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第629話 第二スイートにリーディア団長が入ってくる

 ソファーに座ってトール王子とティルダ王女とおしゃべりをしていると、コンコンとドアがノックされた。


「開いてるよ~」


 なぜアダベルが入室の許可をだすのか?

 ドアが開いて平服のリーディア団長が入って来た。

 なんだ、居ないと思ったら甲蟲鎧を脱いでいたのか。


「リーディア!!」

「リー!!」


 王子と王女は泣きながらリーディア団長に抱きついた。

 団長は優しい表情で二人を抱きしめ頭を撫でた。


「怖い思いをさせてしまいました、トール王子、ティルダ王女」

「き、きっと助けに来てくれるって、信じてたっ」

「リーッ!! ありがとうっ!!」


 王子と王女は火が付いたようにワンワン泣いた。

 うんうん、怖かったね。

 アダベルもなぜだか笑顔でうんうんとうなずいていた。


「これからはずっと、私と甲蟲騎士団の皆が守りますからね。安心してください」

「みんな一緒だっ! わーいわーい!!」

「サイズにはいつ帰れるの?」


 ティルダ王女の無邪気な質問にリーディア団長は悲しそうな顔をした。


「いつか必ず帰ります、サイズ王国を我らの手に取り戻します。それまで少しご辛抱くださいね」

「わかった、僕は剣を頑張るよっ」

「私はお勉強を頑張る~~」

「ああ、トールさま、ティルダさま」


 感極まったのかリーディア団長は二人を抱きしめて、はらはらと涙を流した。


「トールさま、ティルダさま、こちらの聖女さまがお二人の救出にお手伝いいただきました。このお方がいなかったら、我々は皆死んでいた所です」

「そ、そうなの、死んじゃだめだよ、ガラリアは生きてる?」

「ええ、ガラリアは大丈夫です」

「よかったー、聖女さま、ありがとうございます」

「いえいえ、困っている人を助けるのが聖女の仕事なので気になさらずに」

「このお船も聖女さまの物なんでしょ」

「すごいやっ! 聖女さまは偉いんだねっ」

「先々代の聖女さまに譲り受けた物だから、私が偉いわけじゃないですよ」

「トール、ティルダ、マコトは良い奴だから気にしなくていいぞ」

「そうなんだ、アダちゃん」


 あ、邸宅に王子と王女の部屋割りをしてないや、エクストラベットを出して貰って私の部屋で寝てもらおうかな。

 月曜日からは、東ウイングのお部屋に移って貰おう。


「それでは二時間ほどでホルボス山基地に着きますので、ごゆっくり空の旅をお楽しみくださいね」

「ラウンジにジュース飲みに行こうっ」

「わあ、ジュースあるの、のみたいのみたい」

「僕はお腹が空いたなあ、なにか食べる物ないかな」


 さすがに今回は突発的な旅だから食べ物は積んでないかも。

 私は収納袋から、ひよこ堂のクッキー缶を出してトール王子に渡した。


「ラウンジに行って、みんなで食べてください」

「お、ひよこ堂のクッキー、美味しいんだっ」

「わあ、楽しみ楽しみ」

「行こう行こう」


 アダベルが王子と王女を連れて部屋を駆けだしていった。


「子供は元気ねえ」


 リーディア団長は深く頭を下げた。


「私は聖女さまになんとお礼を言っていいか、まさか生きてトール王子とティルダ王女に会えるとは思ってもいませんでした。本当にありがとうございます」

「まだまだよ、サイズ王国を取り戻すまでがんばって」

「はい、ありがとうございます。なにからなにまで」


 そう言って、リーディア団長は深く頭を下げた。


「あと、生き残りの捕虜の甲蟲騎士さんたちは大神殿の牢にいるから月曜日につれて帰ってね」

「あ、生き残りがいましたか!」

「銀甲胄の人と、蜂と、蜻蛉が二人ね」

「怪我の具合は……?」

「みんな私が治したからピンピンしてるわよ」

「聖女さま……」


 リーディア団長は泣きながらひざまずいた。


「やめなさいよう。聖女候補の前では即死以外で死ねないだけよ」

「ありがとうございます、ありがとうございます……」


 まあ、王子と王女を救うため決死のテロリストとしてディーマー皇子を狙ったのだから、よもや生きて帰れるとは思ってもいなかったんだろうなあ。

 騎士の生き方は純粋だけど、なんだか悲しいね。


「ラウンジに行って、みんなと一緒にクッキーでも食べなさいよ」

「はい、ご恩は必ずお返しします、聖女様」


 リーディア団長は第二スイートを出て行った。


 やれやれ。

 仕方が無いとはいえ、あまり人に恩を売るのは好きじゃ無いんだよなあ。

 立ち上がると丸窓からどこまでも続く雲海が見えた。

 天上界はこんなに綺麗なのに、下界はいろいろと大変だよなあ。


 私は背中を丸めてメイン操縦室へ戻った。


「あら、戻って来たの? 休んでいたらいいのに」

「艇長なので、一応ね」

「今、どこらへん?」

「もうすぐ……、国境を越える……」


 ああ、高空を行くと早いねえ。

 エネルギーはと、お、増槽のゲージが増えてる。

 全体的には半分ぐらい。

 増槽一本分の四分の一ぐらい消費したかんじだね。

 さすがは一本で世界一周できる増槽だぜ。

 もっと早いうちに気がついていたらとは思うがしかたがない。


「今回のもめ事は終わりね」

「そうだね、しばらくのんびりしたいよ」

「マコトの回りは……、事件が起こりすぎだ……」

「本当にそう。とりあえず、明日は村で仮設診療所をやって、学園に帰ろう」

「治療は手伝うわ。簡単な病気や怪我は錬金薬を使うべきね。マコトの魔力は有限なんだから、節約してつかわないと」

「魔剣が起動できないと……、戦闘力が減る……」


 そうだなあ、今回は私が魔力切れでへろへろだったから、ホウズが起動できなかったな。

 ザスキアさんと戦った時にホウズが満タンならもっと楽だったな。


 まあ、増槽が見つかったから今後は楽ができそうね。

 とくに目的地を決めずに、空中をふらふら跳びたいね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王子王女の救出劇、幕引き、でしょうか。 なかなか面白い人が現れたりして、 楽しかったです。 しかし完全無敵に見えたマコト様も、 魔力がなければただの人。 まぁ、仕方がありませんが。 異世界…
[一言] マコトが増槽の分まで魔力チャージするとなると、大変そうです。 効率のよい魔力回復ポーションが開発されたりするのでしょうか。
[一言] アダベルちゃんすっかり飛空艇に馴染んじゃって、まあ。 もう一部屋くらいあげちゃうしかないかもね。
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