第614話 カロルと一緒に邸宅見学①
ホルボス村は山の村という感じだ。
村の中心部に宿屋と教会があるぐらいで、あとは農家だね。
村のすぐ後ろには畑が広がってのどかな感じ。
綺麗な小川とかがあってメダカが泳いでいた。
「農家だなあ~」
「のどかねえ~」
なんだな、税収の方はあまり期待出来ない感じかな。
やっぱり教会の裏にヘルスセンターを作って信徒さんたちを集めるべきか。
経済対策はコリンナちゃんと相談すべきかな。
村の外れには丘があって王都が見えた。
あ、やっぱり魔法塔見えるわ。
学園は見えないね。
柵に手を置いて景色を眺めていると、カロルが隣に来て一緒に見る。
肩と肩が触れあって、なんか甘酸っぱい感じがするね。
自然と微笑みがこぼれる。
後ろを見るとホルボス山。
平ぺったい台地だねえ。
あの上にも集落が作れるのではないか?
不便だから人は住まないか。
「なんか、良い所ね」
「そうだね、時々来よう、お祭りとかあったら参加しよう」
「いいわね。マコトはもっとのんびりしないと駄目よ」
「まったくです」
なんでこんなに事件が目白押しなのかね。
これはきっとゲームのフラグ管理が馬鹿になって、一気にイベントが起こってるからだとは思う。
攻略対象の問題を先に潰したりしてるからね。
あと、残ってるイベントはエルマーの婚約者のプリシラ嬢がらみと、アンソニー先生の実家の危機かな。
アンソニー先生がらみは、それほど深刻じゃないから暇になったら解消しよう。
「マコトさま」
ダルシーが現れた。
「ん、どうしたの、ダルシー」
「邸宅の清掃が終わりました。あと、マルゴットを知りませんか」
「さっきさぼって会議に来てたよ」
「やつめ~~」
珍しくダルシーが怒った。
「今晩、飛空艇で飛ぶから、ダルシーも参加してね」
「かしこまりました」
「アンヌもね」
「わかりました。ダルシー、マルゴットを追うぞ」
「そうだな。では、何かありましたらお呼び下さい」
諜報メイドの二人は姿を消した。
「邸宅を見にいこうか」
「そうね、行きましょうマコト」
並んで歩いていたら手と手が触れた。
うひい。
手をつないで歩きたいなあ、つないで良い物か。
声を掛けるべきか、黙ってつなぐべきか。
などと悩んでいたら、自然にカロルが私の手を握った。
「あ、うん」
「ふふふ」
これは心を読まれたな。
感情が表情に出る事に定評がある私であるから。
カロルの手は冷たくて、すべすべだな。
ふんわりと幸福感でいっぱいになる。
うん、カロル大好き。
ゆっくり二人で歩いて行くと、邸宅が見えてきた。
青い屋根、白い壁で高級感溢れるお屋敷だなあ。
邸宅の前ではカリーナさんが掃き掃除をしていた。
「ああ、マコト、マルゴットとダルシーとアンヌを見なかったかい」
「マルゴットさんを追って行っちゃったよ」
「なんだねえ、あの子らは、まったく駄目メイドだよ」
「あ、やっぱり専門メイドさんからすると甘いの」
「掃除とか甘いね、あんなんじゃ上流のお宅には行けないよ」
やっぱりメイドさんは色々な評価点があるのだなあ。
諜報メイドさんは家事は弱いか。
「お掃除は終わった?」
「中は終わったね、外の庭とか馬車溜まりの整備とかは業者を入れて整備しないとだめだね」
「村の人にお金を払って頼むかな」
「ははは、領主は只で領民をこき使う物じゃないのかい?」
「それをやると反乱起こされちゃう。聖女候補の領地で反乱とか起こされると外聞がわるいのよ」
「あはは、ちがいない」
カリーナさんに手を振って邸宅の中に入った。
玄関は広い。
下駄箱は無い。
玄関ホールになっていて、奧にアーチ状の二つの階段があって二階に続いている。
あれだな、ゾンビ出る洋館っぽいな。
「二階に客室、一階は厨房、ダイニングホール、お風呂がありました」
「あ、シャーリーさん」
ヒルダさんのメイドさんのシャーリーさんだ。
彼女は、クールなんだけど、ちょっとの表情変化が可愛い人だ。
「ご案内しますか?」
「おねがいします」
「おねがいするわ」
シャーリーさんは左側のドアを開けた。
「こちらはメインダイニングになっています」
家具もちゃんと付いてるのねえ。
大きなテーブルとどっしりした椅子、大きな暖炉があった。
「暖炉、煙突共に掃除済でした。薪があれば今日からでも使えます」
「壁が殺風景ね、絵とか無いのかしら」
「ビアンカさまのおられた頃の絵は取り外したみたいですね。壁に跡がありました。ここの主人たるマコトさまが好きな絵をお買い求めになって飾るべきかと」
なるほど、そういう所は片付けてあるのね。
しかし、絵を買うかあ。
お金が掛かりそうだなあ。
自分で描いても良いけど、油絵は専門外だなあ。
いっそ習うかな。
ダイニング脇のドアを開けると、広い厨房だった。
ミーシャさんが踏み台に乗ってお皿を洗っていた。
「けんがくですか、おつかれさまです」
「ミーシャさんもありがとうね」
「わたしが指揮をとったのですがー、王家のメイドさんのマリオンさんが居たのでそちらがほんらい指揮官でしたー」
「いやいや、聖女派閥メイド軍団の指揮官はミーシャさんですよ。マリオンさんは外様なので」
「そうですか~、ありがとうございます~」
ちょっと、ミーシャさんは嬉しそうだ。
「一通り器具は揃ってるみたいね」
「はいー」
魔導冷凍冷蔵庫、魔導コンロ、魔導オーブン、水道、食器、シルバー。
一応の物は揃ってるね。
「クラッシックな魔導器具ですが一流品が揃ってますね。博物館みたいです」
蒼穹の覇者号と同じだね。
キッチンから先に行くと、廊下が曲がって西ウイングだね。
メイドさんの部屋、物置、その先にテラスがあった。
本来テラスの先に庭があるのだろうが、今はボッサボサの原生林だ。
庭師も呼んで庭園を造らないと駄目か。
テラスの手前に二階に行く階段があった。
シャーリーさんの先導でとことこと階段を上がる。
しっかし、良い木材使ってるね。
どっしりして良い匂い。
二階は迷宮化していた時は角兎が出た階だ。
今はとても居心地の良い邸宅に化けている。
「あ、ここは空気破壊爆弾を投げ込んだ部屋じゃない?」
「あ、間取りがそうね」
今は角兎も居ない、広いベットルームだ。
大きいベットが二つ並んでいる。
「客室は幾つあるの?」
「西ウイングに三部屋、東ウイングに二部屋です」
各部屋二人だとすると、十人泊まれるね。
VIPを中心に部屋割りしてもらおう。
「マコトはどこに泊まるの」
「じょ、女中部屋……」
「だめよっ、マコトはこの舘の女主人なんだから、一番良い部屋に泊まらないと」
「うううう」
あんまり広くて贅沢な部屋は落ち着かないんだよ。
蒼穹の覇者号でもスイートにはあまり居ないし。
「舘の二階中央に三間続きの部屋があります。たぶんビアンカ様が使っていた部屋でしょうね」
「見に行きましょうよ」
「えーーー」
きっと馬鹿みたいにお金の掛かった小洒落た部屋なんだろうなあ。
ビアンカさまは金持ちすぎる。
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