第613話 王子王女救出作戦が決まる
私は大テーブルの皆を見回した。
みんな笑顔だ。
「という事で、たった今、魔力問題は解決しました」
「良かったなあ、ビーム砲を八発撃てるぞ」
「ブロウライト様っ」
「おっと、失敬、うっかり」
カーチス兄ちゃんがヒルダさんに怒られた。
「魔力タンクの四分の一を使う砲……?」
「そういう凄いのがあったらいいなあって話ですよ、皇子」
そのごまかし方は無理があるぞ。
「ごほん、とにかく魔力がなんとかなりそうなので、今晩、我々はドルガンツ城を急襲します」
「「「「おお~~」」」」
一同から歓声が上がった。
「エルマー、交代で操縦するわよ」
「まかせろ~……」
「マコトは乗ってるだけ、良いわね」
「はい……」
うちの副艇長の圧が強い。
「エイダさん、最高速度で飛ぶとドルガンツ城までどれくらい掛かりますか?」
行きに五時間、作戦に二時間、帰りに五時間だと、明日はみんな寝込んでしまうからね。
私はエイダさんブローチに地図帳のドルガンツ城を指さして見せた。
【魔力の節約無しに超高空を行けば二時間半ぐらいです】
おお、二時間半、それなら往復六時間ぐらい見れば大丈夫か。
「では、作戦開始は夕食後。参加メンバーは私、カロル、エルマー。聖剣チームとして、カーチス、エルザさん、カトレアさん。甲蟲騎士団から、リーディア団長とガラリアさん。諜報班として、ヒルダさん。これで良いかな?」
「僕やディーマーは行っちゃ駄目かい?」
「ディーマー皇子はどうします?」
「我が国の事だ、現場に行きたい」
「では、皇子は参加と。ケビン王子はご遠慮してください」
「えー、行きたいなあ」
「飛空艇の魔力消費量の問題があるんです、一人の重さが足されるとその分魔力を消費します」
「それではしょうが無いね、気を付けて行ってきてね」
「ありがとうございます、ケビン王子」
うちの王子は聞き分けが良くていいね。
「では私も村で休んでいますわ」
「うん、そうしてグレーテ王女」
「吉報をお待ちしてますわ」
ジーン皇国的には、どっちが吉報なんだろうか。
「甲蟲騎士団から、もう二人ほど乗せたいのですが」
「正面戦力としてでしょうか」
「はい、王子も王女も幼い頃から甲蟲騎士に親しんでいます。四人いれば心も落ち着くと思うのですが」
「わかりました、二人まで許可します」
こっちには凄腕諜報メイドも二人いるから、正面戦力はいらないかもなあ。
「つれてって~~」
不意にマルゴットさんが現れた。
「マルゴットさん、あなた、邸宅のお掃除は?」
「面倒臭いのでさぼり~~」
「メイドの風上にもおけねえ。カリーナさんに怒ってもらいますよ」
「いやあ、もうお掃除は嫌なの、荒事がしたいわ」
ディーマー皇子が顔色を変えて立ち上がった。
「た、怠惰のマルゴットか!! な、なんなんだこの学園はっ、なぜこんな奴が普通にいる?」
「いやーん、今は普通のメイドで~~す」
「ほ、本物なの、お兄さま?」
「伝説の悪魔メイド……」
「マルゴットさん、あんた、何やったんだよっ」
「それは秘密です」
そう言うとマルゴットさんは片目を閉じてペロリンと舌を出した。
「もー、邪魔にならないようにしてくれれば良いですよ」
「は~~い」
なんだか嬉しそうであるな。
「ヘザーは行かないのかしら?」
「聞いてきますよ~。お嬢は運が悪いんでなかなか良い現場を踏めないんですよね~」
そう言ってマルゴットさんは出て行った。
「アダベルも付いて来そうな気がするなあ」
「そうね」
まあ、ちっちゃいし、意外に役に立つから良いけどね。
氷ブレスで兵隊を麻痺させてもらおうか。
「それでは、解散。晩餐はここかな?」
「ここ以外に集まれそうな場所は無いわね」
「晩餐が終わったら、作戦参加の人は私の元に集まって下さい」
「了解したぜ。カトレアを呼ばないと」
「コイシさまががっかりしそうですわ」
「学者さんもいるから、ここにも戦力を残しておかないとな」
「そうですわね」
カーチス兄ちゃんとエルザさんは席を立った。
「ジェラルドに知らせておこう」
ケビン王子が席を立つと、みな立ち上がって食堂を出て行った。
リーディア団長とガラリアさんが残っていて私に向けて頭を下げていた。
「なによ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「そういうのは作戦が成功してからよ」
「はいっ」
「が、がんばりますっ」
作戦が上手くいったら、王子と王女をここに迎え入れたいね。
そう思いながら、私はそば茶を飲み干した。
【マスターマコト、増槽の取り付けが終わりました】
「ありがとうエイダさん。だけど、なんで増槽にだけ魔力が入ってたの? 船には最初入って無かったよね」
【魔導頭脳を休眠状態にするために、一度全ての魔力を消費したためです】
ああ、テレビの待機電力みたいな物か。
魔力が入ってるとエイダさんのスイッチが切れなかったのね。
なるほどなるほど。
船のタンクが空だったから、増槽も空だとばっかり思ってたよ。
「さて、晩餐まで暇だね、どうしようか、カロル」
「村の中を散歩でもする?」
「そうね、お養父様は何をしてるんだろう」
ホルボス山基地でも行ってるかな?
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