第617話 コリンナちゃんたちと合流して村を目指す
だんだんホルボス基地の中が暗くなってきた。
と、思ったら魔導灯が点いた。
明るい。
「お養父様、そろそろ学者さんの宿の手配を、晩ご飯の方は村人さんが用意してくれるそうなのでそれを」
「わ、私がかい?」
他に学者の世話を焼く人がどこに居るってんだよ、お養父様。
「わかったわかった、村に宿はあるんだね」
「人数分あるかどうかは不明ですけど」
「ああ、まあ、コノシタ遺跡の調査の時は宿屋の二人部屋で六人寝たからなあ、大丈夫ですよ聖女さま」
「あるある」
あったら駄目でしょうっ。
学者さんは常識が無いからなあ。
「最悪ここでテント張ってもいいし」
「屋根があるんだ、テントはいらねえ、寝袋で十分」
「それもそうか」
「いざとなったら船の中で寝て下さい、帝国メイドさん達は邸宅に移るので四人部屋が二つ空きます」
「私、船で、船で泊まりたーいっ!!」
「サーヴィス先生……、せめて二等船室で泊まってください」
「いいのっ!!」
「女性なので、一部屋使ってもいいですよ」
「わわわーーいっ!!」
サーヴィス先生は大喜びだ。
基地の床で寝るよりは良いよね。
船のスイートの二部屋はまた皇子と王女が使いそうだからなあ。
というか、もうテロの心配が無いのだから王城へ行けだな。
「では、船に八人、宿に十人だな」
「あ、船は晩餐後に出発して、十二時頃戻ってくるんですが」
「ああ、かまいませんよ、その間に基地の内部を研究しますので」
「カタパルト機構の発射原理を解き明かさないとなあ」
「浪漫だ」
「俺は船、船に泊まりたい。現場が近いし、そして船の寝心地も知りたい」
「俺も俺も」
学者さんたちはフリーダムだなあ。
私もまだ船で寝たことは無いので寝心地は解らないね。
ディーマー皇子曰く、とても快適らしいけど。
学者さんたちは誰が船に泊まるかで石紙ハサミ(じゃんけん)をはじめおった。
「学者さんって、浮世離れしてるわね」
「カロルも将来は……」
「なりませんっ!」
カロルに怒られたよ。
「私はどこに泊まるの?」
あ、アダベルの部屋を決めてないな。
「一緒の部屋で寝る?」
「いいのっ!!」
「カロルとコリンナちゃんと私と一緒だよ」
「わああっ、楽しみ楽しみ」
カロルがしょうがないわねという感じで苦笑していた。
というか、客室はだいたい応接室が付いているので、そこにエクストラベットを置けばもっと増やせる感じだね。
少し狭いけど、メイド部屋(四人部屋)と執事部屋(四人部屋)もあるのだ。
豪邸だねえ。
「そろそろ晩ご飯ですから、みなさん村の方に行ってください」
「「「「はーい」」」」
もう、返事だけは良いんだから。
学者なんかみんな大きい子供だね。
カロルとアダベルと一緒に邸宅に戻る。
アダベルを真ん中にして二人で彼女の両手をつないで歩く。
FBIに捕まった宇宙人な感じもするが、仲良しなので良いのだ。
「基地に繋がる通路の途中で空間が歪んでいるな」
「解るの?」
「竜は時空間にうるさいんだ」
なんか時空間に好みがあるのか?
すごいぞドラゴン。
「実際に歩くより、基地は離れている、通路を歪ませて短縮してる感じ」
「ビアンカさまかあ」
「そうだな、あの狂犬聖女のしわざだ」
「すごいわね、ビアンカ様は」
カロルがほとほと呆れたという感じにつぶやいた。
無駄に謎技術を使うよなあ。
学園の地下道は実際の距離と変わらない感じだから要所要所で使っておるのだろうな。
玄関ホールに出ると、コリンナちゃんとケビン王子、そしてジェラルドが居た。
「ジーン皇国と事を構えるそうだな」
「まあねえ、甲蟲騎士団を救う為だから」
「まったく、お前には驚かされる。戦争にはならないようにな」
「わかってる」
「ディーマー皇子が立ち会うから戦争にはならないだろうね。人質を取ってテロを強要するような皇族に遠慮はいらないと思うよジェラルド」
「そういえばキンボールはダンスパーティの時も人質に怒っていたな」
「ああ、ほっとくとテロが蔓延するからね、そういう奴らは最速で叩かないと。こういう手は上手く行かないって解らせないとね」
「同感だね、キンボールさん」
ケビン王子は深くうなずいた。
「コリンナー、今日は一緒に寝るぞー」
「お? 同じ部屋かい?」
「そうだよー、マコトとカロルも一緒~~」
「それは良いね。二階の西?」
「しらーん」
「二階の西ウイングだよ」
「楽しみだなあ」
コリンナちゃんはニコニコ笑った。
「そういや、ブリス先輩は?」
「ブリス卿は村長といたく気が合ったようで、残って親睦を深めているな」
「帳簿のチェックありがとうね、ジェラルド」
「帳簿というほどの物ではなかったが、真面目にやっているようだ」
「それは良かった。主にそば粉の取引とかがメインの生産物かな?」
「硫黄の取引高が大きいな。工場長が話を聞きつけて挨拶に来ていたぞ」
「硫黄もでるんだったね」
「結構品質が良いので有名よ」
「そうなのかー」
硫黄かあ、火薬の原料だけど、こっちの世界だと錬金材料なのかな。
マッチとか作ってもなあ。
火の属性の人は自分でおこせるし、魔導具も安く売ってるからなあ。
「さて、村に行って晩ご飯を食べましょう」
「そうだね」
「剣術組はどこに行ったかな」
「山に登るって言ってたわよ」
あー、あのテーブルマウンテンは登りたくなるよなあ。
しかしさすがは剣術部、体育会系だな。
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