか、そういう時は私を呼んでいただかないと困りますよ」
「えー、リンダさんが来ると流血沙汰で凄い事になるからヤダ」
「それは誤解です」
誤解じゃねえよ、理解だよ理解。
「今は無きサイズ王国の王子さまと王女さまを救出に行かれたそうですな。マコトさまらしくて良い事です」
「ありがとうございます、教皇様。今日は邸宅の視察ですか?」
「それも有りますが、せっかくの良い立地なので、教会としていろいろと整備しようと思いまして、下見でもあるんですよ」
「ホルボス教会を建て直して大きくする予定ですよ。あと、王都からの道を整備して善男善女が楽に巡礼に来られるようにする予定です」
「教会の建築部が動きますか」
「はい、最近は大きい仕事もなくて暇でつまらないと親方が言ってますのでね」
教会には子飼いの工務店というか、建築会社があるんだな。
彼らが大理石をほって各地に大聖堂とかを作るのである。
ホルボス大聖堂になるのかあ。
「ついでに邸宅の庭や塀なども整備しましょう、せっかくの邸宅が台無しですから」
「あ、ありがとうございます。良いんですか? 教会の建物でも無いのに」
「聖女マコトの別邸ですから、問題は何もありませんよ。聖女さまの予算も余ってますからね」
いや、莫大な聖女予算付けるのが悪いと思うんだ。
申し訳無いので教会のお金は使えないのだな。
皆さんのお浄財ですし。
「ここは風光明媚で王都にも近いですし、巡礼者用の宿坊も作りませんか? 温泉も出ますし」
「温泉は良いですね。王都からも近いですし、良いお考えですね」
「ここは気軽な巡礼地として流行りますよ。大聖堂に寄って、帰りにホルボス大教会へと詣でる。いいですね」
あれよね、聖職者って興行の才能も要るのよね。
厳かなセレモニーと気晴らしの娯楽は表裏一体なのだね。
「それでは、ディーマー皇太子と、トール王子とティルダ王女にご挨拶をしてまいります、お昼ご飯はご一緒しましょう」
「はい、そうしましょう、教皇さま」
教皇様はリンダさんを連れて邸宅の中に入って行った。
さて、朝ご飯も終わったし、お昼まで暇だな。
玄関ホールでどうしようかなと悩んでいたらカロルが二階から下りてきた。
「どうしたの、マコト?」
「午前中暇だからどうしようかと悩んでいたの」
「村でもぶらぶらしない? 教会の施設を沢山建てるのでしょ」
「私が建てるわけではないけど、暇だし行こうか」
「うんっ」
よし、うちの嫁と山奥の村デートだ。
二人で玄関から外にでる。
今日は良い天気で晴れてるなあ。
「天気が良くていいね」
「のんびりできるね。最近のマコトは頑張りすぎよ」
「頑張りたくてやってる訳ではないのだけど、トラブルが寄ってくるんだよねえ」
「でも、なんでも解決して、良い方向に話を持っていくのがマコトらしくていいわね」
「いやあ、出来る事をしてるだけなんだけどね」
嫁に褒められながら村までの道を歩く。
途中でガタイの良い一群が木を切っていた。
「あ、これは聖女さま」
「甲蟲騎士団の人?」
「はい、敷地内の木を切って小屋を建てようと思いまして」
見れば奧の方にはテントが張ってある。
彼らは野外活動騎士なんだなあ。
収納袋からビアンカさまから貰った土地の地図を出した。
ああ、もう少し向こうまで邸宅の敷地なのか。
広いなあ。
「敷地内の木は勝手に切って大丈夫よ。境界線はあの朽ちた塀跡までみたい」
「はい、頑張って作ります」
ログハウスでも作るのかね。
地図を良く見ると、昔はもっと道が広かったみたいだね。
先にダンジョンしか無いからだんだんと森が道を浸食していったようだ。
時間とは凄いものだな。
カロルと話ながら歩くと、すぐ村だね。
しかし、教会をつぶして新しくすると言っても両脇の民家はどうしようかな。
宿坊も教会の近くにつくりたいのよね。
「そういえば、ブリス先輩は?」
「そういえば、邸宅に泊まってなかったね。どこに行ったんだろう」
噂をすれば影で、ブリス先輩が村長と一緒に歩いてきた。
「ブリス先輩っ」
「ああ、これは聖女さん。おはようございます」
「おはようございます、昨日はどこに泊まってたんですか?」
「ほっほっほ、昨日はブリス代官とすっかり和んでしまいましてな。我が家に泊まって貰ったのですじゃ」
「連絡もしないですみません」
「ああ、そうだったんですか、それは良いですね」
村長さんとやりとりが多くなりそうだから、仲良くなるのは良いね。
「今は人がいっぱいだけど、これからの週末は邸宅の執務室を使ってください」
「そんな、恐れ多い」
「いいのいいの、私は書類仕事はしないので、しばらく使わないから」
「村役場の片隅に机を一ついただければ」
「ないない、村役場みたいな洒落た物を作るほどの規模ではないですじゃ。書類は宿屋の食堂で作ってましたな」
「これから、村は発展する予定なので、役場もあった方が良いですよ」
「ほう、こんな寒村に人がきますか?」
「教皇様が来て、教会を大きくするそうですよ。あとせっかく温泉があるのだから巡礼の人が泊まるための宿坊とか作ると良いと思うんですよ」
村長さんがハッとしたように目を開いた。
「そうですか、ここは聖女さまゆかりの地になったのですな。礼拝の巡礼者が来ますな」
「道も整備してくれるそうですし、色々変わりそうで申し訳ありませんね」
「いやいや、なんのなんの、村に聖女さまが来て下さったのですから、文句を言ったら罰があたりますわい。役場も建てるべきですな、ブリス代官」
「そうですね、教会の方とも話し合って計画しましょう」
うむ、ブリス先輩は有能そうでいいな。
「村が新しくなるのね、楽しみだわ」
「今の雰囲気も好きなんだけど、変わっちゃうだろうねえ」
「マコトの領地なんだから、絶対発展するわよ」
「そうなったらいいねえ」
新しい教会でも、女神像はあのビアンカ様の像で良いね。
ビアンカさまは気にしないだろうけど、あの人はもっと讃えられて良い偉人さんだ。
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